「アルゴナウトの人たち」は、突然はじまる。どんな詩も(文学も、あるいは芸術は)突然はじまるものかもしれないけれど。
して、魂よ、
「して」は「しかして」「しこうして」が縮まったものなのかもしれないが、それが「しかして」「しこうして」、あるいは「そうして」であったとしても、やはり突然感間がある。「しかして」が接続詞なのに、その前に何もない。何かが切断されたまま、接続詞が動いて、次のことばがあふれてくる。そうなのだ。それは、接続詞には違いないのだが、前に何が書かれてあったかよりも、これから書くことの方が大事なのだ。実際、この詩では、引用し、何かを書きたいという行が次々に登場するのだが、それについて書くよりも、やはり書くべくことは「して」なのである。
「しかして」よりもさらに短く、「して」のみ。
ここには、漢文体が口語になって動くような強烈さがある。緊迫感がある。動きにゆるみがなく、スピード感がある。めんどうくさいことは蹴散らして、本気で言いたいことをいうという気迫がある。「して」は気迫に満ちたことばだ。
たったひとことで、充実した緊密感を鮮やかに描き出す中井の訳は、ほんとうにおもしろい。
私は、こころも、精神も、魂も存在しないと考える人間であり、特に魂ということばは好きではなく、うさん臭いと感じるのだが、「して」につづくことばは、こころや精神ではなく、魂でなくてはならないという感じがする。とても強く響きあっている。
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