夢の中でも自分の身体はあるようなので身体は存在している、といえます。それはしかし、目には見えていない。幽霊のようなものです。それは、自分が思っているだけの自分である、というべきでしょう。
そうであるとすれば、夢から覚めて現実にここにあるように思えるこの自分の身体も、もしかしたら、自分がこう思っているだけで、他人には違うように見えているのかもしれない。身体の存在というものもそういう頼りないところがあります。
風になびく富士のけぶりの空に消えてゆくへもしらぬわが思ひかな(西行 一一八六年)
富士の噴煙が拡散して消えるように私の思っていることも消えていく。
われ思う故に我あり(ルネ・デカルト 一六三七年)、と言ってもはかないものだ、とすでに西行は言っています。いずれ身体そのものが消えていくのだから。 ■
(94 身体の存在論 end)
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