熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ブロードバンドが開く快適な住環境・・・ユビキタスはユートピアか

2006年03月01日 | 政治・経済・社会
   日経主催でNTT東日本が後援するセミナー「ブロードバンドが実現する快適なマンションライフ・住環境」を聴講した。
   ~マンション設計者が体験できる、ブロードバンドを生かした商品設計~と言うサブタイトルが付いていることから分かるように、マンションに光ケーブルを引いてブロードバンド生活を満喫できれば、如何にこれからの人生を豊かにエンジョイできるかと言うことが主題である。
   最近のカレント・トッピックスである”ユビキタス”に装備されたIT生活が、快適な文化文明生活を約束してくれるとする家電メーカーの路線に相通ずる話である。

   基調講演は、建築家光井純氏による「建築とITが融合する集合住宅の企画・デザイン」で、NTT東日本の古賀哲夫副社長の特別講演「NTT東日本の光ブロードバンドへの取り組み」が続き、慶応義塾大学の渡邊朗子助教授のゲスト講演「建築とブロードバンド」の後、渡邊助教授の司会で、三菱地所、NTT東日本、日経アーキテクチュアの担当者がパネルディスカッションを行った。
   このセミナーの後、かなり豪華なレセプションが開かれたので、NTT東日本が大変な入れ込みようであることが分かる。

   確かに、インターネットが開いたパンドラの箱は凄いもので、その上、ブロードバンドの大容量による通信によって速度のみならず、膨大な影像配信が可能になり、通信と放送、エンターテインメントの融合には素晴しいものがある。
   もう何十年も前にアルビン・トフラーが「第三の波」で高らかに歌い上げた自宅がオフイスに変わるなどと言う話は、既にSOHOで実現しているし、自宅にIT機器をそろえてユビキタス化すれば、事務所には勿論、劇場にも、会議場にも、遊技場にも、考え方によったら何にでも変わりうる。
   住宅そのものコンセプトが変わってしまって、寝起きする場所だけではなくなり、全く多機能化し最も複雑な建築物になってしまったと言えるのかも知れない。

   建築家の光井氏は、「家族がわいわい集まれる住空間・共同広場を、食と水周りを中心に組み立てる」ことを提案している。
   ブロードバンドの開く住環境で重要となるのは、娯楽(Entertainment),安全(Security),健康(Health),利便性(Utility)で、ホームサーバーが住空間のこれら4要素の要となる。
徹底したブロードバンド住宅は、ユニバーサルデザインでなければならないが、日本人は、柔軟性に富んだライフスタイルなので、適していると言う。
   昔は茶の間、それがテレビに席巻されたリビングに変わり、今日では、各人が個室にこもりきりの住宅のホテル化が進んでいるが、これが、ブロードバンド時代には、あらゆるメディアや情報、通信、エンターテインメントが、サーバーに取り込まれて、食の楽しみと風呂の快適さを加味した”~しながら~ING”の生活を楽しめるみんなが集う共同空間に変わると言うのである。

   傾向としては良く分かるが、私の場合は、ITやブロードバンドの発展やユビキタス社会の利便性と効率性は認めるが、果たして、その進化が人間にとって良いことなのかどうかと言うことには疑問を持っている。
   例えば、ブロードバンドやITの進化によって、オーディオビジュアルの世界は素晴しく豊かになってきたが、ホームシアターにはあまり興味がない。
   昔は、沢山のレコードを集めて聞いたし、レーザーディスクやDVDで多くのコンサートやオペラ、シェイクスピアを楽しんだが、やはり、本当に楽しむ為には、直接劇場やコンサート会場に行って音楽や舞台を鑑賞すべきだと思っている。
   まして、浴室や寝室で映画やオペラのDVDを見たいとも思わないし、ながらでウィーン・フィルやワーグナーを聞きたいとも思わない。

   街を歩く時も、ナビで確実に目的地に着くよりも、迷って彷徨う方が好きだし、超近代的な街並みよりは、幽霊が出てくるような中世のイタリアの田舎を歩く方が好きである。

   話が飛ぶが、渡邊朗子慶大助教授も、ECO SMART LIFEを提唱し、人間生活を取り囲む三次元空間全体にインテリジェンスを埋め込んで良質な生活空間を創造するとしているが、その延長線上には、やはり、科学と技術の進歩が前提となっている。
   考える会議室構想で、会議室にチップ等IT機器を埋め込んでおいて記録をとり必要な時にデータを引き出せるようにするとか、会議が沈滞するとえも言えない心地よい音楽を流して活気付けをするとか言っていたが、人間の感性を台無しにするだけである様な気がする。
   Smart Apartment Project等で、古いアパートをモダンに改装し五感に優しい快適な住空間を創造する運動を意欲的に進めているが、科学や技術、最新のノウハウを、もっと自然との対話を豊かにする空間に変えるべくやれないか、そう思って聞いていた。
   私自身は、もう、科学の進歩よりは、遅れている文化や芸術などの情的なもののレベルアップの方が大切で、知情意のバランスが取れた発展が必須だと思っている。
   文明生活も程々にしておかないと、人間生活の本当の楽しみや喜びを台無しにしてしまうと思っているが、杞憂であろうか。
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1 コメント

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感性の未来 (サチコ)
2006-04-07 22:04:46
harunakamura様。

私もブロードバンドに興味があって、聞きに行きましたが、ちょっと同じような感想を持ちました。渡邊朗子先生司会の対談では、なんだかとにかく情報を、もっと便利に、というノリでしたが、これって10年前っぽい、と感じたのは私だけかと思っていました。

お風呂場でDVDというのは、やっている人はもうやってますよね。

会議がだるくなってきたら、窓を開けて、外へ出たほうが、早いんじゃないの?という感じでした。
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