哲学の科学

science of philosophy

人間は真実を知ることができるのか(2)

2013-07-06 | xxx5人間は真実を知ることができるのか

このように物質の微細構造から大宇宙の生成と歴史までが、幾何学や方程式を用いて、定量的に解明されているということは、ようするに、現代人は科学およびその他の知識を総動員すれば、原理的には、すべての真実を知ることができる、ということではないのか? そうも思えます。宗教家からは、神を恐れぬ人間の傲慢、と叱られそうですが、実際、人類の知識は、どこまでも広く深くなっていくことができるのでしょうか?

人類は、望遠鏡や顕微鏡や粒子加速器を発明して、あらゆる自然現象を認知することができるのでしょうか?コンピュータを使って、天体の生成から生物の進化、あるいは囲碁将棋のすべての棋譜を予測計算できるのでしょうか?

どうにも腑に落ちない疑問が残ります。他の動物はどれもできないのに、なぜ人間だけが真実を知ることができるのでしょうか? それも、ついこの百年で発展した現代科学を知っている私たち現代人だけがすべての真実を知ることができるというのは、あまりにも自己中心的な見解ではないでしょうか?

現代の人類だけが、自分たちの知識を過信し、近いうちにすべての真実を知ることができる、と思いこんでいるのでしょうか? 昔の人々は、現代人に比べると、ずっと謙虚であって、人間が永久に知ることができないものはたくさんある不可知論という)

、と思っていたようです。何千年、何万年にわたって謙虚に生きてきた人類は、現代に至って、この百年足らずで突然、自分たち人類だけが真実を知り得ると思い、自己中心的で不遜になってしまったのでしょうか?

あるいはいつの時代でも、人類というものは、実は、自分たちがすべての真実を知っていると思い込めるほど自己中心的で不遜な種族なのか? あるいは私たちは特に自己中心的ではないものの、たまたま現代科学が頂点に達してしまって、実際に、この世界の重要な真実がだいたい分かってしまった時代に、私たちがいるだけなのか? どれが本当なのでしょうか?

人類という存在が自己中心的で不遜な種族である、という考えは、胸に手を当ててみれば、まあ、当たっているような気がしますね。だいたい、だれよりも栄えていて数も多く、だれよりも多くの資源を消費しているという点からも、そういうものはまず、自己中心的で不遜であるに違いありません。しかもごく最近、つい昨日くらいから、そういう大きな態度ができるようになった、という成り上がり者です。

最強で一人勝ちしたというだけでも不遜な存在です。口を開けばすぐ、真実がどうかとか、現実はどうかとか、えらそうにしゃべっている。そういう者は、実は、自身が全知全能に近いと思っているはずです。おごれるもの久しからず(平家物語) 、という警句が思い浮かびます。

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人間は真実を知ることができるのか(1)

2013-06-29 | xxx5人間は真実を知ることができるのか

(35 人間は真実を知ることができるのか? begin

35 人間は真実を知ることができるのか?

全知全能の神がいるとすれば、彼は〈あるいは彼女は〉当然ながら、全知全能である。つまりすべてを知っていて、すべてを行うことができる。一方、人間は神ではないから、局知局能である。つまり局部的に知っている部分はあるが、すべてを知っていることはない。また局部的に行える部分はあるが、すべてを行えるわけではない。であるから、人間が知りえないことは多い。

ではあるが、現代科学、現代文明は爆発的な勢いで発展している。この勢いを見れば、そう遠くない日に、人類は全知全能の神の領域に近づいてしまうのではないか?

コンピュータの能力向上及びそれら情報システムが収集する知識やビッグデータの量が指数関数的に積み上がっていく傾向を見ていれば、素朴に、そう思いたくなります。

人間はいつの日か、すべての真実を知ることができるのだろうか? この問題を、拙稿本章では考えてみましょう。

人間は多くの物事を知っている。他の動物が知らない多くのことを知っています。

人間は、たとえば火星を知っています。火星って何のことか、チンプンカンプン、という人も、案外、多いでしょうが、一方また、火星は地球の隣の惑星である、と知っている人は多い。その知っている人たちは、火星について、どう知っているのか?

望遠鏡カメラで火星を撮影してブログに掲載することができる。あるいは、「火星は太陽系の第四惑星です」と人に言うことができる。「最近、NASAが火星探査機を着陸させたよね」と人に言うことができる。あるいはJAXAのプロジェクトマネジャーになって、火星往復宇宙船を建造することができる。などなどのことができる人は火星を知っている、といえます。

人間以外の動物は火星を知らない。これは間違いありません。チンパンジーが火星を知っているはずがない。動物に限らず人間以外に火星を知る者はありません。

火星人は火星を知っているのではないか?

最近のロボット探査機は火星をくまなく探査しましたが、残念ながら、火星人はいませんでした。そのロボット探査機は火星をよく知っているのではないか?百科事典には火星の記述があるから、その事典は火星を知っているのではないか?いや、そういうのは、単に人間が火星に関する知識をロボットのコンピュータや事典に書き込んだだけで、書き込まれたコンピュータや印刷物が火星を知っているとは言えないような気がしますね。

人間だけが物事を知っているとか知らないとか言える。人間以外のものは、そもそも、物事を知る知らないという概念がない。古来の哲学、認識論ではそうなっています。

現代物理学は宇宙の謎を解明した。物理学者は宇宙の生成と発展の法則を数式で描く事が出来ます。この法則から宇宙に存在する物質とエネルギーと時間と空間の構造が分かります。またそれらの科学理論に天体観測の実測値をあてはめて逆算すれば、宇宙は百三十七億年前に生まれたことが分かります。

現代生物学はまた、生命の神秘を解明しました。生命現象は、核酸とたんぱく質からなる精妙な物質サイクルが数百万年の単位で漸進的に進化していく物理化学過程として、生体分子の立体構造の中で原子間結合が変遷する細密な動的過程が分かってきています。

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