
企業価値を高めるのは、株主重視の「アメリカ型経営」でも、ステイクホールダー重視の「日本型経営」でもなく、第3の日本型経営モデル「コーポレート・ブランド経営」である。
その為には、分権化、縦割り、部分最適を旨とし制度疲労した古い経営体質から脱皮することで、思考戦略の実践によって、見える化、危機意識の醸成、関心範囲の拡大、学習する官僚制度を駆使して、「全体最適経営」を目指すことによって、強固なコーポレートブランドを構築することが大切である。
要するに、トヨタのような会社を目指して経営を行うべし、と言うのが、一橋大学伊藤邦雄教授のHP WORLD Tokyo 2007の基調講演「新しい価値創造競争の時代へ~これからの企業の競争力~」の要旨であった。
全体最適経営への転換は、御手洗会長がキヤノンの経営を引き継いだ時の最大の課題でもあり、今回の起死回生とも言うべき松下電器の中村改革の実績から見ても、非常に時宜を得た日本企業の再生戦略であった。
松下の場合を考えてみれば、見える化で問題を顕在化させて透明性を醸成し、全社員に危機意識を植え付けてコーポレートカルチュア化し、従業員の関心を広げて経営への参画意識を持たせ、持続的に革新的な思考を生み出せるようにあらゆるところから学習すべく方向付けるなど、伊藤教授の理論展開を正に地で行ったと言うことが出来よう。
勿論、高度な確固とした思考戦略を策定・実践し、IT技術も縦横に駆使した。
電工等の独立関係会社をも子会社化してブランドを統一しマーケティングシステムを統合し、電気ストーブで不祥事が発生すると徹底的に対策を講じてコーポレート・レピュテーションを死守し続けている。
もっとも、この全体最適については、分権化が行きすぎた結果不都合を来たしたのであって、組織や企業の経営について分権が効果的なのか全体指向が良いのかと言った問題は永遠のテーマであって、あくまで現時点ではとしか言えない。
このまま、企業組織が巨大化して行けば全体最適などと言って居れない事は自明であるし、世界経済のグローカリゼーションや道州制等の動向などがこのことを如実に物語っている。
経営学には決定版などある筈がなく、政治経済社会情勢や時代の流れによって変化する、賞味期限の極めて短い生鮮食料品のようなものなのである。
ところで、伊藤教授のコーポレートブランドと言う考え方だが、経営学先進国アメリカでは、以前から、コーポレート・レピュテーション・マネジメントと言う形で定着していて、私自身にはこの方が包括的で分かりやすい。
もっとも、チャールズ・J・フォンブランのコーポレート・レピュテーション論を勉強しただけで、伊藤教授の著作を読んでいないのでなんとも言えないが、フォンブランは、既に、1996年にこの概念を確立して、レピュテーション指数(Reputation Quotient=RQ)として、ウォール・ストリート・ジャーナルに発表している。(これは、伊藤教授が作成して日経に発表している「コーポレートブランド価値 ランキング」と似ているのであろう。)
伊藤版は、CB,顧客、従業員、株主の4項目でのスコアを集計してCB価値を算出しているのだが、2004年版以降トヨタがダントツである。
伊藤教授は、企業価値を生み出す主要プレイヤーは、顧客、従業員、株主だと考えているので、このようなスコア付けなのだろう。
しかし、フォンブランの場合のRQは、情調的アピール、製品とサービス、財政パフォーマンス、ビジョンとリーダーシップ、職場環境、社会的責任の6つの領域と20の属性を、1~7の7段階で評価しており、企業のレピュテーションに関する幅広い分析が試みられている。膨大な人数の調査を経てである。
その上、RQ指数の高い会社と、レピュテーションのルーツである企業の顕示性、独自性、真実性、透明性、一貫性、の相関の高さも検証している。
元々、ブランドと言うのは個々の商品に冠せられた属性で、会社と言う組織体に冠せられたコーポレートブランドと言う概念が、一体何を表すのか極めて不明確であり、レピュテーションと言う捉え方の方が遥かに明確なことは明白である。
因みに、2001年版のレピュテーションRQでは、ソニーが第5位、トヨタは第18位であった。
問題は、この「レピュテーション指標」や 「コーポレートブランド価値 ランキング」が、権威を持ち始めて独り立ちして来ると、点数や順位だけが踊り出して、企業の経営目的なり戦略戦術をスキューするかも知れないことである。
早い話が、伊藤版での顧客、従業員、株主分類のスコア付けが適切なのかどうか、それが、フォンブラン流の欧米の指標とどうのような繋がりを持つのか。
コーポレート・レピュテーションなりコーポレートブランドを高めて企業の市場価値を上げることが経営の目的となると、必然的に、評価項目が経営上重視すべき指標のように誤解されて、そのアップが企業の経営戦略目標となってくる。
私自身は、混乱を避けるためにも、遅れて立ち上げたのだし、概念的にも狭くて不十分だし、この際、第3の日本型経営モデルと言っておらずに、フォンブラン流のデファクト・スタンダード「レピュテーション指数」に準拠して、日本企業の指数を出してランキング表示すればどうかと思っている。
このブログで以前に書いたが、何処かの会計事務所に頼んで日本企業のCSR指数を作成して日経が発表しており、その一種独善的な評価項目に疑問を呈したことがある。
もっとも、欧米の指標が総て優れているとは思わないけれど、結構このあたりの分析手法なり概念作りは日本人より遥かに優れていて十分批判に耐えられるのであり、今回も、これと似た感じを持ってしまった
その為には、分権化、縦割り、部分最適を旨とし制度疲労した古い経営体質から脱皮することで、思考戦略の実践によって、見える化、危機意識の醸成、関心範囲の拡大、学習する官僚制度を駆使して、「全体最適経営」を目指すことによって、強固なコーポレートブランドを構築することが大切である。
要するに、トヨタのような会社を目指して経営を行うべし、と言うのが、一橋大学伊藤邦雄教授のHP WORLD Tokyo 2007の基調講演「新しい価値創造競争の時代へ~これからの企業の競争力~」の要旨であった。
全体最適経営への転換は、御手洗会長がキヤノンの経営を引き継いだ時の最大の課題でもあり、今回の起死回生とも言うべき松下電器の中村改革の実績から見ても、非常に時宜を得た日本企業の再生戦略であった。
松下の場合を考えてみれば、見える化で問題を顕在化させて透明性を醸成し、全社員に危機意識を植え付けてコーポレートカルチュア化し、従業員の関心を広げて経営への参画意識を持たせ、持続的に革新的な思考を生み出せるようにあらゆるところから学習すべく方向付けるなど、伊藤教授の理論展開を正に地で行ったと言うことが出来よう。
勿論、高度な確固とした思考戦略を策定・実践し、IT技術も縦横に駆使した。
電工等の独立関係会社をも子会社化してブランドを統一しマーケティングシステムを統合し、電気ストーブで不祥事が発生すると徹底的に対策を講じてコーポレート・レピュテーションを死守し続けている。
もっとも、この全体最適については、分権化が行きすぎた結果不都合を来たしたのであって、組織や企業の経営について分権が効果的なのか全体指向が良いのかと言った問題は永遠のテーマであって、あくまで現時点ではとしか言えない。
このまま、企業組織が巨大化して行けば全体最適などと言って居れない事は自明であるし、世界経済のグローカリゼーションや道州制等の動向などがこのことを如実に物語っている。
経営学には決定版などある筈がなく、政治経済社会情勢や時代の流れによって変化する、賞味期限の極めて短い生鮮食料品のようなものなのである。
ところで、伊藤教授のコーポレートブランドと言う考え方だが、経営学先進国アメリカでは、以前から、コーポレート・レピュテーション・マネジメントと言う形で定着していて、私自身にはこの方が包括的で分かりやすい。
もっとも、チャールズ・J・フォンブランのコーポレート・レピュテーション論を勉強しただけで、伊藤教授の著作を読んでいないのでなんとも言えないが、フォンブランは、既に、1996年にこの概念を確立して、レピュテーション指数(Reputation Quotient=RQ)として、ウォール・ストリート・ジャーナルに発表している。(これは、伊藤教授が作成して日経に発表している「コーポレートブランド価値 ランキング」と似ているのであろう。)
伊藤版は、CB,顧客、従業員、株主の4項目でのスコアを集計してCB価値を算出しているのだが、2004年版以降トヨタがダントツである。
伊藤教授は、企業価値を生み出す主要プレイヤーは、顧客、従業員、株主だと考えているので、このようなスコア付けなのだろう。
しかし、フォンブランの場合のRQは、情調的アピール、製品とサービス、財政パフォーマンス、ビジョンとリーダーシップ、職場環境、社会的責任の6つの領域と20の属性を、1~7の7段階で評価しており、企業のレピュテーションに関する幅広い分析が試みられている。膨大な人数の調査を経てである。
その上、RQ指数の高い会社と、レピュテーションのルーツである企業の顕示性、独自性、真実性、透明性、一貫性、の相関の高さも検証している。
元々、ブランドと言うのは個々の商品に冠せられた属性で、会社と言う組織体に冠せられたコーポレートブランドと言う概念が、一体何を表すのか極めて不明確であり、レピュテーションと言う捉え方の方が遥かに明確なことは明白である。
因みに、2001年版のレピュテーションRQでは、ソニーが第5位、トヨタは第18位であった。
問題は、この「レピュテーション指標」や 「コーポレートブランド価値 ランキング」が、権威を持ち始めて独り立ちして来ると、点数や順位だけが踊り出して、企業の経営目的なり戦略戦術をスキューするかも知れないことである。
早い話が、伊藤版での顧客、従業員、株主分類のスコア付けが適切なのかどうか、それが、フォンブラン流の欧米の指標とどうのような繋がりを持つのか。
コーポレート・レピュテーションなりコーポレートブランドを高めて企業の市場価値を上げることが経営の目的となると、必然的に、評価項目が経営上重視すべき指標のように誤解されて、そのアップが企業の経営戦略目標となってくる。
私自身は、混乱を避けるためにも、遅れて立ち上げたのだし、概念的にも狭くて不十分だし、この際、第3の日本型経営モデルと言っておらずに、フォンブラン流のデファクト・スタンダード「レピュテーション指数」に準拠して、日本企業の指数を出してランキング表示すればどうかと思っている。
このブログで以前に書いたが、何処かの会計事務所に頼んで日本企業のCSR指数を作成して日経が発表しており、その一種独善的な評価項目に疑問を呈したことがある。
もっとも、欧米の指標が総て優れているとは思わないけれど、結構このあたりの分析手法なり概念作りは日本人より遥かに優れていて十分批判に耐えられるのであり、今回も、これと似た感じを持ってしまった