熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジョージ・ソロスの危機意識

2023年02月24日 | 政治・経済・社会時事評論
   ジョージ・ソロスが、興味深い論文をプロジェクト・シンジケートに掲載した。「Global Warming, Hot Wars, Closed Societies 地球温暖化、熱い戦争、閉鎖的な社会」である。
   長い論文であり、多岐にわたっているが、現状のグローバル世界について、何時もの持論を展開しているので、ウクライナ戦争1年後の日に合わせて、結論だけ論じてみたい。

   2 つの統治システムが地球規模の支配をめぐって争っている一方で、容赦ない気候変動の進行により、人類の文明は崩壊の危機に瀕している。
    While two systems of governance are engaged in a fight for global domination, human civilization is in danger of collapse because of the inexorable advance of climate change.と言うのである。
   ソロスの言葉で言えば、2つの統治システムとは、開かれた社会と閉じられた社会であり両者が地球規模の支配をめぐって争っている。と言うことである。
   私は、現在のグローバル世界には、どちらにも属さない第3の勢力である強力な新興国や発展途上国のグループが存在して無視できないと論じてきたが、今回は、ウクライナ戦争の当事者である2つのシステムに限定して触れないことにする。

   ところで、ソロスは、地球温暖化につては、かなり悲観的な展望を述べているが、結論めいた論述は避けている。
   開かれた社会と閉じられた社会論であるが、開かれた社会とは、国家の役割は個人の自由を保護することであり、閉鎖社会とは、個人の役割は国家の利益に奉仕することだとして、世界の主要国や新興国の現状を地政学的な見地から語っていて興味深い。

   ロシアにつてはウクライナ戦争について語っていて、興味深いのは次の文章である。
   希望的観測ではあろうが、西側からの最新型戦車や、戦闘機や長距離ミサイルの供与を受けて、攻撃に転じるウクライナの勝利を見越しての見解であろう。
   ウクライナは今春後半に約束された兵器を受け取り、ロシアのウクライナ侵攻の運命を決定する反撃を開始する機会のわずかな燭光が見える。 旧ソビエト連邦の国々は、独立を主張したいので、ロシアがウクライナで敗北するのを待ちきれない。 これは、ウクライナの勝利がロシア帝国崩壊を結果することを意味する。 ロシアはもはやヨーロッパと世界に脅威を与えることはない。 それは良い方向への大きな変化となるであろう。 それは開かれた社会に大きな安心をもたらし、閉鎖的な社会にとてつもない問題を生み出すであろう。
   This gives Ukraine a narrow window of opportunity later this spring, when it receives the promised armaments, to mount a counterattack which would determine the fate of the Russian invasion of Ukraine. The countries of the former Soviet Union can hardly wait to see the Russians defeated in Ukraine because they want to assert their independence. This means that a Ukrainian victory would result in the dissolution of the Russian empire. Russia would no longer pose a threat to Europe and the world. That would be a big change for the better. It would bring huge relief to open societies and create tremendous problems for closed ones.
   
   開かれた社会は閉じられた社会よりも優れていると信じており、アサド政権のシリア、ベラルーシ、イラン、ミャンマーのような抑圧的な体制の下で生活しなければならない人々を悲しんでる、と言うのがソロス論文の結語だが、いずれにしろ、開かれた社会の勝利を疑わないのであろう。

   私は、この論文を読んでいて、最初に思ったのは、開かれた社会と閉じられた社会の争いが、ウクライナ戦争勃発で極めて典型的な形で露呈してしまったが、馬鹿な戦争にうつつを抜かしている間に、既に秒読み段階に入った地球温暖化による人類社会崩壊の危機が、もうそこまで近づいているのに気づかない人間の愚かさを揶揄しているように思えたことである。
コメント
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