熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

対独戦勝60年記念式典・・陰の歴史

2005年05月10日 | 政治・経済・社会
   第二次世界大戦で戦った旧連合軍と旧枢軸国の代表が同席して祝われたロシア・プーチン主催の「対独戦勝60年記念式典」が、9日クレムリンの赤の広場で開催された。
   何故か、英国のブレア首相が居ない。タイムズの「クイーン、ブレア欠席」の字が意味深である。

   ところで、電子版だが、モスクワ タイムズ(The Moscow Times)が、他の欧米メディアと違った興味深い報道をしているので、触れながら今回の記念式典の問題を考えてみた。

   豪華な式典であったが、多くの世界の指導者を集めたと言うプライドだけでプーチンには何も残らなかったし、クレムリンの外交的成功もそれだけである。
   ブッシュとの会合も、何の新しいアグリーメントもなく政治的な飛躍的前進もなくロシアにとっては何の実質実もなかった、EUロシア・サミットの方が有益である、と酷評している。

   興味深いのは、 スターリンについて。ナチからの救世主だと信じている多くのロシア人が居るので、名指しはしなかったが、プーチンが、1941年に、抑圧によって国の存続が危うくなったとスターリン批判について言及していることであるが、AP電以外は触れていない。

   問題の核心は、ポーランド分割とバルト諸国の併合支配を取り決めたモロトフ―リーベントロップ協定に関する取り扱い。
   1941年のヒットラーのソ連侵略により、同協定は解消さてたと、外交筋や議員のロシア政府の協定認知拒否承認や、1941年のソ連最高裁での同協定の秘密条項の終結宣言について触れてロシアは問題解決済みと考えていること。
   また、ソ連は占領者ではなくむしろ解放者なのだと言うEU公使の見解や、バルトの人こそドイツ側に立って戦ったのではないかと言ったロシアの見解を紹介しながら、これ等のソ連の一方的な見解が、益々、バルト諸国や東欧の怒りを煽っていることにも言及している。
   対戦終結後併合されたバルト諸国からの占領のお詫び、補償、領土の返還要求の高まりに、ロシアとしても協定の否定に逡巡しているのだと本音を覗かせている。

   いみじくも、New York Timesは、プーチンが、ヒットラーへの勝利は、ヨーロッパの自由への開放だと言っているが、自由ではなく別なイデオロギーによる抑圧をもたらしたのだと言うポーランドやバルト諸国の見解を引用している。
   歴史認識の問題は、どこの国も根が深いのである。

   ブッシュについては、ラトヴィアやグルジア訪問への不快感を示しながら、テロ対策と核拡散防止についてロシアの譲歩を引き出さねばならないので、強くプーチンに当たれない状況を報道。
   米国の最大の関心事は、ロシアの核工場・核施設への米国調査員による査察だが、ロシア国内の強烈な反対について言及している。

   他に、大国意識を発揚したいロシアとしては、ザンクトペテルブルグ300年祭より、もっと派手な式典をやりたかったが、第二次世界大戦におけるソ連の役割については、世界的に必ずしもポジティブに受け取れれている訳でもないので、あの程度に終わったこと等、一寸、ニュアンスの違った報道があり興味深い。
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