
驚天動地のトランプ暗殺未遂事件、
ここまでアメリカの民主主義の闇が浸透したのかと思うと、恐ろしくなる。
私がアメリカに住んでいたのは、1972年からの2年間、ニクソン大統領の時代で、ウォーターゲイト事件がアメリカ社会を震撼させていた。
結局ニクソンは、この事件で、私がアメリカを離れて少ししてから辞任した。
しかし、ベトナム戦争を終結させ、キッシンジャーと中国に渡って国交を開くなど偉大な業績を残したのである。
私が問題にするのは、このことではなく、当時のアメリカでは、思想的というか政治的な深刻な二極化はなかったということである。
貧困の撲滅などの実現を主張した「偉大な社会」を掲げた民主党のハンフリーと大統領選挙で戦った時の争点は、公民権運動やベトナム反戦運動の過激化などであって、今日のように、国家を分断する深刻な保守とリベラルの相容れぬ対立ではなかったのである。
深く検証する余裕がないのだが、
「経済だ、バカ “It’s the economy, stupid.” 」で、ブッシュに勝ったクリントン時代には、まだそれほど問題ではなかったように思う。
しかし、この間、ベルリンの壁やソ連の崩壊で世界がフラットになって資本市場が拡大して、ICT革命とグローバリゼーションの拡大が呼応して、中印など新興国の経済的台頭で、一気に、グローバル経済の発展拡大を引き起こした。
同時に、アメリカ経済の地位が低下し始めて、リーマンショックに端を発する2008年の世界金融大危機以降、経済格差の異常な高まりで、アメリカの資本主義が暗礁に乗り上げた。
格差と貧苦に泣き、エスタブリッシュメントに反旗を翻した国民大衆が立ち上がって、「We are the 99% ウォール街を占拠せよ」が勃発し、
現状を批判し否定して檄を飛ばしたポピュリズムの極致トランプ現象が出現した。
しかし、問題は深刻である。
トランプが叩き潰そうとしている民主主義が国民の福利厚生安寧に如何に大切かを知らずに、
保守党が堅持しようとしている弱肉強食の市場万能の市場資本主義システムが富者強者を利するだけであって国民の益にはならないということに気づかずに、
そして、第2次トランプ政権が、弱者の見方では決してないことを知らずに、
アメリカ国民の多くは、トランプを鳴り物入りで囃し立てている。
知的水準の格差、民度の格差が、アメリカを窮地に追い込んでいる。