地政学とは何か、今流行りの國際政治課題だが、この本は、国境について詳細に語っていて面白い。
今回は、消えゆく国境について、中国の国家戦略を考えたいと思う。
中国は、陣営に巻き込んだソロモンやキリバスなどの消えゆく島々を抑えて、南太平洋に確固たる基地を確立すれば、列島線突破を策せずに、兵を使わずに海外覇権に近づくのではないかと言うことである。
まず、カレントトピックスの中国の南太平洋へのアグレッシブなアプローチについて触れてみたい。
近年、急速に、中国が南太平洋への進出を加速させており、3月末、ソロモン諸島と「安全保障協定」で基本合意した。ソロモン諸島は1000以上の島とサンゴ礁からなる国だが、協定では、ソロモンが中国軍の派遣や艦船の寄港を認めるなど、高度な軍事面での協力が盛り込まれている模様で、ソロモン諸島は、アメリカとオーストラリアを結ぶ海上輸送路に位置する戦略的にも極めて重要な場所で、中国が地政学上の要衝に軍事的な拠点を設けようとする動きに、オーストラリアや米国は警戒を強めている。
この安全保障協定が発効すれば、中国は、太平洋への軍事的進出の重要な戦略的プレゼンスを手に入れることになり、ソロモンのソガバレ首相は政権維持の重しとなる財源を得ることが出来、両者相互に利害が一致している。
同じ頃、大統領選挙で勝った新大統領が台湾と断交して、中国と国交を結んだキリバスでも政変があり、南太平洋の14か国中、台湾との関係を維持しているのは4か国だけとなり、中国の影響力が一気に強化されてきた。
さて、国家にとって重要な役割を果たす海洋上のテリトリーは、領海と排他的経済水域である。
領海とは、基線から最大12海里(約22.2キロメートル)までの範囲で国家が設定した帯状の沿岸国の主権が及ぶ水域である。
排他的経済水域は、国連海洋法条約で規定されている、自国の基線 から200海里(370.4キロメートル)の範囲内に設定されている水域である。設定水域における、海上・海中・海底、及び海底下に存在する水産・鉱物資源並びに、海水・海流・海風から得られる自然エネルギーに対して、探査・開発・保全及び管理を行う排他的な権利を有することが明記されている。
問題は、地球温暖化による海面上昇で、世界中の島々が消滅しつつあると言う現実である。
最悪の被害を受けるのは、キリバス、ツバルと言った南太平洋の諸島国家と、海抜1㍍に過ぎないモルジブだという。今世紀末までに世界の海面高が80㎝~1㍍上昇した場合、海洋面積の数百万平方㎞が浸水し、地球上の陸地面積が約1万7000平方㎞縮小し、1億8000万人もの人々が住まいを失うと推定されている。
また、2030年までに、世界都市部の40%が日常的に洪水を経験するようになり、何百人もの人々を巻き込んだ大規模な人口移動が発生する可能性が高いと言う。
ところで、気候変動の影響を受けて、海洋国家の島嶼国の島々が水没してくると、必然的に国土が縮小し、領海も排他的経済水域も消滅して行く。
海に面した国々は、海岸線を都合良く利用する技術に徐々に長けてきて、領海の主張を行う際に、海浜の低潮線ではなくて、「低潮高地 干潮時だけに海面上に現われる磯や岩」を基準にする。
最も悪名高いのは、中国で、南シナ海で人為的に新たな島や隆起を作って、海洋支配権を主張する支えとしている。
中国の場合は、海軍と陸軍のプレゼンスを笠に着た浚渫船団を動員して、これらの領土が海面上昇によって水没することのないように投資を継続する。
中国のこの行いは、法的・軍事的力の乱用と思えるが、多くの島嶼国が、生き延びるために人口島の建設や要塞化に手を染めなければならないとするならばどうするか、
ソロモン諸島やキリバスには、そのような財政的余裕もなければ力もない。結果は見えている。
中国は、既に、「一帯一路」戦略で、多くの発展途上国に、建物や空港、港などインフラ支援と引き換えに多額の借金を抱えさせて、いわゆる「債務の罠」に陥らせて、国家経済窮地に追い込んでインフラ設備等を抑えるなどして、支配体制を進めている。
広大な領海と経済的排他水域を持つ、消えゆく国境の島嶼国ソロモンやキリバスなど南太平洋の島々を、「一帯一路」方式と南沙諸島の基地拡張方式ミックスで援助サポートして支配下において、確固たるプレゼンスを確立すれば、中国は、苦労して「列島線」突破を狙わなくても、期せずして、米国のどてっ腹に軍事基地を構築して、海洋覇権へ近づけると言うことではなかろうか。
この本の主張とは関係ないが、フッと、そんなことを考えた。
ところで、私自身は、自由と平等に価値をおかない非民主主義的な専制主義国家体制には賛同しかねるので、米豪日の奮起を期待したいと思っている。
今回は、消えゆく国境について、中国の国家戦略を考えたいと思う。
中国は、陣営に巻き込んだソロモンやキリバスなどの消えゆく島々を抑えて、南太平洋に確固たる基地を確立すれば、列島線突破を策せずに、兵を使わずに海外覇権に近づくのではないかと言うことである。
まず、カレントトピックスの中国の南太平洋へのアグレッシブなアプローチについて触れてみたい。
近年、急速に、中国が南太平洋への進出を加速させており、3月末、ソロモン諸島と「安全保障協定」で基本合意した。ソロモン諸島は1000以上の島とサンゴ礁からなる国だが、協定では、ソロモンが中国軍の派遣や艦船の寄港を認めるなど、高度な軍事面での協力が盛り込まれている模様で、ソロモン諸島は、アメリカとオーストラリアを結ぶ海上輸送路に位置する戦略的にも極めて重要な場所で、中国が地政学上の要衝に軍事的な拠点を設けようとする動きに、オーストラリアや米国は警戒を強めている。
この安全保障協定が発効すれば、中国は、太平洋への軍事的進出の重要な戦略的プレゼンスを手に入れることになり、ソロモンのソガバレ首相は政権維持の重しとなる財源を得ることが出来、両者相互に利害が一致している。
同じ頃、大統領選挙で勝った新大統領が台湾と断交して、中国と国交を結んだキリバスでも政変があり、南太平洋の14か国中、台湾との関係を維持しているのは4か国だけとなり、中国の影響力が一気に強化されてきた。
さて、国家にとって重要な役割を果たす海洋上のテリトリーは、領海と排他的経済水域である。
領海とは、基線から最大12海里(約22.2キロメートル)までの範囲で国家が設定した帯状の沿岸国の主権が及ぶ水域である。
排他的経済水域は、国連海洋法条約で規定されている、自国の基線 から200海里(370.4キロメートル)の範囲内に設定されている水域である。設定水域における、海上・海中・海底、及び海底下に存在する水産・鉱物資源並びに、海水・海流・海風から得られる自然エネルギーに対して、探査・開発・保全及び管理を行う排他的な権利を有することが明記されている。
問題は、地球温暖化による海面上昇で、世界中の島々が消滅しつつあると言う現実である。
最悪の被害を受けるのは、キリバス、ツバルと言った南太平洋の諸島国家と、海抜1㍍に過ぎないモルジブだという。今世紀末までに世界の海面高が80㎝~1㍍上昇した場合、海洋面積の数百万平方㎞が浸水し、地球上の陸地面積が約1万7000平方㎞縮小し、1億8000万人もの人々が住まいを失うと推定されている。
また、2030年までに、世界都市部の40%が日常的に洪水を経験するようになり、何百人もの人々を巻き込んだ大規模な人口移動が発生する可能性が高いと言う。
ところで、気候変動の影響を受けて、海洋国家の島嶼国の島々が水没してくると、必然的に国土が縮小し、領海も排他的経済水域も消滅して行く。
海に面した国々は、海岸線を都合良く利用する技術に徐々に長けてきて、領海の主張を行う際に、海浜の低潮線ではなくて、「低潮高地 干潮時だけに海面上に現われる磯や岩」を基準にする。
最も悪名高いのは、中国で、南シナ海で人為的に新たな島や隆起を作って、海洋支配権を主張する支えとしている。
中国の場合は、海軍と陸軍のプレゼンスを笠に着た浚渫船団を動員して、これらの領土が海面上昇によって水没することのないように投資を継続する。
中国のこの行いは、法的・軍事的力の乱用と思えるが、多くの島嶼国が、生き延びるために人口島の建設や要塞化に手を染めなければならないとするならばどうするか、
ソロモン諸島やキリバスには、そのような財政的余裕もなければ力もない。結果は見えている。
中国は、既に、「一帯一路」戦略で、多くの発展途上国に、建物や空港、港などインフラ支援と引き換えに多額の借金を抱えさせて、いわゆる「債務の罠」に陥らせて、国家経済窮地に追い込んでインフラ設備等を抑えるなどして、支配体制を進めている。
広大な領海と経済的排他水域を持つ、消えゆく国境の島嶼国ソロモンやキリバスなど南太平洋の島々を、「一帯一路」方式と南沙諸島の基地拡張方式ミックスで援助サポートして支配下において、確固たるプレゼンスを確立すれば、中国は、苦労して「列島線」突破を狙わなくても、期せずして、米国のどてっ腹に軍事基地を構築して、海洋覇権へ近づけると言うことではなかろうか。
この本の主張とは関係ないが、フッと、そんなことを考えた。
ところで、私自身は、自由と平等に価値をおかない非民主主義的な専制主義国家体制には賛同しかねるので、米豪日の奮起を期待したいと思っている。