熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

都響のビゼーの交響曲「ローマ」「アルルの女組曲」

2014年08月03日 | クラシック音楽・オペラ
   東京都交響楽団の「作曲家の肖像」シリーズの今回は、ビゼーで、交響曲「ローマ」と「アルルの女組曲第1番&第2番」であった。
   オペラ「カルメン」が、あまりにも突出しているので、ビゼーの音楽にはお馴染みだと思っていたのだが、知っているのは、「カルメン」と「アルルの女組曲」、それに、オペラ『真珠採り』くらいで、今回の交響曲「ローマ」も初めて聞く曲である。

   指揮は、フランス人のマルク・ミンコフスキ、今現在、モーツアルト音楽祭芸術監督であると言うので、独仏両刀遣いなのであろう。
   かなり、恰幅の良い指揮者なのだが、アクションは実に軽快で、軽やかに指揮台でジャンプして、カラフルで輝くようなビゼーを、流れるようなタッチで華麗に紡ぎ上げて行く。

   紆余曲折を経て生まれた交響曲のようだが、ローマ留学時代の思い出が強烈であったのであろうか、イタリア風の曲のようで、最初は、ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ナポリと言うイメージだったと言う。
   ブレンナー峠を越えて、南の国の明るい陽光に感激したドイツ人のゲーテなら分かるが、同じ地中海の南仏の陽光を知っているビゼーが、イタリアで、違った印象を感じていたのが面白い。
   長い間分裂国家であったイタリアだが、やはり、ヨーロッパきっての最先進文化国家であったのである。
   この交響曲「ローマ」は、素晴らしい演奏で、珍しく、休憩前だったが、観客の拍手が鳴りやまず、ミンコフスキは、何度もカーテンコールに応えていた。

   「アルルの女組曲」は、非常にポピュラーで、ヨーロッパのコンサートでも何回か聞いた記憶があるが、一番良く知っているのは、序曲、メヌエットとファランドールで、このメロディーが流れて来るだけで、ワクワクする。
   このアルルは、ゴッホが、「ひまわり」や「夜のカフェテラス」など名作を残し、ゴーギャンを呼んで共同生活をした地で、耳きり事件や発作に苦しんで入退院を繰り返したところでもある。
   しかし、陰鬱で暗い故郷のオランダと比べれば、陽光燦々の南仏アルルは、天国のようだったのではないかと思う。
   旅の途中、車で、ローマ時代の円形闘技場の横を通り過ぎただけだが、城壁都市カルカソンヌとともに、このアルルは、何時か、ゆっくりと訪ねて行きたいところだと思っている。
   ニースやモンテカルロには滞在したが、私には、古代遺跡のある古い街の方が合うのである。

   アルルの女は、ドーゼの戯曲の付帯音楽だが、アルト・サクソフォーンが華麗な音色を奏し、メヌエットでのフルートとハープの美しいメロディーや、クラリネットの流麗な音色など、木管金管などの管楽器が、素晴らしいサウンドを紡ぎ出していて、正に、明るい地中海の輝きを彷彿とさせていて、実に素晴らしかった。
   マーラーやブルックナーばかりの印象が強くて渋い演奏をする都響が、輝くようなビゼーを演奏したのだから、ソールドアウトの観客は大喜びで、拍手喝采。

   気を良くしたミンコフスキは、アンコールに、カルメン序曲と終曲のファランドールを演奏した。
   尤も、本プログラムが、正味、1時間10分くらいの演奏であるから、アンコールを合わせても、普通より短い演奏時間で、余裕綽々なのであろう。
   とにかく、日曜日の午後の楽しみとしては、最高であろうと思う。
   
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする