PSに、1998年から2005年までドイツの外務大臣兼副首相を務めたドイツ緑の党の指導者ヨシュカ・フィッシャーが、興味深いEU論を展開した。
欧州は世界最大の敗者となるのか? Will Europe Be the World's Biggest Loser?
ロシアの対ウクライナ戦争、米中対立、そして新たな中堅国の台頭などによって、国際秩序の大幅な再編が促進されており、ヨーロッパは明らかに不利な立場に置かれることになった。 軍事予算が増大する大国が支配する今日の世界で繁栄するためには、ヨーロッパ自身が真の大国になる以外に選択肢はない。と言うのである。
フィッシャーは、米中対立を利用して漁夫の利を求めようとする新興大国の暗躍やロシアの国家戦略等についても論じているが、
興味深いのは、国際競争の間で、斜陽傾向にあるEUや日本の産業や経済力の低下トレンドについて論じていて、EUに取っては、真の統一連合国家体制の構築以外に生きる道はないと説いていることである。。
国際システムに対するより広範な危険は、ウクライナ戦争(真の世界的脅威とするにはロシアが弱すぎる)からではなく、米中関係の悪化から生じている。 確かに、台湾に対する中国の好戦的な発言や、台湾周辺海域での積極的な海軍演習にもかかわらず、これまでのところ対立は軍事的というよりは、経済的、技術的、政治的なものである。 しかし、それは冷ややかな慰めであり、それは激化するゼロサム紛争だからである。
この対立で最大の敗者となるのは、日本と欧州になる可能性が高い。 中国企業は自動車産業、特に電気自動車(EV)で大規模な生産能力を構築しており、現在では長らく世界的に支配的であった欧州や日本の自動車メーカーを圧倒する態勢を整えている。
さらに悪いことに、中国との競争に対するアメリカ自身の対応は、ヨーロッパと日本の製造業者の犠牲を伴う産業政策を追求することである。 たとえば、インフレ抑制法などの最近の法律は、米国で生産される自動車に多額の補助金を提供している。 米国の観点からすると、このような政策は国内大手メーカーを保護し、EV開発を推進するインセンティブを与えるという一石二鳥ではあるが、EUや日本にとっては最悪である。
最終的には世界の自動車産業が徹底的に再編され、日本と欧州(主にドイツ)が競争力と市場シェアを失うことになるであろうが、忘れてはならないのは、この大きな経済的なトレンドは、はるかに大規模な世界的な対立と戦略的再秩序の始まりにすぎないということである。
ヨーロッパは、この世界経済の再編の間、経済モデルを維持するために多大な労力を費やさなければならない。 更に、高いエネルギーコスト、2つの超大国との間で拡大するデジタル技術の差、そしてロシアからの新たな脅威に対抗するための防衛費の増加の緊急の必要性にも対処しなければならない。 トランプ氏がホワイトハウスに復帰する可能性があることを考慮すると、次の米国大統領選挙が近づくにつれて、これらすべての優先事項はさらに緊急性を増すことになるであろう。
したがって、ヨーロッパは特に不利な立場にあると言える。 この地域はますます危険な地域にあるが、二度の世界大戦と数十年にわたる冷戦の経過後でも、真の統合を達成する意志を決して結集することのできない主権国民国家の連合体であり、未だに統一国家体制ではない。 軍事予算が増大する大国が多数を占める世界において、ヨーロッパは依然として真の大国ではない。
この状態が今後も続くかどうかはヨーロッパ人次第だが、 世界はヨーロッパの成長を待ってはくれない。 欧州が今日の世界的な再秩序に立ち向かうつもりなら、すぐに始めるべきである。
ドイツと雖も、今や、米中から、科学技術や最先端の生産業において、大きく遅れを取ってしまったと言う危機意識が濃厚に表明された論文だが、最早、グローバリゼーションには戻り得ないとすると、米中に倣えではなく、独立した確固たる地盤を確立しなければならない。それには、依って立つEUを、米中に真面に対峙できる統一した連合国家なり合衆国にして、経済のみならず、政治的にも単一国家体制を確立して大国にしなければならない。と言うことである。
EUの弱体化、崩壊の危機に神経質になっているが、ブレクジットが典型で、元々、歴史的背景も文化文明も国民性も違った呉越同舟の連合体であり、政治的統合など不可能であろうから、EU加盟の恩典だけを享受して,横車を押す国などを、可能なら除名して、元の6カ国のように核となる国同士で再編成すべきであろうと思う。
いずれにしろ、フィッシャーは、少なくとも、EUが統一して実質的な大国になれば、米中と対等に、あるいはそれ以上にパワフルに競争できる体制を確立できると考えているのであろうが、まず、独仏連合の結束が出来るかどうかがポイントとなろう。
8年ヨーロッパに住んでいての実感だが、イギリスを筆頭として、EUの人々は、ヨーロッパ人と言う意識よりも、○○国人と言うローカル意識の方が強くて、現実にも、かなり豊かな自由な民主主義的な環境下で、安定した恵まれた生活をしているので、是々非々主義で対応できれば、EU統合などには特に関心はない。
従って、フィッシャーが意図するような真正な統一したEU連合なり統一政治体制の確立はむりであろうから、何らかの便法を探し出して対応せねばならないであろう。
日本も、完全に孤立した単独国家なので、フィッシャーの説くEUと同様な立場に立つ。
今更、強力な体制に加入するなど無理なので、アメリカ一辺倒が嫌なら、協力する相手を精査選択して、イエレン財務長官がコインした有効なフレンドショアリング体制を確立する以外に道はないと思っている。
欧州は世界最大の敗者となるのか? Will Europe Be the World's Biggest Loser?
ロシアの対ウクライナ戦争、米中対立、そして新たな中堅国の台頭などによって、国際秩序の大幅な再編が促進されており、ヨーロッパは明らかに不利な立場に置かれることになった。 軍事予算が増大する大国が支配する今日の世界で繁栄するためには、ヨーロッパ自身が真の大国になる以外に選択肢はない。と言うのである。
フィッシャーは、米中対立を利用して漁夫の利を求めようとする新興大国の暗躍やロシアの国家戦略等についても論じているが、
興味深いのは、国際競争の間で、斜陽傾向にあるEUや日本の産業や経済力の低下トレンドについて論じていて、EUに取っては、真の統一連合国家体制の構築以外に生きる道はないと説いていることである。。
国際システムに対するより広範な危険は、ウクライナ戦争(真の世界的脅威とするにはロシアが弱すぎる)からではなく、米中関係の悪化から生じている。 確かに、台湾に対する中国の好戦的な発言や、台湾周辺海域での積極的な海軍演習にもかかわらず、これまでのところ対立は軍事的というよりは、経済的、技術的、政治的なものである。 しかし、それは冷ややかな慰めであり、それは激化するゼロサム紛争だからである。
この対立で最大の敗者となるのは、日本と欧州になる可能性が高い。 中国企業は自動車産業、特に電気自動車(EV)で大規模な生産能力を構築しており、現在では長らく世界的に支配的であった欧州や日本の自動車メーカーを圧倒する態勢を整えている。
さらに悪いことに、中国との競争に対するアメリカ自身の対応は、ヨーロッパと日本の製造業者の犠牲を伴う産業政策を追求することである。 たとえば、インフレ抑制法などの最近の法律は、米国で生産される自動車に多額の補助金を提供している。 米国の観点からすると、このような政策は国内大手メーカーを保護し、EV開発を推進するインセンティブを与えるという一石二鳥ではあるが、EUや日本にとっては最悪である。
最終的には世界の自動車産業が徹底的に再編され、日本と欧州(主にドイツ)が競争力と市場シェアを失うことになるであろうが、忘れてはならないのは、この大きな経済的なトレンドは、はるかに大規模な世界的な対立と戦略的再秩序の始まりにすぎないということである。
ヨーロッパは、この世界経済の再編の間、経済モデルを維持するために多大な労力を費やさなければならない。 更に、高いエネルギーコスト、2つの超大国との間で拡大するデジタル技術の差、そしてロシアからの新たな脅威に対抗するための防衛費の増加の緊急の必要性にも対処しなければならない。 トランプ氏がホワイトハウスに復帰する可能性があることを考慮すると、次の米国大統領選挙が近づくにつれて、これらすべての優先事項はさらに緊急性を増すことになるであろう。
したがって、ヨーロッパは特に不利な立場にあると言える。 この地域はますます危険な地域にあるが、二度の世界大戦と数十年にわたる冷戦の経過後でも、真の統合を達成する意志を決して結集することのできない主権国民国家の連合体であり、未だに統一国家体制ではない。 軍事予算が増大する大国が多数を占める世界において、ヨーロッパは依然として真の大国ではない。
この状態が今後も続くかどうかはヨーロッパ人次第だが、 世界はヨーロッパの成長を待ってはくれない。 欧州が今日の世界的な再秩序に立ち向かうつもりなら、すぐに始めるべきである。
ドイツと雖も、今や、米中から、科学技術や最先端の生産業において、大きく遅れを取ってしまったと言う危機意識が濃厚に表明された論文だが、最早、グローバリゼーションには戻り得ないとすると、米中に倣えではなく、独立した確固たる地盤を確立しなければならない。それには、依って立つEUを、米中に真面に対峙できる統一した連合国家なり合衆国にして、経済のみならず、政治的にも単一国家体制を確立して大国にしなければならない。と言うことである。
EUの弱体化、崩壊の危機に神経質になっているが、ブレクジットが典型で、元々、歴史的背景も文化文明も国民性も違った呉越同舟の連合体であり、政治的統合など不可能であろうから、EU加盟の恩典だけを享受して,横車を押す国などを、可能なら除名して、元の6カ国のように核となる国同士で再編成すべきであろうと思う。
いずれにしろ、フィッシャーは、少なくとも、EUが統一して実質的な大国になれば、米中と対等に、あるいはそれ以上にパワフルに競争できる体制を確立できると考えているのであろうが、まず、独仏連合の結束が出来るかどうかがポイントとなろう。
8年ヨーロッパに住んでいての実感だが、イギリスを筆頭として、EUの人々は、ヨーロッパ人と言う意識よりも、○○国人と言うローカル意識の方が強くて、現実にも、かなり豊かな自由な民主主義的な環境下で、安定した恵まれた生活をしているので、是々非々主義で対応できれば、EU統合などには特に関心はない。
従って、フィッシャーが意図するような真正な統一したEU連合なり統一政治体制の確立はむりであろうから、何らかの便法を探し出して対応せねばならないであろう。
日本も、完全に孤立した単独国家なので、フィッシャーの説くEUと同様な立場に立つ。
今更、強力な体制に加入するなど無理なので、アメリカ一辺倒が嫌なら、協力する相手を精査選択して、イエレン財務長官がコインした有効なフレンドショアリング体制を確立する以外に道はないと思っている。