詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(52)

2023-11-18 22:53:55 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「人知れぬもの」。その人が「わかる」、その手がかりは何か。

私の一番ベールを被せた書き物、

 ただの「書き物(ことば)」ではない。「ベールを被せた」という修飾がある。秘密、暗示。しかも、「一番」ということばも重ねられている。
 この「一番」は、直前の行にも書かれている。同じことばが二度書かれている。しかも、目立つ形で。
 それがとてもおもしろい。
 「人知れぬもの」は、「一番」知ってもらいたいことなのだが、この「一番」という音の響きが、なんともいえず軽くていい。「最も」だともったいぶった感じになる。中井の訳の魅力が、ここにある。

 

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Estoy Loco por España(番外篇408)Obra, Juan Manuel Arruabarrena

2023-11-18 22:13:46 | estoy loco por espana

Obra, Juan Manuel Arruabarrena
Técnica mixta sobre madera, Medidas 125x95 (2023)

 Hay una extraña sensación de perspectiva, como mirar un cuadro dentro de otro cuadro.
 Por ejemplo, una pequeña casa situada en una llanura vacía. Su techo, sus paredes, sus ventanas y sus puertas reflejan el mundo.
 El techo refleja la noche que aún está por llegar, las paredes reflejan el viento de ayer, las ventanas reflejan el mar lejano que nunca he visto y la puerta refleja la sombra de la bicicleta que se ha ido.
 ¿Qué hay realmente allí? ¿Una casa? ¿Es lo que refleja la casa? ¿La conciencia de un pintor?

 Mis palabras están equivocadas. Sólo puedo escribir cosas incorrectas. Pero este color demasiado tranquilo acepta mi error y espera a que pase. Una generosidad infinita reside en la perspectiva de esta pintura. 

 絵のなかの絵を見るような、不思議な遠近感がある。
 たとえば、何もない平原にたっている小さな家。その屋根が、その壁が、その窓が、そしてその扉が世界を映している。
 屋根はまだやって来ない夜を、壁はきのうの風を、窓は見たことのない遠い海を、扉は去って行った自転車の影を映している。
 ほんとうにあるのは、何なのか。家か。家が映し出すものか。

 私のことばは間違っている。私は間違ったことしか書けない。しかし、このあまりにも静かな色は、私の間違いを受け入れ、それがとおりすぎていくのを待っている。果てしない寛容さが、この絵の遠近感のなかにある。

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