熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

会社は誰のために・・・御手洗・丹羽対話(1)

2006年08月27日 | 経営・ビジネス
   今、御手洗冨士夫経団連会長と丹羽宇一郎伊藤忠会長の意見交換対談集「会社は誰のために」が話題になっている。
   文藝春秋社の努力で対談が実現したようであるが、日頃から日本の経営や政治経済等カレント・トピックスについて真摯でストレートな持論を展開されているオピニオン・リーダーであり論客のお二人の対話であるから、実に中身の濃い示唆に富んだ素晴らしい本となっている。
   私自身、お二人の著書を読んだり何度か講演を聴講しているので、改めて総合しながら問題意識を整理するつもりで読ませてもらった。

   第一章から第四章までは、「改革力を身につける」「組織はどうあるべきか」「要は「人づくり」にある」「トップのあるべき姿とは」の4つのセクションに分かれて会社の話で、まず、御手洗会長から問題提起があってそれに丹羽会長がレスポンスしながら話を展開してゆく形になっている。
   最後の第五章「日本の行く末を考える」は、タイトル倒れで消化不良であり、新しい本を期待したい。
   日頃のお二人の著書や発言を総合すれば、ほぼ話の根幹は予想されるが、お互いに啓発されながら新しく展開されている考え方が飛び出しているなど実に興味深い。
   
   この本の冒頭「はじめに」の部分で、普通は一方のどちらかが書く場合が多いのだが、この本は連名で書かれており、非常に興味深い文章が書かれていて、まず、これから示唆に富んでいる。

   本書で第一に言いたいことは、「サラリーマンよ、元気を出せ」と言うことだと言って、人間の能力にはそれ程差がないのだが、社会に出て差がついたり偉くなったりならなかったりするのは、最後まで努力を重ねられるかどうか、努力を継続していく情熱と執着心を持ち続けられるかどうか、にあると言う。
   サッカーのワールドカップ戦を見ていて、勝敗を決するのは、一定の技術があれば、飽くなき努力と執着心である、とつくづく感じたと言うのである。
   「最後までボールに食らいついてゆく執着心がなければ、得点につながる渾身の一蹴りは生まれません。たとえ相手に点をとられても「Never give up」の激しい闘争心がなければ、逆転のチャンスをモノにすることは出来ないのです。」 
   この思いは、日本のファンすべての思いだったと思う。
   そして、現在の敵前逃亡に近い阪神の戦いを見ているファンの気持ちも、全く同じだろうと思う。

   日本は今、将来のあるべき姿、目標を失っている。
   中国もアメリカも、明確な国家目標を掲げて国民の奮起を促し、かってないほど教育の充実と人材育成に力を注ぐ政策が採られている。
   これからの時代は、人材こそが国際競争力と経済力のエンジンとなる。
   ところが、日本では、国の資産が「人と技術」しかないのに、科学・工学技術者の育成や、技術開発の基盤となる中小企業育成に対して十分な策が採られていない。と言って日本の国際競争力の将来について疑問を呈する。

   かえす刀で、国家のみならず、サラリーマン一人一人の危機感や競争意識のなさを嘆きながら、自己の成長と企業や社会への貢献に努力を惜しまず、勝利に向かっての飽くなき情熱と執着心を持って、世界のビジネスマンに伍して競争せよと激しい檄を飛ばしている。

   ピーター・ドラッカーが著書で、日本が一番グローバリゼーションが遅れていると書いていたが、日本人の国際感覚は、相当、国際水準から乖離していると日頃から思っているので、これは至言である。
   御手洗会長も丹羽会長もアメリカでの在住経験が10年以上で、この本で展開されている経営論もその影響が色濃く出ていて興味深いが、今を時めく日本の優良企業のトップ経営者に欧米でのビジネス経験豊かで国際感覚の持ち主が多いのも偶然ではないと思っている。
   
   中国等アジア関係での国際事業は非常に活発になってきているが、長期不況のあおりを受けて、欧米、特に、ヨーロッパからの事業の撤退が続き、企業派遣の海外留学者が異常に減っているが、今や、第二の明治維新で、こんな時こそ、優秀な人材の欧米派遣が有効である。
   中国はじめ優秀なアジアの国々のみならず、世界の逸材が集合して鎬を削っている欧米のトップ大学や研究機関等に、日本人の優秀な人材を派遣して次代を担う世界のリーダー達と互角にわたり合える人材を一人でも多く作り出すことである。
     
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