詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ポスト岸田(読売新聞の「読み方」)

2024-08-17 10:37:36 | 読売新聞を読む

 2024年08月16日、17日の読売新聞の一面の見出し。

ポスト岸田 相次ぎ意欲/小林氏 推薦20人めど
麻生氏 茂木氏支持に難色

小林氏 19日立候補表明へ/麻生氏 河野氏の出馬了承
「早期解散・秋選挙」広がる

 読売新聞は、総裁選を岸田対河野の対戦と見ている。小泉は、総裁選へ目を向けさせるための「ダシ」につかわれている。
 で、なんのために岸田を辞めさせ、「新顔」を必要とするのか。早期解散・総選挙が必要なのか。自民党政権への「不信」がつづいているというのが「表面的」な理由だけれど。それはほうっておけば回復するかもしれない。衆議院議員の任期はまだ1年もある。1年しかないというのが議員の声かもしれないが。なんといっても落選したら収入が途絶えるから、そしてその途絶は4年間つづく可能性があるから。国民のこと、政治のことなんかどうでもいい、自分の生活(収入)だけ守りたい、ということだろう。
 しかし、ほかにも理由はあると思う。
 岸田では、日本の防衛は(アメリカの世界戦略は)機能しないとアメリカが判断したのではないのか。もっと簡単に言うと、岸田が首相では早期(5年以内)の「核配備」が不可能と判断し、岸田を切り捨てたのではないのか。ふにゃふにゃしているが、岸田は広島の出身。日本に核が配備されることになれば、岸田は広島で叩かれ、きっと落選する。そんなことになれば、最初からやりなおさなければならない。アメリカ=日本は、「台湾有事」を5年以内と想定している。岸田政権がふらふらしていては、間に合わない、と考えているのだろう。
 だから。
 小林が急に浮かび上がってきたのは、防衛=軍隊についての「政策」が他の「候補」とは違っているからだろう。
 17日のスキャナーは、

①政治改革 焦点に
②内政 憲法改正・財政も議題
③外交 敬虔・手腕問われる

 という三つの見出しがあって、それぞれ「分析」している。①は、岸田が辞める表向きの理由。「カネ」の問題にケリをつける。でも、派閥は、完全には解消されていない。一面の見出しでもわかるように、麻生は、何人もの議員を支配している。
 ②が「防衛」にからんでくる。憲法改正は「防衛」だけがテーマではないが、アメリカが重視しているのは「防衛」である。
 読売新聞は、どういう書き方をしているか。

 憲法改正や皇位継承のあり方、選択的夫婦別姓といった国や社会のあり方に関する基本政策も主要な議題となる。
 党内きっての保守派の高市経済安保相(63)は「憲法を改正するために政治家になった」と公言し、自衛隊明記、緊急事態条項創設など自民の改憲4項目に加え、「公共の福祉」の意味の明確化などを唱えてきた。皇位継承は「126代、男系の皇統を守ってきた。天皇陛下の正統性と権威の源だ」と男系維持にこだわる。夫婦別姓には反対の立場で「通称使用の拡大」を掲げている。
 同じく保守派の小林氏も、改憲論議の加速を訴え、「憲法に防衛の文字がない」として自衛隊明記などを求める。小泉氏も改憲は結党の理念だとして「約束したことに本気で取り組む」と強調している。
 一方、石破氏は、自衛隊の明記だけで、戦力不保持を定めた9条2項が残れば矛盾が生じるとして「2項削除」を持論としている。皇位継承では「女系天皇の可能性を排除して議論するのはどうなのか」と容認姿勢を示し、夫婦別姓も「やらない理由が分からない」との考えだ。
 野田聖子・元総務相(63)も夫婦別姓導入を訴えている。

 絶対に総裁になり得ないような高市を「まくら」につかって、「憲法改正=自衛隊明記」を取り上げているのだが、ここで小林について「小林氏も、改憲論議の加速を訴え、「憲法に防衛の文字がない」として自衛隊明記などを求める」と明確に書いている。小泉の発言には自衛隊はない。石破は踏み込んでいるが、彼も推薦人が集められるかどうかわからない状況だから、まあ、紙面の「にぎわし」に引っ張りだされているだけだ。野田も同じ。
 読売新聞が「対抗馬」と想定している河野は、ここには登場しない。逆に言えば、絶対に総裁にはなれない、ということだろう。
 その河野については123か国・地域訪問と、様々な閣僚経験を取り上げているが、様々な閣僚経験というのは、「有能」だからではなく、「無能」だからたらい回しされたということだろう。小泉と同じく、「親の七光」議員にすぎない。

 さて。
 小林鷹之。私は、何も知らないのだが、きょうの記事でわかったことは、憲法改正においては「自衛隊明記」が必須と考えている保守派であることがわかった。そして、読売新聞は、ほかの問題(皇位継承、夫婦別姓)などは「改憲のテーマ」ではないと考えていることもわかった。これは、同時にアメリカの「改憲テーマ」が「自衛隊明記」であるということでもある。
 ほかの分野のことは、機会があれば書けばいい、ということだろう。
 小林について触れた部分は短いけれど、的を外さずに小林をしっかり紹介している。

 アメリカは、大統領選を控えている。アメリカの新大統領がだれになるかわからないが、だれになってもアメリカの世界戦略(中国封じ込め)には日本が不可欠と判断しただれかが、岸田の首をすげかえようとしたのだろう。いちばん腰の据わった「保守議員」に目をつけたということなのだろう。
 米軍が自衛隊を指揮下に置くシステムはバイデン・岸田会談で「完成」した。その指揮下で、沖縄・南西諸島に核が配備される(持ち込まれる)のだろう。核配備によって、「台湾有事」は防げるのか、それとも「台湾有事」を拡大することになるのか。アメリカが「世界戦略システム」の早期完成を急いでいることだけは確かである。(バイデン・岸田会談での、バイデンのはしゃぎようは、たいへんなものだった。)

 ところで。
 田中角栄が失脚したのは、田中が自衛隊のベトナム派兵に反対したためだが、そのとき「田中金脈」が問題になった。今回、岸田が失脚(?)するのも「カネ」がらみである。「カネのスキャンダル」を利用して、日本の首相を失脚させるというのは、アメリカのひとつの方法なのかもしれない。(今回の「裏金問題」が話題になったとき、私は、少し、そのことを書いた。)「カネ」の問題をつついて失脚させるかぎり、アメリカは「裏」に隠れていることができる。
 田中失脚後、アメリカに「反対」を唱える日本の首相はいなくなったが、今回の岸田退陣によって、日本の首相の「操り人形化」はさらに加速するだろう。
 で、ここから逆に言えば。
 日本がアメリカにあやつられないためには、「カネ」に潔白な政治家が必要なのである。「カネ」に問題をかかえると、それをつつかれ、必ず失脚させられる。岸田本人は「カネ」に塗れていたかどうかは、よくわからないが。しかし、周辺は、完全にカネによって腐敗していた。
 私は、なんだか、とんでもない世界を見せつけられている、いやあな気分になっている。

コメント (1)
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