「過酷な瞬間と瞬間との……」。
きみの表情が次の表情にかわるあいだに、
いちばん短い「瞬間」とは、どういうものだろうか。きみの「どんな表情」が「どんな表情」にかわったのか。この詩では「かわった」ではなく「かわる」と書いてある。このときの「かわる」は日本語では「現在形」ではなく「未来形」である。まだ「かわっていない」、「かわりつつある」のでもない。しかし「かわる」ことがわかっている。「かわる」ことを詩人は何度も見てきている。そして予測している。
その予測は「過酷」と関係しているのか。その「過酷」がどういうものかわかるのは、私が引用した行の、次の行である。それは読んでもらうしかないのだが、そこに書かれていることは未来形「かわる」と同じように、いわゆる動詞の「原形(活用しない形)」で書かれている。
ギリシャ語のことはわからないが、この「未来」を「現在形」と同じ形で書く文法は、考えてみると「未来形」よりも「過酷さ」を浮き彫りにする。この「未来形=現在形」とという文法は、そのことが「瞬間」であるよりも「永遠」を感じさせる。言いなおすと、そこには「時間(時制)」がない。活用がない。かわりに、不変の、普遍の、「事実」がある。
それが「きみ」とともに、ある。「あなた」ではなく「きみ」とともに、ある。この「きみ」という訳語の選択も、とても深い印象を引き起こす。
四行の、非常に短い詩なのだが。
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