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ある記事で、ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がトランプ氏の親友の証言を引用して次のように記していたが、まさに、ボルトン回顧録は、これを地で行くトランプの軌跡を語っていて面白い。
”「トランプ氏には、これといった世界観もなければ、価値判断する独自の尺度というものもない。大統領選挙に挑むというが、政治哲学や社会倫理について話すのを聞いたこともない。おそらくそんなものは持っていないよ。彼は、ビジネスで身につけたトランザクション(取引、処理、業務遂行)中心の男だ。ビジネスマンであり、それ以外の者ではない。彼と理想論や観念論で話してはダメなんだ」
A氏の見立ての通りならば、トランプ氏の4年間は、自分の価値観や世界観に基づく国づくりなどではなく、迫りくる課題や問題はすべて競争相手からの挑戦であり、ただ勝って勝って勝ちまくらなければならない、という戦いの日々だったことだろう。それがアメリカのビジネスマンの考え方である。”
先に、原書のThe Room Where It Happened: A White House Memoir を買っていたので、並行読みしたのだが、英語版には、索引があるので、記述なり内容の追跡が出来るので助かった。
余談ながら、日本では、相当重要で高級な専門書でも、コスト削減という低次元の価値判断で、索引を省略しているが、如何に書籍の価値を貶めて知的水準の向上に害を及ぼしてきたか計り知れないと思っている。索引の欠如した専門書など、存在価値の多くを既存していると言っても過言ではない。
さて、まず、この本についてのニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストのレビューを引用すると次の通り。
NYTは、主要な外交業務に参画した、保守筋金入りの高級官僚による第一級の備忘録というのはともかく、世界のことについて基本的なことさえ知らない大統領で、彼を上手く操る独裁的なリーダーの見え透いたおべっかに影響されやすく、虚偽情報に踊らされて、淫らな言葉を使って爆発し、側近たちが提言したり反対したりしたことをプッツンして決断する、そんな大統領の嫌になるような行状の生き生きとした描写、
WPは、大統領とトップ・アドヴァイザーや外国リーダーとの不調和でトラブルまみれの延々と続くやりとりの展開、
“Mr. Bolton’s volume is the first tell-all memoir by such a high-ranking official who participated in major foreign policy events and has a lifetime of conservative credentials. It is a withering portrait of a president ignorant of even basic facts about the world, susceptible to transparent flattery by authoritarian leaders manipulating him and prone to false statements, foul-mouthed eruptions and snap decisions that aides try to manage or reverse.” – The New York Times
“The most substantive, critical dissection of the president from an administration insider… lays out a long series of jarring and troubling encounters between the president, his top advisers and foreign leaders.” – Washington Post
エコノミストは、救いようのない事実の詳細に満ちた本、“A book full of damning details” – The Economist
とにかく、ブックレビューは、damning (罪を免れない、破滅的な)、Jarring( 耳障りな、神経に障る、食い違う、不調和な)、と言った単語で満ちていて、ボルトンの本の価値を認めながらも、トランプへの想像を絶するような行状に対する落胆や諦めに言及している。
ボルトンの話を真実半分としても、酷い状態だが、それでも、熱狂的なトランプ支持者が、現在でも5000万人存在するというアメリカの不思議、
アメリカ民主主義の懐が深いと言うべきなのか、理解に苦しむ。
とにかく、アメリカ大統領は、核のフットボール(Nuclear football)、すなわち、核のボタンを常に持っている。
私は、ずっとこのことを気にかけ続けている。
それはそれとして、疾風のように駆け抜けたトランプの四年間だったが、功罪取り混ぜて、トランプなりに、トランプでなければ出来なかった事象もあったであろうし、歴史上善し悪しはあろうがエポックメイキングな足跡も残してきたことには間違いなかろう。
私自身は、リベラルな民主党よりの考えなので、トランプは勿論、超保守的でネオコンのボルトンの思考には相容れないのだが、当時の貴重な外交史として読んだので、その感想については、次回に譲りたい。
”「トランプ氏には、これといった世界観もなければ、価値判断する独自の尺度というものもない。大統領選挙に挑むというが、政治哲学や社会倫理について話すのを聞いたこともない。おそらくそんなものは持っていないよ。彼は、ビジネスで身につけたトランザクション(取引、処理、業務遂行)中心の男だ。ビジネスマンであり、それ以外の者ではない。彼と理想論や観念論で話してはダメなんだ」
A氏の見立ての通りならば、トランプ氏の4年間は、自分の価値観や世界観に基づく国づくりなどではなく、迫りくる課題や問題はすべて競争相手からの挑戦であり、ただ勝って勝って勝ちまくらなければならない、という戦いの日々だったことだろう。それがアメリカのビジネスマンの考え方である。”
先に、原書のThe Room Where It Happened: A White House Memoir を買っていたので、並行読みしたのだが、英語版には、索引があるので、記述なり内容の追跡が出来るので助かった。
余談ながら、日本では、相当重要で高級な専門書でも、コスト削減という低次元の価値判断で、索引を省略しているが、如何に書籍の価値を貶めて知的水準の向上に害を及ぼしてきたか計り知れないと思っている。索引の欠如した専門書など、存在価値の多くを既存していると言っても過言ではない。
さて、まず、この本についてのニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストのレビューを引用すると次の通り。
NYTは、主要な外交業務に参画した、保守筋金入りの高級官僚による第一級の備忘録というのはともかく、世界のことについて基本的なことさえ知らない大統領で、彼を上手く操る独裁的なリーダーの見え透いたおべっかに影響されやすく、虚偽情報に踊らされて、淫らな言葉を使って爆発し、側近たちが提言したり反対したりしたことをプッツンして決断する、そんな大統領の嫌になるような行状の生き生きとした描写、
WPは、大統領とトップ・アドヴァイザーや外国リーダーとの不調和でトラブルまみれの延々と続くやりとりの展開、
“Mr. Bolton’s volume is the first tell-all memoir by such a high-ranking official who participated in major foreign policy events and has a lifetime of conservative credentials. It is a withering portrait of a president ignorant of even basic facts about the world, susceptible to transparent flattery by authoritarian leaders manipulating him and prone to false statements, foul-mouthed eruptions and snap decisions that aides try to manage or reverse.” – The New York Times
“The most substantive, critical dissection of the president from an administration insider… lays out a long series of jarring and troubling encounters between the president, his top advisers and foreign leaders.” – Washington Post
エコノミストは、救いようのない事実の詳細に満ちた本、“A book full of damning details” – The Economist
とにかく、ブックレビューは、damning (罪を免れない、破滅的な)、Jarring( 耳障りな、神経に障る、食い違う、不調和な)、と言った単語で満ちていて、ボルトンの本の価値を認めながらも、トランプへの想像を絶するような行状に対する落胆や諦めに言及している。
ボルトンの話を真実半分としても、酷い状態だが、それでも、熱狂的なトランプ支持者が、現在でも5000万人存在するというアメリカの不思議、
アメリカ民主主義の懐が深いと言うべきなのか、理解に苦しむ。
とにかく、アメリカ大統領は、核のフットボール(Nuclear football)、すなわち、核のボタンを常に持っている。
私は、ずっとこのことを気にかけ続けている。
それはそれとして、疾風のように駆け抜けたトランプの四年間だったが、功罪取り混ぜて、トランプなりに、トランプでなければ出来なかった事象もあったであろうし、歴史上善し悪しはあろうがエポックメイキングな足跡も残してきたことには間違いなかろう。
私自身は、リベラルな民主党よりの考えなので、トランプは勿論、超保守的でネオコンのボルトンの思考には相容れないのだが、当時の貴重な外交史として読んだので、その感想については、次回に譲りたい。