熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

米中関係のっぴきならぬ緊迫状態・・・日高義樹講演

2006年06月17日 | 政治・経済・社会
   現在、中国に対する軍事力強化の為に、グアムで冷戦終了以降最大の米軍演習が行われており、その取材の合間をぬって帰って来たのだと言って、日高義樹氏が時事通信ホールで「米中対決始まる・・・これからのアメリカ経済の見通し」と言う演題で、非常に面白い講演を行った。

   結論は、米中関係は極めてのっぴきならぬ状態に入っていると言うことと、アメリカの好況は今後も持続すると言うことであった。

   四月の中国胡錦濤主席をサンドイッチ一個で遇しながら、退任して消えて行く小泉首相を国賓として迎え入れホワイト・ハウスのイースト・ルームで大晩餐会を催すのは、偏に、次の首相が対中強硬政策を継続してくれることを願うからだと言う。
   したがって、今度の日本の首相は、クリントン政権のような中国融和政策など打つような人では断じて困ると言うメッセージなのである。

   アメリカの対中国への世界戦略は、孤立させて大きくさせない、好き勝手なまねは絶対にさせない、と言うことだと言う。
   日高説だと、中国を悪い奴だと弾じるのは、①フェアーではない。②オープンではない。③世界のことを考えずに自己のことしか考えない、からである。
   中国包囲網の要は、インドとロシアとの米中関係で、中国と対立関係にあるインドに原子力発電等のハイテク技術を供与するのも、対中国との紛争を予期して軍事強化を図り始めたプーチン政権への強力な肩入れもその現われである。
   多少、ユーロ建て取引や中国への接近で、アメリカに嫌がらせを始めたサウジ・アラビアとの関係強化も重要だと言う。

   胡主席は、訪米時に、台湾占領の為に軍事強化しているのだと釈明したようだが、その後、アメリカは、台湾に最新鋭の戦闘機500機を含めて膨大な武器を提供するなど対等の防衛策を構築したと言う。
   日高氏の話では、胡主席が滞米中の最中に、ブッシュ大統領は、グアムの太平洋艦隊最高司令官に、中国攻撃の机上ゲームのシュミレーションを命じたと言うし、最近、冷戦後皆無であった核シェルターへの避難訓練をワシントン政府高官に命じて実施したらしい。正に、臨戦態勢である。
   胡主席が、今や中国は世界の経済大国である、アメリカと肩を並べて世界を動かしたいと思う、と言ったのが余程ブッシュの頭にきたのであろうか。

   靖国神社参拝問題について、日高氏は、アメリカの受け止め方について面白い話をした。
   その一つは、ブッシュが、中国が嫌がっているのなら、経済問題で妥協を引き出すためにも嫌がることをやれば良い、と言ったとか。
   もう一つは、胡主席が訪米時に、日本は何でもアメリカの言うことを聞くので、靖国参拝を止めてくれるよう言って欲しいと副大統領に言ったらしいが、悪い奴が止めてくれと言うのだからやれば良い、と言ったとか。

   アメリカの好景気が持続し経済には全く問題がないと言う理由は、
①科学技術立国を目指して、強力にイノベーション(この言葉を日高氏は使わなかった)を推進して経済を活性化する。
②政治力・軍事力によって勢力圏を拡大して、同時にドルを刷りまくって世界を大きくして市場を拡大する。
   日本のデフレが収束したのも、このアメリカの市場拡大の努力のお陰で、品質の高い日本の製品が売れない訳がないからだと言う。

   特に日高氏が強調したのは、通信放送法の改正によるコンバージョン技術の開発・革新で、デジタルからコンバージョンへの移行が、IT革命と呼応して、情報通信のみならず経済社会全体に大変な革新を齎らすと言う。例えば、TV局が消えてしまうと言うのである。
   ビル・ゲイツの退任は、IT技術の一時代が終わったことを見越しての行動だと言う。

   日高氏が面白いことを言ったのは、ドルがコモディティ化してしまって、この価格を決めるのは市場ではなく情報を持った人間だと言うことである。
  ブッシュ政権の、科学技術で経済成長を持続させてドルを刷り続けると言う拡大一方の経済政策は、当分、継続するので強気で臨んで良く、市場は買いである。
   石油、ドル、土地は、どんどん上がる、と言うご宣託だが、信じて良いのかどうか。
   大体、そんな政策と理論だけで経済成長が持続するのなら世話はないのだが、やはり、一番イノベイティブで科学技術の最先端を行き、経済には攻撃的で活力のあるのはアメリカ経済社会であることには異存はないので、そう願いたいが、何時まで持つのであろうか。
   ブッシュ政権の経済政策は、富裕層志向なので民主派からの反発はきつく、ジャーナリズムもハーバードも、知識層も反対しているが、何らかの貧困層等福祉厚生政策は必要なものの、ここ当分は問題にはならないと日高氏は言うが、これもアメリカ経済社会にとっては避けて通れない極めて重要な問題であるので暢気な事は言っておれない。

   日高氏の予言では、次の大統領選挙では、ヒラリー・クリントンは、200票位は取れるが、当選の277票は取れないので、ブッシュ色の強い後継大統領が生まれると言う。

   ジョセフ・ナイ教授のリベラルな中国融和政策とは違ったブッシュ政権の中国政策を聞いた感じだが、ハドソン研究所の中枢にいる日高氏の最新情報だから、ある意味ではアメリカの対外政策の真実を伝えているのであろうと思って聞いていた。
   とにかく、タカ派のブッシュ政権べったりだが、いつ聞いても日高氏の講演はパンチが聞いていて面白い。

   

   

   
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「第三の波」で貧困から脱却... | トップ | ブックオフで本を売った »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治・経済・社会」カテゴリの最新記事