熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

安倍首相に国民は何故NOと言ったのか

2007年07月31日 | 政治・経済・社会
   リーダーシップに欠けるリーダーが国をリードするとどういうことになるのかと言う典型的なケースが、今回の参議院議員選挙である。
   経験・実績も政治的バックグラウンドも希薄な人物がトップに上り詰めたのであるから、八方美人的に四方八方に気を配り論功行賞的な人事政策を取らなければならなかったことは仕方がないにしても、あまりにも、無為無策に走り過ぎたきらいがある。

   首相のリーダーシップの欠如をいみじくも示したのは、赤城農相の経費疑惑問題である。
   選挙直前に出た領収書コピー等は、単純な経理的ミスでは絶対起こりえない、悪質な意図なければあり得ない話であって、それ以前にも、赤城農相が如何にも子供だましの対応で世間を欺き通していたにも拘わらず、首相は、一切、有効な対策を取らずに頬被りし続けた。
   小泉時代にも日銀福井総裁問題で時が経つのを待ってうやむやにしたケースがあるが、安倍首相になってからは柳沢厚生労働大臣問題をはじめ、首相自らリーダーシップを発揮して大臣などの責任問題を明確にして処理したケースは皆無であり、首相に自分の部下は勿論政府を統治する能力のないことを完全に暴露してしまった。

   久間防衛大臣の場合は、公明党の浜四津議員の発言が引き金になったのであって、その前に、首相は注意せよと諭しただけで、当の防衛相も今後注意していきたいと思いますと言った能天気な答えをTVでしていたが、漫画としか思えないような茶番劇場が安倍内閣なのである。
   麻生外相のアルツハイマー病の場合もそうだが、あまりにも程度の低いお粗末な閣僚達の行動に、国民は段々嫌気が刺し始めているのに、相変わらず、首相は美しい国日本などと言う言語明瞭意味不明のスローガンを壊れた蓄音機のように繰り返し続けるので、どんどん民意が離れていってしまった。

   今度の選挙の最大の問題は、やはり社会保険庁の年金問題のあまりにも深刻な役人の腐敗と杜撰な事務処理であり、進んだ民主国家ではあり得る筈のない信じられないような事件である。
   政府は早急に処理すると答えたが国民は、最早、政府を見限り、この自民党政権では、駄目だと思い始めてきた。
   もっと国民を直撃したのは、直前に送られてきた地方税の増税通知であり、それまでにじりじり生活を圧迫してきている税金や社会保障関連費のアップであり、所得が増えずに可処分所得が異常に減ってしまったことである。
   地方の疲弊も含めて小泉改革の後遺症はあまりにも深い。

   こんな状態で、何の手も打たずに無為無策のままで参議院議員選挙に突入して戦えると思ったこと自体が国民をあまりにも馬鹿にした行いであり、民主主義国家の政権政党の国政選挙への対応とは信じられない程の程度の低さである。

   政府や内閣のガバナンスをまとものやれないような全くりーダーシップに欠けた安倍首相が、今度選挙でやった最大の失敗は、安倍を取るか小沢を取るかと言って、自分の統治能力が対等だと誤解してしまって、完全に小沢戦術に乗ってしまったことである。
   前回の小泉内閣の郵政民営化選挙で、郵政民営化に反対するのは総て日本を良くしようとする動きを妨害する反動勢力だと決め付けて、極めて単純に押し切った小泉戦術と同じで、今度は逆に勝負の決まっている負け戦を益々増幅させたのである。

   日本と言う代表的な民主国家の政権政党がここまで程度を落としてしまったのは、ご意見番的な大久保彦左衛門のような筋の通った重鎮政治家がいなくなってしまったことにも原因があるように思う。
   リーダシップに欠ける安倍首相を補佐し、或いは、諭し意見する勢力が自民党に全くない悲劇である。
   選挙後、何故責任を取って辞めないのかと聞かれて、改革の推進を国民に約束したのでそれを果たすことが自分の責務だと答えているが、国民は、その約束を果たす能力がないから辞めてくれと意思表示したのにそれさえ分からない。それにも拘わらず殆どの自民党員が間髪を入れずに続投を鸚鵡返しに答えていることからも明らかである。

   自民党のこのような迷走と経済社会政策への影響が株価に反映している。
   本来、成長戦略を取り、小さな政府政策を採ることは良いことだし、安倍内閣の経済政策そのもはそれほど悪いとは思わないが、問題は、小泉内閣の後遺症もあり、あまりにも庶民政策や地域経済への配慮を欠き、セイフティネットへの注意が欠如し過ぎてしまった。
   日本国民は、強烈な地震災害など大変な危機に瀕しても、極めて冷静沈着に自力で自分たちの生活を立て直そうする秩序正しい文明人であり、余程のことがない限り殆ど不満を言わない。
   しかし、無為無策の失政により綻びた大穴をどさくさに紛れて庶民に押し付けて解決しようとする姑息な政治を今回の選挙では許さなかった。
   文化も豊かで自由な素晴らしい日本だと思うが、政治が一流のなるのは何時のことであろうか。
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