プロジェクト・シンジケートのジョセフ・ナイ教授の「日本の戦略的責務 Japan’s Strategic Imperative」が、興味深い。
中国、ロシア、北朝鮮による脅威に直面して、日本の自衛は、これまで以上に同盟の強さに依存している。 自国の防衛費を大幅に増やし、米国とのより緊密な軍事協力を追求することにより、現在の政府は正しい方向に進んでいる。
昨年 12 月、岸田首相は、1954 年の自衛隊創設以来、日本で最も野心的な軍事力の拡大を発表した。日本の防衛費は、 1976 年以来GDPの1%であったのが2倍の 2% に増加する。この新たな国家安全保障戦略は、日本が今後自国を守るために使用するすべての外交、経済、技術、および軍事手段を提示している。と言うのである。
最も注目すべきは、日本が以前に予言していた種類の長距離ミサイルを取得し、米国と協力して中国沖の「第一列島線」周辺の沿岸防衛を強化することである。 先月ワシントンで、岸田首相のG7諸国への外交訪問の後、バイデン大統領は、より緊密な防衛協力を約束した。 これらの変化を引き起こした要因には、台湾に対する中国の自己主張の強まり、特にロシアのウクライナ侵攻があり、これは新世代の軍事侵略がどのようなものかを見せつけた。
ナイ教授は、この日本の軍事強化戦略についての内外の懸念や反対について、強固な日米同盟の存在こそが、これを払拭する手段だという。。
米国が課した憲法が日本軍の役割を自衛に限定したり、 冷戦中、日本の安全保障は米国との協力に依存していたことなどで、第二次世界大戦後、軍国主義は日本国内で深く信用されなくなった。
しかし、冷戦が終結したからといっても、日本は危険な地域に在り続けていた。 核とミサイル技術に国運をかけた北朝鮮の予測不可能な独裁政権があり、はるかに大きく長期的な懸念は、尖閣諸島に対する支配権を争っている世界第 2 位の経済大国となった中国の台頭であり、 北では、核武装したロシアが、1945年以前に日本に属していた領土を主張し、支配している。そして経済面では、日本は南シナ海のような紛争地域を通過する輸入に大きく依存している。 東アジアはライバル同士の完全な和解や確立された強力な地域機関から恩恵を受けることがなかったため、これらは永続的なリスク源である。
このような状況に直面して、日本には、安全保障を確保するための 4 つの選択肢があった。
憲法の平和主義を修正し、核保有国として完全に再武装することは、費用がかかり、危険であり、国内の支持を欠く、
同時に、中立を求めて国連憲章に頼っても十分な安全保障は得られない、
中国と同盟を結ぶことは中国の政策への影響力を大きく受けすぎる
最後に、遠く離れた超大国アメリカとの同盟関係を維持すること、この提携が、最も安全で費用対効果の高い選択肢であった。
問題は、有事にアメリカが日本を防衛してくれるのかどうか。
日本人は、米国が孤立主義に向かうことを懸念している。中国がより強力になったときに米国がいつか日本を見捨てるのではないか、
アメリカの保証の信頼性について疑問を持ち続けている。
これに対するナイ教授の答えは、
最善の安全保証は米軍の駐留であり、日本は寛大な支援によって維持を支援している。 1月に岸田とバイデンが発表した新しい措置は、この保証を強化し、トランプまたはトランプのような人物がホワイトハウスに戻った場合に再保険を提供するように設計されている。重要なことは、これらの措置は、日本の近隣諸国に、日本が再び侵略の味を覚えたのではないかと恐れる理由を与えないということである。 実際、日米同盟を強化することは、日本がそうならないようにする最善の方法である。
アーミテージ・ナイ報告書で、「アジア太平洋全体でダイナミックな変化が起こっているため、日本がこの地域の運命を導く手助けをする同じ機会を得ることはおそらくないであろう。リーダーシップを選択することによって、日本はティア 1 国家としての地位と、 同盟における対等なパートナーとして必要な役割を確保することができる。」述べている。
この文脈において、岸田首相の最近の行動は、正しい方向への適切なステップと見なすことができる。 より対等なパートナーシップを発展させ、共同安全保障の提供において他者と協力することには、大きな可能性がある。 そうすることは、米国にとっても、日本にとっても、そして世界にとっても良いことである。 最近の出来事は、日米同盟の将来と東アジアの安定性について楽観的な基礎となっている。
以上が、ナイ教授の論文の概要である。
日本の位置づけは、確固とした日米同盟を核としたG7主体の西側の自由民主主義陣営に属しており、中ロなど独裁政治体制専制国家陣営に対する存在だが、現在のグローバル体制には、これ以外に、一体化していないが個々に独立した強力な第3極とも言うべき新興国および発展途上国の国家群が存在する。
現在、世界は、Gゼロの無極時代だという説もあるが、現実には、3極化している。この第3極は、自国の利害優先で、民主主義陣営と独裁陣営のどちらにも属さず、是々非々主義で独自に行動している。
アジアにも、この第3極のG20メンバー国が存在するなど、国力を増してかなり影響力があって、利害が錯綜すると、自陣営に取り込み難くなり、国際問題の解決や秩序維持が難しくなることがある。
次の図は、日経記事「そして3極に割れた世界 協調嫌がる「中立パワー」台頭」から借用した「3極化する世界の勢力図」だが、米主導の秩序が壊れつつあることが良く分かる。
中国やロシアが、経済援助や情報工作、プロパガンダなどあらゆる手段を駆使して、グローバル・サウスなどのアフリカやアジアなどの発展途上国への進出や勢力拡大に腐心している。
ナイ教授の説く如く、日米同盟の強化で安泰だとして、中国ロシアなど独裁政治陣営に有効に対処できるとしても、第3極との政治経済あるいは外交関係如何によっては、難題が待ち受けているかも知れない、と言う問題提起だけはしておきたい。
中国、ロシア、北朝鮮による脅威に直面して、日本の自衛は、これまで以上に同盟の強さに依存している。 自国の防衛費を大幅に増やし、米国とのより緊密な軍事協力を追求することにより、現在の政府は正しい方向に進んでいる。
昨年 12 月、岸田首相は、1954 年の自衛隊創設以来、日本で最も野心的な軍事力の拡大を発表した。日本の防衛費は、 1976 年以来GDPの1%であったのが2倍の 2% に増加する。この新たな国家安全保障戦略は、日本が今後自国を守るために使用するすべての外交、経済、技術、および軍事手段を提示している。と言うのである。
最も注目すべきは、日本が以前に予言していた種類の長距離ミサイルを取得し、米国と協力して中国沖の「第一列島線」周辺の沿岸防衛を強化することである。 先月ワシントンで、岸田首相のG7諸国への外交訪問の後、バイデン大統領は、より緊密な防衛協力を約束した。 これらの変化を引き起こした要因には、台湾に対する中国の自己主張の強まり、特にロシアのウクライナ侵攻があり、これは新世代の軍事侵略がどのようなものかを見せつけた。
ナイ教授は、この日本の軍事強化戦略についての内外の懸念や反対について、強固な日米同盟の存在こそが、これを払拭する手段だという。。
米国が課した憲法が日本軍の役割を自衛に限定したり、 冷戦中、日本の安全保障は米国との協力に依存していたことなどで、第二次世界大戦後、軍国主義は日本国内で深く信用されなくなった。
しかし、冷戦が終結したからといっても、日本は危険な地域に在り続けていた。 核とミサイル技術に国運をかけた北朝鮮の予測不可能な独裁政権があり、はるかに大きく長期的な懸念は、尖閣諸島に対する支配権を争っている世界第 2 位の経済大国となった中国の台頭であり、 北では、核武装したロシアが、1945年以前に日本に属していた領土を主張し、支配している。そして経済面では、日本は南シナ海のような紛争地域を通過する輸入に大きく依存している。 東アジアはライバル同士の完全な和解や確立された強力な地域機関から恩恵を受けることがなかったため、これらは永続的なリスク源である。
このような状況に直面して、日本には、安全保障を確保するための 4 つの選択肢があった。
憲法の平和主義を修正し、核保有国として完全に再武装することは、費用がかかり、危険であり、国内の支持を欠く、
同時に、中立を求めて国連憲章に頼っても十分な安全保障は得られない、
中国と同盟を結ぶことは中国の政策への影響力を大きく受けすぎる
最後に、遠く離れた超大国アメリカとの同盟関係を維持すること、この提携が、最も安全で費用対効果の高い選択肢であった。
問題は、有事にアメリカが日本を防衛してくれるのかどうか。
日本人は、米国が孤立主義に向かうことを懸念している。中国がより強力になったときに米国がいつか日本を見捨てるのではないか、
アメリカの保証の信頼性について疑問を持ち続けている。
これに対するナイ教授の答えは、
最善の安全保証は米軍の駐留であり、日本は寛大な支援によって維持を支援している。 1月に岸田とバイデンが発表した新しい措置は、この保証を強化し、トランプまたはトランプのような人物がホワイトハウスに戻った場合に再保険を提供するように設計されている。重要なことは、これらの措置は、日本の近隣諸国に、日本が再び侵略の味を覚えたのではないかと恐れる理由を与えないということである。 実際、日米同盟を強化することは、日本がそうならないようにする最善の方法である。
アーミテージ・ナイ報告書で、「アジア太平洋全体でダイナミックな変化が起こっているため、日本がこの地域の運命を導く手助けをする同じ機会を得ることはおそらくないであろう。リーダーシップを選択することによって、日本はティア 1 国家としての地位と、 同盟における対等なパートナーとして必要な役割を確保することができる。」述べている。
この文脈において、岸田首相の最近の行動は、正しい方向への適切なステップと見なすことができる。 より対等なパートナーシップを発展させ、共同安全保障の提供において他者と協力することには、大きな可能性がある。 そうすることは、米国にとっても、日本にとっても、そして世界にとっても良いことである。 最近の出来事は、日米同盟の将来と東アジアの安定性について楽観的な基礎となっている。
以上が、ナイ教授の論文の概要である。
日本の位置づけは、確固とした日米同盟を核としたG7主体の西側の自由民主主義陣営に属しており、中ロなど独裁政治体制専制国家陣営に対する存在だが、現在のグローバル体制には、これ以外に、一体化していないが個々に独立した強力な第3極とも言うべき新興国および発展途上国の国家群が存在する。
現在、世界は、Gゼロの無極時代だという説もあるが、現実には、3極化している。この第3極は、自国の利害優先で、民主主義陣営と独裁陣営のどちらにも属さず、是々非々主義で独自に行動している。
アジアにも、この第3極のG20メンバー国が存在するなど、国力を増してかなり影響力があって、利害が錯綜すると、自陣営に取り込み難くなり、国際問題の解決や秩序維持が難しくなることがある。
次の図は、日経記事「そして3極に割れた世界 協調嫌がる「中立パワー」台頭」から借用した「3極化する世界の勢力図」だが、米主導の秩序が壊れつつあることが良く分かる。
中国やロシアが、経済援助や情報工作、プロパガンダなどあらゆる手段を駆使して、グローバル・サウスなどのアフリカやアジアなどの発展途上国への進出や勢力拡大に腐心している。
ナイ教授の説く如く、日米同盟の強化で安泰だとして、中国ロシアなど独裁政治陣営に有効に対処できるとしても、第3極との政治経済あるいは外交関係如何によっては、難題が待ち受けているかも知れない、と言う問題提起だけはしておきたい。