7月1日のこのブログで、日本航空の公募増資が株主総会の2日後に発表されたことについて「何でもありの資本主義~日本航空の途轍もない暴挙(?)」を書いた。
その後の展開も含めて再度コメントしたいと思う。
先日は、日航が会社の最も重要な機関である株主総会と取締役会の機能を軽視して会社法の精神を骨抜きにしてしているとして、コーポレート・ガバナンスの面から問題提起し、更に、みずほ証券の利益相反取引の恐れについても触れた。
日航は増資の公募価格を19日から21日のいずれかの日に決めるとしているが、本日の終値は220円で、株主総会頃と比較して100円近くも株価が下落している。前期の大幅赤字に加えて、旅客減に燃料高と言う経営環境の悪化で今期も業績回復の可能性が殆ど期待薄、市場が見切りをつけたと言うことであろう。
いずれにしても、予定していた増資金額から大幅にダウンすることは筆致で、更に、業績最悪の時期に増資に踏み切った経営者の経営責任に追い討ちを掛ける事になろう。
今回の増資を巡って、何故か、或いは、違法性の恐れを危惧したのか、国内募集分の13%を引き受ける予定であった日興シティグループ証券が離脱した。
その結果であろうか、日航は、「海外の機関投資家の需要が高いため」と言って、7月末に予定している最大7億5000万株の公募増資で、国内募集分を当初予定の3億5000万株から2億9500万株に減らして、海外募集分を3億5000万株を4億500万株に増やし、増資発表後に国内外の募集比率を変更すると言う異例の措置を取った。
もう一つ日航にとって悪い材料は、今回の公募増資によってCBの償還資金にめどが立っているにも拘らず、2011年2月償還の第3回普通社債の国債利回りに対するスプレッドが現在2.71%で、増資発表後2週間経っても0.04%と縮小幅が小幅で、一向に社債の評価が高まらないことである。
同じ2011年10月償還の全日空の普通社債のスプレッドが0.5%で2%以上開いていて、経営格差の大きさは目を覆うばかりである。
ところが、これに更に追い討ちをかける様に、18日定例記者会見で、日本証券業協会の安東俊夫会長が、日本航空の大型公募増資について、「株主などのステイクホールダーに対して、会社による増資に関する十分な説明がなされていないということに問題があるのではないか。」と名指しで個別会社の公募について苦言を呈した。
特に、今回の大型増資を決めた日航の取締役会が定時株主総会の直後だったのを問題視して、「株主に説明する機会として本来(総会で)できたのに、その後という段取りは十分ではない。」とも語っている。
これは、私が先日のブログで触れたコーポレート・ガバナンスの問題、すなわち、株主総会と取締役会のあり方に対する疑問の提起でもある。
金融商品取引法、そして、会社法による日本版SOX法で、企業の内部統制の問題が、正に、カレントトピックスとなり、日本企業が振り回されて右往左往しているが、日本航空には会社としての統治能力があるのであろうか。
更に、安東会長は、「今回のような事態に対して、引き受け証券会社のファイナンスの審査過程、事態に対する発行会社の見解の表明など、本来の増資の目的の実行の為に投資家に対して無用の混乱を生じさせない対応をして行く。今回の事象に対してどう対応すべきか引受審査作業部会の議題として取り上げて行く。」と語った。
公募増資に関わった証券会社側にも重大な落ち度があったと言う認識であろう。
今回発生した重大な問題は二つ、発行会社・日本航空の経営の問題と、引受証券会社のあり方の問題だが、この問題は極めて根の深い、そして、日本の会社の経営および証券市場の未熟さと言うか不完全さに根ざした深刻な問題でもある。
日本航空は現在極めて重い十字架を背負っている。とにかく、経営の再建が第一で、健全な会社に一日も早く戻す以外に王道はない。
経営本体がダッチローリングしているようでは、空の安全も覚束ない。
経営の再建には、極めて質と付加価値の高い、かつ、安全なサービスの提供を社是としている会社である以上、ニッサンのようなコストカッター方式だけでは駄目で、限りなく豊かな発想と創造性の要求される革新的な経営が求められることになる。
ガソリンの値上がりが鰻上りの昨今、ローエンドの国内運賃7700円で全日空と叩きあいをしているようでは、先が思いやられる。体力と経営能力に各段に差がついた全日空にとっては、今は正に日航叩きの千載一遇のチャンスで、知恵のない経営では日航には勝ち目がない。
順風満帆の会社が一社としてない世界の航空業界が如何に難しい産業であるのか、アメリカの航空業界でも熾烈な戦いの中で、優勝劣敗、工夫に工夫を重ねてイノベーションを追求した会社が生き残っている。
(追記)公募価格は、1株211円に決定。
目標額2000億円に対して1469億円、500億円の目減り。
想定内かも知れないが、既存株主は治まらないであろう。
その後の展開も含めて再度コメントしたいと思う。
先日は、日航が会社の最も重要な機関である株主総会と取締役会の機能を軽視して会社法の精神を骨抜きにしてしているとして、コーポレート・ガバナンスの面から問題提起し、更に、みずほ証券の利益相反取引の恐れについても触れた。
日航は増資の公募価格を19日から21日のいずれかの日に決めるとしているが、本日の終値は220円で、株主総会頃と比較して100円近くも株価が下落している。前期の大幅赤字に加えて、旅客減に燃料高と言う経営環境の悪化で今期も業績回復の可能性が殆ど期待薄、市場が見切りをつけたと言うことであろう。
いずれにしても、予定していた増資金額から大幅にダウンすることは筆致で、更に、業績最悪の時期に増資に踏み切った経営者の経営責任に追い討ちを掛ける事になろう。
今回の増資を巡って、何故か、或いは、違法性の恐れを危惧したのか、国内募集分の13%を引き受ける予定であった日興シティグループ証券が離脱した。
その結果であろうか、日航は、「海外の機関投資家の需要が高いため」と言って、7月末に予定している最大7億5000万株の公募増資で、国内募集分を当初予定の3億5000万株から2億9500万株に減らして、海外募集分を3億5000万株を4億500万株に増やし、増資発表後に国内外の募集比率を変更すると言う異例の措置を取った。
もう一つ日航にとって悪い材料は、今回の公募増資によってCBの償還資金にめどが立っているにも拘らず、2011年2月償還の第3回普通社債の国債利回りに対するスプレッドが現在2.71%で、増資発表後2週間経っても0.04%と縮小幅が小幅で、一向に社債の評価が高まらないことである。
同じ2011年10月償還の全日空の普通社債のスプレッドが0.5%で2%以上開いていて、経営格差の大きさは目を覆うばかりである。
ところが、これに更に追い討ちをかける様に、18日定例記者会見で、日本証券業協会の安東俊夫会長が、日本航空の大型公募増資について、「株主などのステイクホールダーに対して、会社による増資に関する十分な説明がなされていないということに問題があるのではないか。」と名指しで個別会社の公募について苦言を呈した。
特に、今回の大型増資を決めた日航の取締役会が定時株主総会の直後だったのを問題視して、「株主に説明する機会として本来(総会で)できたのに、その後という段取りは十分ではない。」とも語っている。
これは、私が先日のブログで触れたコーポレート・ガバナンスの問題、すなわち、株主総会と取締役会のあり方に対する疑問の提起でもある。
金融商品取引法、そして、会社法による日本版SOX法で、企業の内部統制の問題が、正に、カレントトピックスとなり、日本企業が振り回されて右往左往しているが、日本航空には会社としての統治能力があるのであろうか。
更に、安東会長は、「今回のような事態に対して、引き受け証券会社のファイナンスの審査過程、事態に対する発行会社の見解の表明など、本来の増資の目的の実行の為に投資家に対して無用の混乱を生じさせない対応をして行く。今回の事象に対してどう対応すべきか引受審査作業部会の議題として取り上げて行く。」と語った。
公募増資に関わった証券会社側にも重大な落ち度があったと言う認識であろう。
今回発生した重大な問題は二つ、発行会社・日本航空の経営の問題と、引受証券会社のあり方の問題だが、この問題は極めて根の深い、そして、日本の会社の経営および証券市場の未熟さと言うか不完全さに根ざした深刻な問題でもある。
日本航空は現在極めて重い十字架を背負っている。とにかく、経営の再建が第一で、健全な会社に一日も早く戻す以外に王道はない。
経営本体がダッチローリングしているようでは、空の安全も覚束ない。
経営の再建には、極めて質と付加価値の高い、かつ、安全なサービスの提供を社是としている会社である以上、ニッサンのようなコストカッター方式だけでは駄目で、限りなく豊かな発想と創造性の要求される革新的な経営が求められることになる。
ガソリンの値上がりが鰻上りの昨今、ローエンドの国内運賃7700円で全日空と叩きあいをしているようでは、先が思いやられる。体力と経営能力に各段に差がついた全日空にとっては、今は正に日航叩きの千載一遇のチャンスで、知恵のない経営では日航には勝ち目がない。
順風満帆の会社が一社としてない世界の航空業界が如何に難しい産業であるのか、アメリカの航空業界でも熾烈な戦いの中で、優勝劣敗、工夫に工夫を重ねてイノベーションを追求した会社が生き残っている。
(追記)公募価格は、1株211円に決定。
目標額2000億円に対して1469億円、500億円の目減り。
想定内かも知れないが、既存株主は治まらないであろう。