地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

台湾鈍行の旅 (10) 平渓線を行く

2005-03-21 20:06:21 | 台湾の鉄道


 台湾南半分の鈍行の旅は東部の商業&観光都市・花蓮で終わりまして、ここから台北には客車特急・キョ光号で戻ってきました。本当は花蓮と台北の中間点である宜蘭まで1日2本の客車鈍行が残っていて、この区間の車窓展望も険しい山々が一気に海に切れ落ちるという大絶景なのですが、この日の夜は台北で飲む約束がありましたので、そうそうのんびりもしていられなかったという次第です (^^;
 その2日後には台湾から名残惜しく帰って来たのですが、飛行機は夕方の便でしたので、午後2時頃までは時間が余っていました。そこで、未乗だった台北近郊のローカル線・平渓線にぶらりと行ってきました。
 この平渓線は一応台北近郊にあることは確かなのですが、地形が険しい台湾では台北市街と平渓線の沿線は鬱蒼としたジャングルの山々で隔てられていまして、台北市街からのアプローチは新交通システム・木柵線の木柵駅からクネクネの山道をブッ飛ばして走るローカルバスに50分揺られるか (心臓の弱い方にはオススメしません)、東部幹線 (宜蘭線) の八堵 (基隆方面との分岐点)・瑞芳・侯[石+同]駅のいずれかから発車する平渓線の列車に乗るという選択肢があります。で、今回は初乗車ということで、素直に八堵駅から発車する2両編成に揺られて出発進行!
 八堵を出た列車は、基隆河に沿った緑深い谷間を遡って行きますが、瑞芳までは台北・基隆のベッドタウンらしく、そこそこマンションや一軒家がゴチャゴチャと建て込んでいます。これが分岐点の三貂嶺駅 (ほとんど、平渓線の列車にタブレットを渡すだけのためにあるような、超山の中の駅) に差し掛かると雰囲気は一変! まさに「南国の只見線」と言わんばかりの、人家もほとんど見あたらない深山幽谷へと分け入って行きます! 平渓線内最初の大華駅に到っては、余りにも地形が険しいので、駅前の民家に道路が通じておらず、ここを訪ねるには列車に乗るしかないという有様! (このへんも、冬季は六十里越の道路交通が途絶えるからこそ存続している只見線みたい……^^;)
 やがて列車は、基隆河が大きな滝となって流れ落ちる「十分瀑布」の絶景を見下ろし、商店街のど真ん中をゆっくりと通過し、唯一の交換駅・十分に到着します。ここの見どころはタブレット交換と腕木式信号!! 90年代後半にローカル線の体質改善のために導入されたディーゼルカーも日車豊川製ですので、全くもって日本のJRローカル線顔負けの光景です (^^
 さらにいくつかの小さい駅に止まり、路線名のもとになっている平渓の町 (超ド田舎) を過ぎると、終点の菁桐に到着です。ここはかつての炭鉱の遺構がそっくり残っており (平渓線ももとは石炭搬出のための鉄道でした)、駅構内の苔むした積み出し線の雰囲気といい、険しい山々に囲まれた駅前の小集落の雰囲気といい、絶品中の絶品です (^^)。但し、土曜休日はこの雰囲気を楽しもうと台北や基隆から日帰り観光客がドッと押し寄せますので、ご用心 (爆)。
 さて、このディーゼルカーですが、ここでもご多分に漏れず観光客ウケを狙ったラッピングが……(泣)。もしレトロな鉄道情緒をウリにするのであれば、先代ディーゼルカーの藍色塗装をラッピングで再現して欲しいのですけど……(上田交通が最近「まるまど号」でやっているような感じで ^^;)