熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画「AI崩壊」

2020年02月09日 | 映画
   非常に時宜を得た映画で、面白かった。
  
   話は、インターネットの情報を借用すると、次のようだったと思う。
   2030年、天才科学者の桐生浩介(大沢たかお)が亡き妻(松嶋菜々子)のために開発した医療AI「のぞみ」は、年齢、年収、家族構成、趣味趣向、病歴、遺伝子情報、犯罪歴といった全国民の個人情報と健康を管理している重要な社会インフラとして欠かせい存在なのだが、ある時突然、暴走を開始する。AIが、人間の生きる価値”を勝手に選別し始めて、生きる価値がないと判断した人間を殺戮するという、恐るべき事態が巻き起こり、総理まで死ぬ。警察庁の管理官・桜庭誠(岩田剛典)たちは、AIを暴走させたのは開発者である桐生だと断定して逮捕しようとしたので、身に覚えのない桐生は逃亡を開始する。桐生は、逃亡しながら、「のぞみ」を管理するHOPE社の社長西村悟(賀来賢人)とひそかに連絡を取りながら、のぞみの暴走を阻止すべく事態の収拾を目指すが、解決寸前で、桜庭たち警察陣に追い詰められて万事休す。
   ところが、2030年の日本は、高齢化と格差社会が進展し、人口の4割が高齢者と生活保護者となり、日本の社会そのものが崩壊の瀬戸際にあり、これを憂慮した新総理と警察官僚が結託して桜庭を手先にして、医療人工知能 (AI) 「のぞみ」にウイルスを忍ばせて個人情報システムを乗っ取って個人を選別して、生きる価値がないと判断した人間を殺戮する機能をスイッチオンしたことが、土壇場で判明する、と言うどんでん返し。これが面白いのだが、
   のぞみ暴走の犯人とされた桐生と、「AIのぞみ」の社長西村悟が、警察の追っ手から逃れながら、AIの暴走を阻止しようと奔走するのだが、これら科学者たちを、AI監視システムを駆使して執拗に追跡して追い詰めて行き排除しようとする桜庭などの警察陣との攻防が、この映画の見せ場となるサスペンスドラマである。

   コンピューター漬けのデジタル型でシャープな桜庭の岩田剛典などの警察陣と、旧態依然としたアナログ型の鈍くさい三浦友和や広瀬アリスの警察陣との対比が面白く、両方とも良い味を出していて楽しませてくれた。
   しかし、この桐生追跡の逮捕劇は面白いが、10年後の警察が、そのような程度の低いAI監視システムで犯人を追跡するとは思えないし、ドタバタの次元が現在の域を出ていないきらいがある。
   その所為もあって、ドンパチ優先の警察権力の行使ばかりが目に付いて、真実味に欠けて茶番劇のよう。
   前述の俳優のほかに、芦名星、玉城ティナ、高嶋政宏、余貴美子など芸達者な俳優が出ていて楽しませてくれた。
   桐生光役の田牧そらがうまい。
   斬新なパンチのきいた映画を作り上げた入江悠監督の手腕も大きく貢献している。

   最後に、逮捕された桜庭に、個人情報の選別はなくならないと言わせている。
   マイナンバー制度の徹底で、個人情報の総てを一元管理しようとする政府を、果たして国民は信用してもよいのか、そんな問題提起を、この映画は、やんわりと匂わせていて興味深い。

   さて、10年後のAIが、どの程度の次元まで発展するのかということだが、何度も論述しているハラリだが、
   バイオテクノロジーとAIの組み合わせで、ホモ・サピエンスは、ヒト科の枠から完全に抜け出て、身体的特性や物理的特性や精神的特性が生み出されるかもしれないし、意識はどんな有機的構造から分離することさえあり、AIの発達によって、超知能をもつものの全く意識はない存在が支配する世界が誕生しかねない。とまで言っている。 

   知識不足で良く分からないのだが、この映画は、人間がITのぞみのソフトを操作して誤作動を起こした事件で、最終的には、新しいソフトを組み込んで崩壊を阻止したと言うストーリーとなっており、人為的な崩壊事件である。
   しかし、恐ろしいのは、機械学習なりディープラーニング、そして、さらに高度な手法を、ITが駆使して、ハラリが説くごとく、人知を超えて作動し始めて、人間が制御できなくなって、ITが崩壊したときには、どうするかということである。
   
   医療AI「のぞみ」は、全国民の詳細に亘った個人情報と健康のビッグデータで止まっているが、インターネットにはあらゆる情報が入っているので、ヒトラーやスターリンの遺伝子情報が作動し始めたらどうするのか、
   いろいろ考えたら、映画では済まされないような気がして恐ろしくなってきた。
コメント
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