BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

新約 とある魔術の禁書目録 第9巻 感想

2014-01-10 21:37:04 | 超電磁砲/禁書目録
アハハ~
いやー、これ、もう上条ちゃんだけの世界になっちゃって、どうするのよ、一体?
マジで、彼一人かよ~、と思わされる展開で、どうなっちゃうの。。。
と、途方に暮れてしまった第9巻。

いやー、参った!
そう来ましたか!

とだけ、まずは述べて・・・w

後はネタバレもあるので、スペース空けときます。





































いやー、ホントに参った。
9巻の概要説明として出回っていたように、
マジで、オティヌスと上条ちゃんだけが存在する世界で、延々と繰り返される「無限ループ」の世界、というのが基本的な構造。

まぁ、オティヌスと上条ちゃんの二人だけで、シュタゲやエンドレスエイトを行うような世界。

魔神オティヌスが作り出す無限の世界の中で、徐々に心を折られにかかられる上条。

正直いって、今までの禁書目録の中で、一番キツかった。

なにせ、どんなに、いつもどおりの、おバカで楽しげな禁書目録的日常空間、つまりは、上条ちゃんが弄られ続ける場面が出てきても、決して心の底から笑うことができない。

なぜなら、その世界のやりとりは、オティヌスが隅から隅まで構築したものだから。

要するに、オティヌスがゲームマスターの世界。

いや、もちろん、そんな世界でも、吹寄や土御門たちと上条ちゃんが交わすアホな会話のやりとりには、もちろんクスリw、とするよ。

でも、その次の瞬間に、これが「作り物」で「まがい物」って想い出した途端、その「笑い」は「嗤い」に変わってしまんだよね。何ともいえない、イヤーな感じが伴う。

で、それが延々と、多分、半分くらいのページまで続く。

最後に、上条以外の登場人物たちが、それぞれに抱えた悩みや不幸などを全て帳消しにされて、文字通り、至福の、幸福が実現している世界、ただし、彼らが誰一人上条のことを覚えていない世界に辿り着いて、上条自身は、このオティヌスの生み出した世界以上に、最善の世界なんて作れない、と思って、完全に心が折れて、自らを消滅させようとしてしまうところまで追い詰められてしまう。

・・・なのだが、そこで、まさかの登場を実現したのが《総体》。
ミサカネットワーク全体の「大いなる意志」としての《総体》。
前にもちょっとだけ登場して一通さんに激を飛ばしていた存在。

で、その《総体》は、見た感じは、ミサカ妹の10031号なのだが、その姿で美琴バリのテンションの高い口調で、上条ちゃんの心をどん底から救い出す。

いやー、この、上条ちゃんと《総体》のやりとりは、ホントにいいので、是非、本文で確認してください。

結局、9巻で登場する人物?はオティヌスと上条の二人を除く、この《総体》だけなんだよね。

むしろ、彼女を登場させて上条との邂逅を果すためだけに、わざわざ、こんなメチャクチャな舞台設定を用意したのではないか、と勘ぐらずにはいられない。

いやー、これはね、ホント、ブラボー!ですよ。

というのも、《総体》自身は、どうしてオティヌスの「構築する世界」に侵入/介入できたかというと、彼女?がミサカ妹たち2万体の、つまりは、既に殺された個体と、生き残った個体の、全ての経験の総意として生み出された「意識体」だから。つまり、死者と生者の両方の特性を持つがゆえに、特異点として、オティヌスの死者がいない箱庭的世界に外部から闖入することができた。

ここの説明は、あー、なるほどねー、と思ったもの。
思いっきり感心した。
そんな設定であれば、《総体》しか登場できない。
《総体》の方も、こんな状況だからこそ、上条の前に姿を表すことができる。

で、そんな状況で上条を救いにきた《総体》がまた、ホント、イイ女なんだよ。
完全に聖母ポジション。

でも、その上条を包み込むような聖母性の出処は、ミサカ妹達や美琴自身、あるいは、ラストオーダー、らがそれぞれ個別に禁書目録世界で経験してきたことを重ねあわせているから、というのが、放っておいてもわかってしまうのだよね。

もう、そこがいい。

つまり、複数の上条との経験をわかった上で、上条に助言する。

言い換えると、禁書目録に登場する人たちの「総意」を騙っているようにみえてしまうのだよね。だからこそ、彼女が、上条に対して行う「説得」が、とても納得できてしまう。

そして、その「説得」というのが、「上条自身の心が砕けそうな状態にあるのだから、上条自身が、その不条理な状況から、たとえ、他者の幸福を壊したとしても、自分自身を救い出してもいいのではないか。」というもの。

要するに、今まで他の人たちに救いの手を差し伸べてきたように、自分自身を助けてもいいのではないか、ということ。

この「あんた自身を大切にしなさい」って思いは、新約に入って何度も美琴が吐露してきた、彼女の思い、そのモノでしょ?

だから、もの凄く説得力がある。

そして、その言葉を上条にかけるのが、ゴーグルを掛けた、上条の世界では既に死んでしまった10031号なんだよね。

いやー、これは、泣ける。

そして、この《総体》の言葉に応えて、自分自身の本音を延々と吐露する上条も。

彼が決して、いわゆる「ヒーロー」ではないことが、よくわかるくだり。

禁書目録の世界って、一見すると勧善懲悪の、捕物帳的なところがあるのだけど、けれども、けっしてそれだけでは説明しきれない不条理を抱えている、そのことを、上条自身の言葉で具体的に語らせてしまった。

その告白を聞くのが、10031号の姿をした《総体》、ただ一人。

これは、もう、ホント、トンデモなく、泣かせる場面だよ。

もう聖母でしかありえないじゃない。

初めてじゃないかな、こんな母性を示したキャラが禁書目録の世界に現れたのは。

ともあれ、その《総体》とのやりとりに奮い立たされて、自分自身のやるべきことに気づいた上条は、オティヌスとの戦いに向かうことになる。

で、ここからのオティヌスがもう・・・ね。

結論だけを先に述べてしまうと、実は、オティヌスは、上条の鏡のような存在なんだよね。オティヌスが、9巻の中で延々と上条に与え続けてきた数しれぬ「苦悩」も、実は、彼女自身が経験してきた「苦悩」だった、ということで。

で、結局、オティヌス自身は、魔神に近い存在が故にずっと持ち続けてきた「苦悩」を、ようやく理解してくれる相手として上条を見出すことになる。

えーと、この辺りは、最近見たアルペジオの話でいけば、要するに、オティヌスがコンゴウで、上条がイオナ、の役割を果たしていたということ。

つまり、魔神に近いがゆえに孤独=ボッチだったオティヌスを、そのオティヌスが経験した苦悩を何万回のループの中で経験してきた上条が、理解者として救い出す、という話。

つまり、《総体》に救われた上条が、今度はオティヌスを救う、という話に、いつの間にか転じてしまう。

で、結局、10031回目!(←上手い!)の勝負で、オティヌスが勝つものの、上条自身が自分の唯一の理解者だと認識したオティヌスは上条の希望を取り入れて、元あった世界、つまり、8巻の最後の場面に戻してしまう。

それにしても、このあたりは、ホントに上手いんだ、構成が!

なぜなら、読者にしても、えー、こんな鬱展開いつまで続くのー、と思わずにはいられなかった、上条への仕打ちが、実は、オティヌスも経験したものであったわけで。

そんな事情であれば、オティヌスもなんとかして救ってやりたい、と思うのが人情なわけで。

実際、9巻の最後では、8巻最後の世界に戻って、世界の総意としてオティヌスが殺害されようとしているところで、今度は、上条がオティヌスを守るために立ち上がることになるんだよね。

いやー、この展開のひっくり返しっぷりは、まったくもって禁書目録的で。
快哉をあげたくなるほど。

ということで、オティヌスを守るために、科学、魔術を問わず、今まで登場してきたボスキャラたちと上条がガチバトルするのが、次の10巻、となるらしい。

そして、そこで、もう、これは後書きで著者自身が記しているように、金髪碧眼の女神オティヌスが上条に対して盛大にデレる場面を目撃することになるらしいw

もう、これ、笑うしかないよね。

というわけで、10巻を、楽しみにしたい!

というか、早く読ませろ!って感じ。

今回は、もう、ゲーム盤を何度もひっくり返すような物語構成に感激してしまって、まずはプロットを追うことで終わってしまったけど、もうちょっと冷却したら、新約全体の中での感想とかを書いてみたいと思う。

いや、だってさ、とりあえず、次巻はオティヌスを守る話に終始して、8巻から続く、前・中・後の三部作を完結することに終始すると思うけど、どう考えても、《総体》って、これからどう関わってくるのか、とても気になるし。

あるいは、新約全体で見れば、この流れで、学園都市、とりわけ、木原一族はどう関わってくるのか?とか思うじゃない。あるいは、トールは再登場するのか、とか。いや、そもそも、一通さんや第5位の彼女はどう動く?とか。

ともあれ、9巻はスゴイ。

こんなに巧妙に組み上げられたプロットは、そうはないから。

なんていうか、二重、三重に巧みに組み上げられているのだよね、構造が。
マジでゲームシナリオっぽい。

ホント、最初はどうなっちゃうんだろう、と思っていたのだけど・・・w

まさかの大逆転ですよ。
10巻が楽しみだ!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする