熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

歌舞伎座の改築、ロンドンの劇場

2006年06月06日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   今日、歌舞伎座に行く途中、メトロで朝日新聞を読んでいると、丸谷才一のコラム「袖のボタン」で「新しい歌舞伎座のために」と言う題で、歌舞伎座の改築について希望を書いていた。
   設備に対する要望が殆どで、地階メトロ駅からの出入りの新設、エレベーターとエスカレーターの設置、階段の傾斜を緩やかに、ロビーを広く、女性便所の増設、ロッカーの増設、楽屋の整備、音響効果の維持などであった。
   みんな賛成だが、とりわけ、ファンの大半を占め、かつ、着物姿で観劇する人が雰囲気を盛り揚げているのに、女性軽視は甚だしく、この点の改善は最優先すべきである。ブザーが鳴っているのに女性トイレ前の行列は消えないのが現状であるから尚更であろう。

   劇場の格は、玄関口のロビーで決まると言う人が居るが、歌舞伎座の場合は、古いわりにはそれほど貧弱だとは思わないが、新橋演舞場も、国立劇場の豊かさと比べれば格段に落ちる。
   劇場の中に、夜店や仲見世のような感じの店が多く、それに、小さな食堂が沢山あるのは日本の劇場の特徴であろうが、ごちゃごちゃしていてもそれなりに面白くて貴重な存在である。

   私の歌舞伎座への希望は、客席の整備で、床にもっと傾斜をつけて前を見易くすること、座席の幅をもう少し大きくすることと席の前後の空間をもっと取って出入りしやすくすること、いすのクッションを良くすること等である。
   3階席は、右側の側面席を除いて、歌舞伎では極めて重要な花道が全く見えないので客席の役目を果たしていないが、一部のリストリクテッド・ビューの席以外は、必ず花道を見えるようにすることである。
   他の歌舞伎劇場は知らないが、極めて多くの観客から大切な花道の舞台を遮断したこれ程劣悪な劇場は、世界広しと言えどもない筈である。
   新橋演舞場の左側2階と3階席前方にモニターTVを置いて花道を映している。国立劇場の文楽公演にも利用されるほど最近字幕スクリーンを置く劇場が多くなってきたが、同じような感覚で、今でも、歌舞伎座でやろうと思えばどこかにモニタースクリーンを設置して、3階客に花道の演技を見せることができると思うのだが、松竹のCS軽視と怠慢であろう。
   今月の「身替座禅」の山蔭右京の菊五郎の花子との密会の朝帰りのしどけない夢心地の狂態など、花道での演技が見られなければその至芸を味わえない。

   ロビーを、格調高くすること、そして、大人の楽しめるドリンク・コーナーを設置すること、etc.
   それに、連日、外人観光客の観劇が多いし、和服を着た素晴らしい金髪美人をロビーで見かける昨今である、日本の古典芸術最右翼の劇場であることを示す、日本文化の発信基地でもあってほしいと思っている。

   ところで、外国の劇場だが、私が実際に戯曲なり劇の舞台を見たのは、ニューヨーク、ロンドン、リスボン、パリ等限られているので、ほとんど印象は語れない。
   しかし、ロンドンなどのシェイクスピア関連の劇場についは少しは語れる。
   一番古くて新しい劇場は、ロンドンのグローブ座で、これは、劇場部分は、殆ど”恋に落ちたシェイクスピア”に出てくる劇場とそっくりである。
   青天井の平土間は、総て立見席で、かぶりつきなどは、客が舞台に肘をついてみているし、役者が平土間から登場したり演技をすると両者一体となり、客が劇の仲間入りをする。
   雨が降ると客はビニールのレインコートを買って身につけ、日が照るとソル側の客に日よけ帽が配布される。
   2階以上の上階のサークル席は、木製のベンチでクッションが貸し出される。
   とにかく、雰囲気があってシックで良い。
   しかし、隣に近代的な建物が繋がっていて、玄関ロビーやチケットセンターや、レストラン、ショップ、そして、立派なシェイクスピア関連の資料や衣装などを展示した博物館が併設されている。

   私は、新しい歌舞伎座も、金丸座のような古い歌舞伎小屋の雰囲気を出来るだけ残しながら、近代技術の粋を集めた劇場にするのが良いと思っている。

   ロンドンのオールド・ヴィック劇場など古い劇場は、こじんまりした玄関ロビーがあって、すぐに、1階や2階の客席に繋がっていて十分なキャパシティはないが、新しいロイヤル・ナショナル劇場などは、日本にもある近代的な劇場と変わらない。
   以前に、RSCがロンドンのホームとして使っていたバービカン劇場は、客席一列毎に左右に一つづつ扉があって席へのアプローチがし易くて面白かった。公共部分は、隣のロンドン交響楽団の本拠地バービカンホールと共用だったので随分余裕があった。

   とにかく、ロンドンもニューヨークも、ミュージカル劇場を含めて、劇場は千差万別で大体は質素であるが、オペラ座の怪人をロングランしているマジェスティック・シアターなどは、狭いが、それなりに豪華で格調がある。
   
   (追って)口絵写真は、新装成ったミラノ・スカラ座の客席ホールである。
   私の知っているオペラハウス、ロイヤル・オペラ・ハウスやMET等の劇場について書こうと思ったが長くなるので割愛した。
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