熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

IKEA:超巨大小売業の陰の部分?

2007年11月04日 | 経営・ビジネス
   家具を商うだけでは飽き足らず、自ら家具を考案し、メーカーと共創して作り上げ、更に、顧客を生産流通に参加させると言う全く新しい業務形態によって市場に革命を起こして、破竹の勢いで快進撃している巨大小売業者のイケアだが、
   正にこのビジネスモデルは、プラハラードの価値共創経営や、トフラーの生産消費者や、更に、フリードマンのフラット化したグローバリゼーション理論を先取り体現・活用してシュンペーターのイノベーション理論を地で行ったようなケースであろう。
   しかし、この超優良会社にも、正に、近代企業ゆえの隠れた陰と言うべき部分があって面白い。
   それは、創業者であり今も厳然たる会社の代表者であるイングヴァル・カンプラードのけち哲学と節税に纏わる不思議な物語である。
   R・ユングブルートの著者によるコメントなので、全体像は掴み難いが、非常に興味深い話である。

   まず、カンプラード本人だが、質素倹約と単純明快が美徳と考えているが、そのケチと言っても桁はずれのケチで、重税を避けてスイスの田舎町に住んでいるが、外食などはせず、週に何度か市が立つと必ず閉店間際に駆け込んで値下がりした生鮮食品を買い込んで行く。
   ハイソサイェティの集まりには参加しないし、止むを得ない会合にも、飛行機はインターネットで最も安いエコノミー切符を買って行き、よれよれのシミのついたバーゲンと思しき服を着て、かかとの磨り減った靴を履き、シニア割引切符を買って地下鉄に乗って会場に出かけ行く。
   自分の会社イケアでティーライトを買う時でも社員割引を使う。
   こんなカンプラードだから、税金を払いたくなくて移り住んでいるジュネーブ湖畔のエパランジュ村においても、一切、寄付も慈善事業にも金を出さないので村長はケチ親父と匙を投げて付き合いもしない。
   世界第6位、ヨーロッパ一の大金持ちでありながら、キリスト教徒の慈善事業にもノブレスオブリージェにも全く無縁の、君子の風上にも置けないような天然記念物のような人物だと言うのである。

   常軌を逸した矛盾だらけの支離滅裂な人間、太っ腹で同時にケチ、企業家として桁外れの野心を持ちながら私生活では極めて質素、息子達がイケアで働くのが嬉しいくせに資産を分け与えない。
   福祉と平等を理想に掲げる企業家であり小市民への思いやりのある共同体意識の強い人間でありながら、福祉・重税のスウェーデンを逃れて外国の租税回避の誘惑に負けて祖国を去る人物。
   ユングブルートはこんなカンプラードを執拗に追いながら、節税の闇に見え隠れするイケア王国に疑問を呈している。

   強大なイケアの全事業・イケア・コンツェルンを統括するのがインカ・ホールディングであるが、カンプラードは、子供の手にも誰の手にも渡らないように、この会社をオランダの財団法人スティヒティング・インカ・ファウンデーションに移管してしまった。
   しかし、オランダのデルフトに、これらとは別に、別会社インター・イケア・システムズと言う別会社を作って、この会社にイケアの経営のコンセプトをライセンス化して持たせて、実際には、全世界のイケア企業からライセンス料としてロイヤリティ3%(会社によって差)を取り利益収入を吸い上げてコントロールさせている。更に、この会社を、実質的に、特別税の安いベルギーのワーテルローに置いて、節税して微々たる税金しか払わないようにしている。
   慈善事業向けの小さな財団を作ってカモフラージュする一方、別な持株会社をルクセンブルグに作って、資金運用を図っているとも言われている。
   誰がこれらの事業の実際の所有者なのか、利益や資金の流れがどうなっているのかなど、株式市場に上場された公開会社ではないので、全く外部には分からず薮の中だと言う。

   何故、これほどまでに節税と蓄財の為に法の目を掻い潜って複雑にしなければならないのか。
   カンプラードは、自分が死んだ後も、イケアが巨大な投資家たちに乗っ取られてばらばらにされたり、相続人に分割されたりするのを防ぎたいと思っているのだと言うのだが、組織はいくら完璧な組織でも、本人が死んでしまえば形は変わってしまう筈であろう。
   
   世界中から木材を調達しており、世界の国々で家具等を製造しているので、これまでグローバリゼーションの問題に頭を打ちながら、環境問題や労働問題などには対処してきたので、深刻な国際問題はないようだが、
   しかし、節税のために法の網を掻い潜って行くなど不明朗なグローバル経営が何時までも許されるのかどうか、透明性と説明責任を求められている国際社会の風潮の中でどう生きて行くのか、常勝のイケアの前途にも問題はあろう。
   カリスマ経営者カンプラードが逝った後のイケアがどのようなグローバル企業としての道を歩むのか、特異なビジネスモデルの大企業だけに興味深い問題である。

(追記)最近、極めて悪質なピンク広告が、コメントやトラックバックで連続して入りますので、頂きましたコメントやトラックバックは保留扱いとし、後ほどチェックして、問題のないものだけを載せさせて頂くことといたしました。   

   

   
   
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