新進気鋭の政治家として活躍するウィ・デハンは、比例代表候補にも選ばれ選挙運動真っ最中だ。
自分の父親世代のベテラン議員のカンを相手にいわゆる肉薄した戦いをしているところだ。やや劣勢でありながらも、それをちゃっかりと隠し「あと少し!」と支援者相手に気勢を上げるなどムード作りにも余念がない。
8歳の頃、父親の浮気が引き金となり、離婚することになった両親。「どっちにしようかな?天神様の言う通り・・・」というおまじないで母側につくことを選び、飲食店を営む母の元でその後父に会うこともなく育ったデハン。
高校生の頃、地元有力議員の息子よりもいい成績を取った事を逆恨みされ、母の飲食店が立ち退きの憂き目にあうと、「こんな事ではだめだ!」と政治家を目指すことになるデハン。
その時、土下座しても何もしてくれなかったカン議員が今回の選挙のライバルだ。
手ごたえを感じている時にかかって来た電話は、簡易宿泊所に寝泊まりしていた父親の死亡の知らせ。「8歳で両親と別れてから父親に会うことなく、母子二人で頑張ってきた」をキャッチフレーズにしていたデハン。実際、母の葬儀にも姿を現さなかった父親なのだが、なんでも映像に残ってしまう現代社会は恐ろしい。選挙運動の際に息子の姿を見に来た父親の姿が残っており、それが流出してしまうのだ。
韓国は仁(他人への思いやり)を実践する儒教の国だ。仁を実践する手段は家族を大切にする礼だということで、政治家(公人)としてより道徳心に欠けるのではないかと鋭い糾弾が始まるのだ。
『浮気して出て行って母親の葬儀にも来ない父親が、選挙運動に顔を出した時にちょっと無視したからって、そこまでたたかれるのか!』と心の中で思っても、当選のためのイメージ戦略のためにはそんな事は言っていられない。
投票日まで1週間を残した時点で、選挙運動を中止し、市内から父親の眠る霊園まで三歩一拝をして反省する姿を見せることにするのだ。
(人道に背く行為をする人と烙印を押されてしまったのだ。これ位しなければならないらしい・・・)体力勝負の三歩一拝をやり遂げても、選挙には惜敗。
金バッチを手放してしまって普通の人になってしまったデハンは、恋人のニュースキャスターに自ら別れを告げ、代理運転の仕事をしながら、次の選挙に向けて地元を回って顔を売るという毎日を過ごしていたのだが、そこに現れるのが「弟が居なくなった」というダジョンという高校生(?)
人助けをすればイメージアップになると彼女を手伝うデハンだが、母をひき逃げ事故で亡くし、幼い異父兄弟もいる彼女。頼る人がいないので、自分の存在を知らない実の父親を頼るために田舎から出てきたというダジョンの作り話のターゲットは、なんと国会議員への返り咲きを狙うデハンだったのだ。
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目を大きく見開き、開き直るコミカル演技も全開だ。
三歩一拝は、その漢字の通り、三歩歩いて一回拝・・・韓国では仏教の修行として行われているらしい。