熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ディープインパクトの有終の美・・・アスコットの思い出

2006年12月26日 | 海外生活と旅
   日頃、TVで競馬放送など見ないのだが、一昨日は珍しく、ディープインパクトが現役最後のレースに出走すると言うので、TVの前に座った。
   後から3番手を走っていたのだが、コーナー直前に、武豊騎手が一鞭あてただけでぐんぐん速力を増し、直線コースに入ると先頭集団に躍り出て、ほんの2百メートル程でトップに立ち一挙に3馬身の差をつけてゴールに突入した。
   競争する馬達も歴戦の勇士で日本でも最高峰の筈なのだが、ダントツの速さで一挙に抜き去るその凄さは、正に感動もので、感激一入であった。
   騎手の武豊さんも凄いが、ディープインパクトの凄さは群を抜いている。
   フランスでは声価を出せなかったが、元々外国からの馬に勝利など与えてくれるような国ではないから、気にすることはなかった。

   ところで、競馬については私自身偏見があったが、アスコット競馬に出かけてから考え方が変った。
   昔、阪神間に住んでいた時に、阪神競馬や園田競馬場が近くにあって、異様な感じで多くの人たちが大挙して競馬場に入っていったり、阪急電車駅に殺到したりしているのを見ていたのと、ギャンブルだと言うことに反発があったのである。
   先日、車で中山競馬場の横を偶然通ったが、兎に角凄い構えである。
   後楽園に出かけた時に、後学のためにと思って隣接している場外馬券売り場に入って様子を見ていたが、これも凄い設備であっちこっちのディスプレーやスクリーンで出走の模様が放映されていて派手な声がスピーカーからがなりたてている。
   ずらりと金属製の格子窓のある馬券売り場が並んでいて、競馬新聞や予想紙を見ながら予想をしながら馬券を買うのであろうか、沢山の人たちがあっちこっちに屯していた。
   私には、違和感があり過ぎて近寄れない空気であった。

   もう15年程も以前になるが、イギリス在住の頃、仕事で関係のあった友人の誘いを受けて2度、アスコット競馬を見る機会があった。
   メインスタンドのあるビルの2階から上の階には、裏側が通路になったセル状の個室が並んでいてそこで宴会しながら談笑し、レースが始まると競技場のある表側のスタンドに出て観戦する。
   馬券売り場は、各階の中央にあり必要な時に買いに行けば良いのだが、その階の客だけなので混む事は殆どなくて快適である。
   一寸した会社や団体になるとこのような個室を確保していて、アスコットの期間に社交場として使っているのである。

   ところで、服装は、男性はグレーの燕尾服とシルクハット、女性は帽子着用の正装と言った出で立ちで、兎に角、ヘップバーンの「マイ・フェア・レイディ」の舞台と同じで大変華やかな社交場と化し、入場時には徹底的に検査されてカメラなど持ち込めない。
   道中は、チャーターしたリムジンで往復したが、兎に角、周辺の交通渋滞は大変なものである。広大な駐車場も上を下への大騒ぎであった。
   以前に、地方への調査のためにロンドンのバターシーのヘリポートから小型ヘリで出かけたことがあるが、丁度、アスコット競馬の当日で、待合室にはシャンパンが用意されていて、アスコット客は飾り付けた馬車に乗るような雰囲気で三々五々ヘリに乗り込んで飛び立って行ったのを思い出す。

   開催少し前になると、上手のゲートが開いて、ゴールの方向に向かってエリザベス女王陛下を先頭に皇室の人びとの馬車の列が入場してくる。
   あの頃は、まだダイアナ妃殿下のにこやかな美しい姿も遠望出来た。
   女王陛下たちがメインスタジアム正面中央のロイヤル席に着かれると愈々開幕オープンである。
   伝統だから尊いのだと言っていた学者の何とかの品格と言う本がベストセラーになっていたが、このようなアスコットのイヴェントを見ているだけでも、さすがに大英帝国で、伝統を頑なに守り伝統が息づいているのが良く分かる。 

   もう一つ忘れられない競馬の思いでは、イタリア中世の街シエナでのパリオである。
   あの世界一美しいと言われているシエナの市庁舎前のカンポ広場で年に2回行われる地区対抗競馬競争で、カラフルな衣装に身を固めた地区代表の騎手が裸馬に乗って狭い広場を馬場にして派手な競争を展開する。
   遅くシエナに着いたので会場に出かけたが既に立錐の余地なく、広場に入る出入り口は殆どブロックされていて建物や観客の隙間から会場がちらちら見える程度で、仕方なくホテルに帰ってTV観戦した。
   臨場感は少ないが、丁度、ディープインパクトの走りを中山競馬場で見るよりもプラズマ大型画面で見るほうが楽しいのと同じで結構楽しめた。
   兎に角狭い馬場で90度近いカーブを裸馬で疾走するのだから危険極まりない。壁面にぶち当たってもんどりうって騎手が吹っ飛ぶ。
   ディープインパクトの時に、興奮して中々ゲートに入れない馬が一頭いたが、この時も、中々、列に並べない馬がいて延々とスタートが遅れたが、この馬がスタートし始めると一斉に馬が走り始めた。
   結果は、この神経質な馬が優勝してしまったが、イタリア語の解説なので少ししか分からなかったが、どうもこれも作戦のようであった。

   翌朝、カンポ広場に出かけたら、砂を敷き詰めた仮説馬場を片付けていたが正に祭の後の静けさ。市庁舎の前から、優勝した地区の代表達が旗手やブラスバンドを先頭に優勝馬を引き連れて派手な凱旋行進をやり始めたのと好対照であった。

   ところで、私自身、馬券を買ったのはあのアスコットの時だけだが、競馬馬の素晴らしい美しさと走りに感激してからは、競馬に対する考え方が変ってしまった。
   素晴らしい競争馬は、正に生きた芸術作品だと思っている。
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