内閣支持率と解散の関係は?
自民党憲法改正草案を読む/番外398(情報の読み方)
2020年09月21日の読売新聞(西部版・14版)の1面のトップ。
菅内閣支持74%/歴代3位 「安倍継承」評価63%
この数字をどう判断していいのかわからない。
「安倍継承」について、「森友、加計、桜を見る会の再調査をしない」という「継承」について評価するのか、評価しないのか。8面に「質問と回答」が載っているが、そこにはそういう「質問と回答」はない。さらにジャパンネット問題や、河井議員1億5000万円問題も質問されていない。(ジャパンネットは、会長逮捕の時期と関係するのだろうけれど。)優先して取り組んでほしい政策、課題からも除外されている。
この段階で、読売新聞は、いわゆる「負の遺産継続」については質問を避けている。つまり、そういう声が出ないように質問を操作している。
「負の遺産(批判の多かった問題)」の唯一具体的な質問は麻生、河野の再任。河野は担当が替わるから「継承」そのもので言えば麻生の再任。「評価しないは53%」。これから判断すれば、質問の順序次第では「支持率」が大きく揺らぐことが想像できる。
その世論調査で、衆院の解散(総選挙)についても質問している。「任期満了まで行う必要はない」が59%でトップである。
しかし、こういうことは「見出し」にはとられていない。
3面の「世論調査分析」の見出しは、こうである。(番号は私がつけた。)
①菅流「堅実・改革」好感
②自民内 高まる早期解散論
①の「堅実」は「継承」姿勢を指す。でも「継承」なら「改革」は大改革ではなく、見せ掛けの「改修」、あるいは「修飾(新装)」くらいであろう。デジタル庁はともかく「縦割り110番」くらいでは「改革」ではないだろう。単に苦情を受け付けるだけだ。さらにその苦情が「デジタル庁」で管轄されるとどうなるか。誰がどんな苦情を言ったかという「個人情報」がデジタル庁に集積されるだけだろう。
②は、「世論調査」とは無関係。自民党内の動きである。しかも、その「動き」は読売新聞の世論調査を紙面に掲載し、その結果を見た自民党議員の反応ではない。調査は19、20日に行われ、20日にまとめられ、新聞は20日の夜につくられ、21日朝に配達されている。自民党員がどこの段階で「世論調査の結果」を知ったのか、それを知ったき員は全体の何%くらいなのか。だから、この見出しの「自民内 高まる早期解散論」は「まゆつば」ものである。
記事中には、どう書いてあるか。
自民党内では、異例の高い支持率を受け、早期解散論が強まりそうだ。
文末の「そうだ」は推定を意味する。「事実」であるときは「そうだ」ということばでは締めくくらない。つまり、「自民内 高まる早期解散論」は世論調査の結果分析でもなければ、自民党内の客観的な動向分析でもない。この記事を書いた記者の「思い」である。「作文」にすぎない。それを読売新聞は、あたかも「客観的事実」であるかのように書いている。いわば、嘘なのだ。嘘と批判されるのを恐れて「そうだ」と書き、ごまかしている。
「早期解散論」があること自体については、すでに読売新聞もほかのメディアも書いていたと思う。それを、なぜ、いま、この段階で書くか。
「世論調査」自体を私は「客観的」とは思わないが、一般的には「客観的」と思われている。その「客観的事実」を背景にすると、「予測」すらも「客観的」という印象を与えてしまう。
きょうの3面の「自民内 高まる早期解散論」という見出しを読んで、そんなことは書いた記者の憶測にすぎない。どうやって高まっているかどうかを調査したのか、と考える読者も、それを「事実かどうか、客観的証拠を示せ」と読売新聞に問い合わせる読者もいないだろう。
だから。
これは「世論調査」以上に「世論誘導」なのである。
紙面をつかって、「早期解散をしろ」とけしかけている。そして、その「けしかけ」は読売新聞が「特ダネ」として報道した安倍のインタビューに合致する。9月17日の新聞の見出しによれば、安倍は、
衆参同日選「常に頭」
という。しかし、菅の任期中に参院選はないから、菅に「衆参同日選」をしろとは言えない。安倍が言っているのは、「衆院選解散を考えろ、総選挙を考えろ」という意味である。それを後押しする形で、きょう、
自民内 高まる早期解散論
という見出しになる。これは、安倍の意向を汲んだ、「忖度見出し」ということになる。そしてまたこれは、私から見ると「読売新聞は自民党の応援をするから、早期解散をしろ」とけしかけているのである。
なぜ? 選挙があれば「選挙広告」が見込まれるからである。そして、いま解散し、議席を確保できれば、自民党議員は「任期4年」を確保できる。「一石二鳥」なのである。
だって、おかしいでしょ? まだ任期が1年ある。そして菅の支持率も高い。いったい何を争点に国民の信を問うのだ。もともと解散は、内閣不信任が可決されたとき、国会議員の判断だけでは納得ができない、国民に信を問うという形で実施されるものだ。(憲法69条)。「首相に解散権がある」とはどこにも書いていない。憲法7条の第3項を強引に援用しているようだが、7条はあくまで天皇の「国事行為」であって、それが「内閣の助言と承認」を前提としているからといって、内閣の思いのままという根拠にはならないだろう。
こういうことを考えると、自民党の議員は、二階を筆頭に、自分の任期をいつまで確保するかということだけを考え、政策(国民のため)ということはまったく考えていないことがわかる。読売新聞も「世論調査」などと言いながら、国民の意識を分析するのではなく、政権をよいしょするために、どんな記事が書けるか、その見返りとしてどれだけ広告をまわしてもらえるか(経営を安定させることができるか)しか考えていないように見える。
*
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https://note.com/yachi_shuso1953
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#安倍を許さない #憲法改正 #読売新聞
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自民党憲法改正草案を読む/番外398(情報の読み方)
2020年09月21日の読売新聞(西部版・14版)の1面のトップ。
菅内閣支持74%/歴代3位 「安倍継承」評価63%
この数字をどう判断していいのかわからない。
「安倍継承」について、「森友、加計、桜を見る会の再調査をしない」という「継承」について評価するのか、評価しないのか。8面に「質問と回答」が載っているが、そこにはそういう「質問と回答」はない。さらにジャパンネット問題や、河井議員1億5000万円問題も質問されていない。(ジャパンネットは、会長逮捕の時期と関係するのだろうけれど。)優先して取り組んでほしい政策、課題からも除外されている。
この段階で、読売新聞は、いわゆる「負の遺産継続」については質問を避けている。つまり、そういう声が出ないように質問を操作している。
「負の遺産(批判の多かった問題)」の唯一具体的な質問は麻生、河野の再任。河野は担当が替わるから「継承」そのもので言えば麻生の再任。「評価しないは53%」。これから判断すれば、質問の順序次第では「支持率」が大きく揺らぐことが想像できる。
その世論調査で、衆院の解散(総選挙)についても質問している。「任期満了まで行う必要はない」が59%でトップである。
しかし、こういうことは「見出し」にはとられていない。
3面の「世論調査分析」の見出しは、こうである。(番号は私がつけた。)
①菅流「堅実・改革」好感
②自民内 高まる早期解散論
①の「堅実」は「継承」姿勢を指す。でも「継承」なら「改革」は大改革ではなく、見せ掛けの「改修」、あるいは「修飾(新装)」くらいであろう。デジタル庁はともかく「縦割り110番」くらいでは「改革」ではないだろう。単に苦情を受け付けるだけだ。さらにその苦情が「デジタル庁」で管轄されるとどうなるか。誰がどんな苦情を言ったかという「個人情報」がデジタル庁に集積されるだけだろう。
②は、「世論調査」とは無関係。自民党内の動きである。しかも、その「動き」は読売新聞の世論調査を紙面に掲載し、その結果を見た自民党議員の反応ではない。調査は19、20日に行われ、20日にまとめられ、新聞は20日の夜につくられ、21日朝に配達されている。自民党員がどこの段階で「世論調査の結果」を知ったのか、それを知ったき員は全体の何%くらいなのか。だから、この見出しの「自民内 高まる早期解散論」は「まゆつば」ものである。
記事中には、どう書いてあるか。
自民党内では、異例の高い支持率を受け、早期解散論が強まりそうだ。
文末の「そうだ」は推定を意味する。「事実」であるときは「そうだ」ということばでは締めくくらない。つまり、「自民内 高まる早期解散論」は世論調査の結果分析でもなければ、自民党内の客観的な動向分析でもない。この記事を書いた記者の「思い」である。「作文」にすぎない。それを読売新聞は、あたかも「客観的事実」であるかのように書いている。いわば、嘘なのだ。嘘と批判されるのを恐れて「そうだ」と書き、ごまかしている。
「早期解散論」があること自体については、すでに読売新聞もほかのメディアも書いていたと思う。それを、なぜ、いま、この段階で書くか。
「世論調査」自体を私は「客観的」とは思わないが、一般的には「客観的」と思われている。その「客観的事実」を背景にすると、「予測」すらも「客観的」という印象を与えてしまう。
きょうの3面の「自民内 高まる早期解散論」という見出しを読んで、そんなことは書いた記者の憶測にすぎない。どうやって高まっているかどうかを調査したのか、と考える読者も、それを「事実かどうか、客観的証拠を示せ」と読売新聞に問い合わせる読者もいないだろう。
だから。
これは「世論調査」以上に「世論誘導」なのである。
紙面をつかって、「早期解散をしろ」とけしかけている。そして、その「けしかけ」は読売新聞が「特ダネ」として報道した安倍のインタビューに合致する。9月17日の新聞の見出しによれば、安倍は、
衆参同日選「常に頭」
という。しかし、菅の任期中に参院選はないから、菅に「衆参同日選」をしろとは言えない。安倍が言っているのは、「衆院選解散を考えろ、総選挙を考えろ」という意味である。それを後押しする形で、きょう、
自民内 高まる早期解散論
という見出しになる。これは、安倍の意向を汲んだ、「忖度見出し」ということになる。そしてまたこれは、私から見ると「読売新聞は自民党の応援をするから、早期解散をしろ」とけしかけているのである。
なぜ? 選挙があれば「選挙広告」が見込まれるからである。そして、いま解散し、議席を確保できれば、自民党議員は「任期4年」を確保できる。「一石二鳥」なのである。
だって、おかしいでしょ? まだ任期が1年ある。そして菅の支持率も高い。いったい何を争点に国民の信を問うのだ。もともと解散は、内閣不信任が可決されたとき、国会議員の判断だけでは納得ができない、国民に信を問うという形で実施されるものだ。(憲法69条)。「首相に解散権がある」とはどこにも書いていない。憲法7条の第3項を強引に援用しているようだが、7条はあくまで天皇の「国事行為」であって、それが「内閣の助言と承認」を前提としているからといって、内閣の思いのままという根拠にはならないだろう。
こういうことを考えると、自民党の議員は、二階を筆頭に、自分の任期をいつまで確保するかということだけを考え、政策(国民のため)ということはまったく考えていないことがわかる。読売新聞も「世論調査」などと言いながら、国民の意識を分析するのではなく、政権をよいしょするために、どんな記事が書けるか、その見返りとしてどれだけ広告をまわしてもらえるか(経営を安定させることができるか)しか考えていないように見える。
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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
#安倍を許さない #憲法改正 #読売新聞
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「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
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