熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

人間尊重が21世紀の経営の要諦・・・アベグレン&岩井克人

2006年03月13日 | 経営・ビジネス
   経団連会館国際会議場で「新生日本の設計 市場原理を越えて」と言う読売国際会議2006 開幕フォーラムが開かれた。
   私は、ジェイムス・C・アベグレンと岩井克人東大教授が出席して日本の経営や会社について論陣を張ると思ったので応募して聴講した。
   司会は、福川伸次元通産事務次官で、他にパネリストとして、加藤丈夫企業年金連合会理事長とチャールズ・D・レイク在日米国商工会議所会頭が参加していて、非常に密度の濃い議論が展開された。
   私は、歌舞伎の夜の部を予定していたので、残念ながら中座してしまったが、アベグレン氏の癖のある日本語と岩井教授の早口で突っかかる語りを聞いてその主張を理解できたので十分であった。

   アベグレン氏は、「新・日本の経営」、岩井教授は「会社はだだれのものか「会社はこれからどうなるか」で展開した理論に沿っての話であったが、夫々、別の切り口ではあるが、人間尊重の経営について語っていたのが印象的であった。
   気付いた論点について纏めてみたい。

   アベグレン氏は、日本の会社は、アメリカの様に金儲けの為のものではなく、共同体(Community)であり、人的経営資源を重視する日本の人事政策の根幹は変わっていないとして、日本において、アメリカの様にM&AのA、即ち、企業買収が少ないのは、人が絡むからだと言う。
   少子高齢化による労働人口減については、女性やシニアの活用を図れば20年間は問題ないとしており、生産性アップ策の遂行や高度な専門家の増加などによって人事政策は変わって行くだろうと言う。
   アメリカの社外取締役制度は社長の仲良しクラブであり絶対真似をしてはならない、日本の会社の特質であるコミュニティにあったコーポレートガバナンスを確立すべきであると強調する。 

   日本の課題として、まず最初に、日本企業のR&DについてDには強いが、R、即ち、基礎科学には弱いので、今後、努力すべきだとして、大学への科学開発予算の増額と世界的な科学者の招請の必要を強調した。
   次に、アジアに対する政府の確乎たる外交・経済政策が全く見えないが、経済的に50%以上を占めていて差別のない極めて民主的で健全な日本が率先してアジアの経済統合などのイニシャチブを取るべきで、日本の国際政策・戦略が弱いのが課題だと言う。

   ライブドア問題については、3年間も何もしない政府の無為無策の対応が問題で、日本政府のレギュレーションに責任があるとしている。

   アメリカの社外取締役制度へのレイク氏の反論や、成功だったと言う日本の失われた10年や人事制度の変化はなかったと言う見解には多少反論があったが、アベグレン氏は見解は変えなかった。
   私自身は、アベグレン氏の見解には賛成だが失われた10年はやはり失われた10年の要素が濃厚であり、アベグレン氏指摘の日本的な人事制度は戦前とは違っていて戦後発生した要素もかなりあり日本固有とも特定出来ないと思っているので、多少考え方が違う。

   岩井教授は、会社は、モノとしての株式と、ヒトの2面の要素を持った存在であり、産業社会においてはモノ即ち機械や工場が重要であったが、ポスト産業社会においてはヒトの方が重要になる。何故なら、企業価値を生み出すのは、”ちがい”であって、そのちがいを作り出すのは人間である、と言う。
   したがって、ヒトが利益の源泉であって、ヒトを重視した経営を行わないと21世紀の会社経営は成り立って行かないと強調する。
   
   この他に、岩井教授が強調したのは、会社は株主のものではないと言うことと社会的な器であると言うことであった。
   株主至上主義の否定と法人と言う不思議な人格を持った社会的器であるから社会的存在としての社会的責任を果たすべきだと言うのである。

   CEOが、企業価値をアップする使命があるとする株主主権論には、自分の利益を優先すると言う誘惑があり、エンロンのような企業不祥事が発生するのは必然だと言う。
   マーシャルのCool HeadとWarm heart論を引用しながら、アメリカ型のコーポレートガバナンスと株主主権論を糾弾し、人間尊重の経営を推し進めるべきだと、アベグレン氏の見解と近い日本経営論を展開してゆく。

   アメリカ型の経営を志向した商法改正、そして、その結果生まれた5月から施行の新会社法が、色あせて見えてくる、そんな講演会であった。
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