2030を展望した未来予測と言うべきであろうか。
「第1章 出生率の動向を追う」では、出生率と移民について論じているのだが、この段階から面白い議論を展開しているので、今回は、このトピックスについて考えてみた。
私が子供の頃には、世界人口は30億人と学んだのだが、今では75億人。
1968年に「人口爆弾」という本が出て、地球上に人が溢れて、その過程で人類を、そして、莫大な数の動植物を滅ぼしてしまうのではないかと、世界中の政府も国民も、この不可避と思える事態を真剣に恐れてきた。
しかし、今や、欧州や米国、東アジアで出生率が低下する一方、アフリカや中東、南アジアでは出生率の低下が緩慢に進み、
著者は、2030年になる頃には、人類は”赤ん坊不足”に直面する。と言うのである。
下図は、世界人口に占める地域別人口比率である。

それでは、世界中で出生率低下の理由は何なのであろうか。
まず、今日の女性は、経済社会が豊かになって、家庭の外の好機をより多く享受している。その好機を摑むために、より高い教育を受け、出産時期の引き延ばしに繋がる。経済のみならず広く社会において女性の役割が変化したことが、世界的な出生率低下の背後にある最も重要な要因である。
更なる要因は、セックスに対する興味の低下で、
マルサスが見落としていたのは、現代の技術が如何に性欲を減退させるかで、技術と性欲の関係は驚くほど単純で、娯楽の種類が増えれば増えるほど、セックスの回数は減退する。現代社会は、ラジオやテレビからビデオゲーム、ソーシャルメディアまで様々な娯楽の選択肢を提供している。面白いのは、シンガポールの急速な経済成長の勢いを維持するためには若い人口が必要だと、政府が、子供の居ない夫婦を選んで信書を出し、バリ島の休暇に無料で招待して、”その気になる”ことを期待したが、子供は生まれなかった。と言うこと。
また、お金も、子供を持つか持たないかを決める重要な要素である。
収入が上がれば、人は、数を増やすのではなく、質の高さを求めるようになる。「子供の数と質の相互関係は、収入の上昇とともに子供の実効価格が上がる最も重要な理由だ」とベッカーが説く如く、より少ない子供により多くの愛情を注ぎ、持てる資源を投入する。
さて、この章のサブタイトルは、「人口不足、アフリカのベビーブーム、来る産業革命」
2030以降、人口が増加するのは、アフリカだけで、これからは、アフリカの人口を養うという大きな好機が訪れると説く。
アフリカが、膨大な人口爆発を支えきれるのかという疑問については、下図を見れば分かるように、ソ連と南アメリカとオセアニアを除けばすっぽりと世界の国々が収まるほど、アフリカは巨大なのである。ここで言う産業革命というのは、第5次とか第6次だとか言った新しい産業革命ではなく、農業革命や経済構造の向上による成長発展と言うことで、先進国へのキャッチアップである。これらについては、これまで、このブログで、BOPビジネスやリバース・イノベーションなどで論じてきたので、省略する。
私自身は、政治的な要因が帰趨を決すると思っているので、著者のように一本調子の展開は疑問だと思っている。

この章で、もっと面白いのは、中国の一人っ子政策が、回り回って、アメリカ人の住宅ローンと消費者ローンの金利を下げて消費を煽り、アメリカの消費者に棚ぼた式の利益をもたらしたと言う指摘である。
元はと言えば、中国人は男の子を好むので、一人っ子政策が、男女差の不均衡を生み出し、若い層で、男の数が女の数を約20%も上回っていて、結婚市場の熾烈な競争に勝とうと、息子が結婚できる可能性が高まるようにと、息子を持つ家計が貯蓄に励んだので、実質貯蓄が60%増大した。この男女比の不均衡が原因となった中国の貯蓄がアメリカに貸し出されて、消費経済を煽ってアメリカの好況を招き、結果的には、サブプライムローンから金融大恐慌を招いてしまったと言うことであろうか。
また、この男女比の不均衡が、デジタル経済に影響を与えた。出会い系サイトが活況を呈して、欧米の一夜限りの相手探しではなく、中国では婚活サイトに集中して、デジタル関連消費を煽ったと言うから面白い。
ついでに、ロシアの男女比不均衡についても触れている。
この方は、逆で、大抵過度の飲酒で、多くの男性が早死にして、男性が少ないのである。
ロシアについては、人口学者のエマニュエル・トッドが、過去に、ロシアの人口減に注目してロシアの没落を予測し、その後の人口増で、見解を改めていた。しかし、プーチンは、人口減による国力低下に神経質になっており、ウクライナなどからの移民政策を積極的に推進している。
人口は、国力の最重要な決定要素なのである。
移民ついては、次回に回したい。
「第1章 出生率の動向を追う」では、出生率と移民について論じているのだが、この段階から面白い議論を展開しているので、今回は、このトピックスについて考えてみた。
私が子供の頃には、世界人口は30億人と学んだのだが、今では75億人。
1968年に「人口爆弾」という本が出て、地球上に人が溢れて、その過程で人類を、そして、莫大な数の動植物を滅ぼしてしまうのではないかと、世界中の政府も国民も、この不可避と思える事態を真剣に恐れてきた。
しかし、今や、欧州や米国、東アジアで出生率が低下する一方、アフリカや中東、南アジアでは出生率の低下が緩慢に進み、
著者は、2030年になる頃には、人類は”赤ん坊不足”に直面する。と言うのである。
下図は、世界人口に占める地域別人口比率である。

それでは、世界中で出生率低下の理由は何なのであろうか。
まず、今日の女性は、経済社会が豊かになって、家庭の外の好機をより多く享受している。その好機を摑むために、より高い教育を受け、出産時期の引き延ばしに繋がる。経済のみならず広く社会において女性の役割が変化したことが、世界的な出生率低下の背後にある最も重要な要因である。
更なる要因は、セックスに対する興味の低下で、
マルサスが見落としていたのは、現代の技術が如何に性欲を減退させるかで、技術と性欲の関係は驚くほど単純で、娯楽の種類が増えれば増えるほど、セックスの回数は減退する。現代社会は、ラジオやテレビからビデオゲーム、ソーシャルメディアまで様々な娯楽の選択肢を提供している。面白いのは、シンガポールの急速な経済成長の勢いを維持するためには若い人口が必要だと、政府が、子供の居ない夫婦を選んで信書を出し、バリ島の休暇に無料で招待して、”その気になる”ことを期待したが、子供は生まれなかった。と言うこと。
また、お金も、子供を持つか持たないかを決める重要な要素である。
収入が上がれば、人は、数を増やすのではなく、質の高さを求めるようになる。「子供の数と質の相互関係は、収入の上昇とともに子供の実効価格が上がる最も重要な理由だ」とベッカーが説く如く、より少ない子供により多くの愛情を注ぎ、持てる資源を投入する。
さて、この章のサブタイトルは、「人口不足、アフリカのベビーブーム、来る産業革命」
2030以降、人口が増加するのは、アフリカだけで、これからは、アフリカの人口を養うという大きな好機が訪れると説く。
アフリカが、膨大な人口爆発を支えきれるのかという疑問については、下図を見れば分かるように、ソ連と南アメリカとオセアニアを除けばすっぽりと世界の国々が収まるほど、アフリカは巨大なのである。ここで言う産業革命というのは、第5次とか第6次だとか言った新しい産業革命ではなく、農業革命や経済構造の向上による成長発展と言うことで、先進国へのキャッチアップである。これらについては、これまで、このブログで、BOPビジネスやリバース・イノベーションなどで論じてきたので、省略する。
私自身は、政治的な要因が帰趨を決すると思っているので、著者のように一本調子の展開は疑問だと思っている。

この章で、もっと面白いのは、中国の一人っ子政策が、回り回って、アメリカ人の住宅ローンと消費者ローンの金利を下げて消費を煽り、アメリカの消費者に棚ぼた式の利益をもたらしたと言う指摘である。
元はと言えば、中国人は男の子を好むので、一人っ子政策が、男女差の不均衡を生み出し、若い層で、男の数が女の数を約20%も上回っていて、結婚市場の熾烈な競争に勝とうと、息子が結婚できる可能性が高まるようにと、息子を持つ家計が貯蓄に励んだので、実質貯蓄が60%増大した。この男女比の不均衡が原因となった中国の貯蓄がアメリカに貸し出されて、消費経済を煽ってアメリカの好況を招き、結果的には、サブプライムローンから金融大恐慌を招いてしまったと言うことであろうか。
また、この男女比の不均衡が、デジタル経済に影響を与えた。出会い系サイトが活況を呈して、欧米の一夜限りの相手探しではなく、中国では婚活サイトに集中して、デジタル関連消費を煽ったと言うから面白い。
ついでに、ロシアの男女比不均衡についても触れている。
この方は、逆で、大抵過度の飲酒で、多くの男性が早死にして、男性が少ないのである。
ロシアについては、人口学者のエマニュエル・トッドが、過去に、ロシアの人口減に注目してロシアの没落を予測し、その後の人口増で、見解を改めていた。しかし、プーチンは、人口減による国力低下に神経質になっており、ウクライナなどからの移民政策を積極的に推進している。
人口は、国力の最重要な決定要素なのである。
移民ついては、次回に回したい。