
今年の夏に同人誌として発刊された『中国鉄道時刻表』は、ここ数年来激変を続ける中国国鉄における旅客列車運行の全体像を「日式」という革命的 (?) ツールで明快に示し、一時はアマゾンの中国関連書籍売り上げのトップクラスを維持するという快挙となりました。そして去る11月には、姉妹編(あるいは宗主国と属国の関係というべきか。笑)の同人誌として『韓国鉄道時刻表』が刊行されました。
そもそも韓国という国はミョーなところで良く言えば合理的、悪く言えば趣味性やロマン度が弱い国であり(これもまた、人間の遊びゴコロや妄想を激しく憎む朱子学原理主義カルチャーの成せるワザか?)、その極限形態はレシートのような切符への統一や、それに先立つ国産自動改札機の大失敗による長距離列車改札口廃止など、まぁいろいろあるわけですが、とりわけKORAILの子会社である韓国鉄道文化社から刊行されていた紙の時刻表が2~3年前に廃刊されたのもまた、そんなウリナラを象徴する出来事であったと存じます。「ウリナラの鉄道体系はソウル一極集中で分かりやすいので時刻表なんか不要イムニダ!」「誰もがネットを見るので、紙の時刻表などという時代遅れの媒体はIT宗主国には不要にテッスムニダ!」という建前はあるのでしょうが、正確なところはそもそも鉄道趣味・文化そのものが薄いこと(関係者は無くしたくなかったに違いない・・・)、そして何よりも高速バスが発達しすぎ、紙の時刻表において非常に大きな部分を占めていたバス時刻の部分を全く見なくても、全国津々浦々とソウルのあいだで超!頻繁運転の高速バスに即座に乗れてしまうというところが大きいのかも知れません……。

しかしそんなことでは、この国で鉄道旅行をしてみようと僅かでも好奇心を抱いたことのある人間にとって困った話。列車の本数がそもそも少ないか、あるいはPDF等でダウンロード出来れば(台湾・ベトナム・タイなど)まだしも……。そこでこの「復活」時刻表では、駅名について漢字・カタカナ読み・ハングルを対照させつつ、日本の鉄ヲタにとって分かりやすい誌面を目指したということで、これもまた日本における鉄道趣味の底力を示した業績ではないかと思います。本来なら、数年前にようやくウリナラで現れた鉄道雑誌『RAILERS』の版元あたりが発行しても良いはずではないか……と。
何はともあれ、分厚くボリュームたっぷりな『中国鉄道時刻表』と比べますと、この薄さで500円か……というのはありますが(でも日式台湾時刻表と比べれば、ほぼ同じボリュームで御値段半分)、ウリナラに出掛ける日本人が激減し需要が余り見込めなさそうな中、このような同人誌が出たこと自体がひとつの挑戦にして、鉄道交流史上の一里塚となるのかも知れません。
個人的には、既に首都圏電鉄の抵抗制御車が風前の灯火の段階に入り、名車PPセマウルは既に無く、中央線などで線形改良が進んで味わい深き旧線が失われ、そもそも観光地も一度行けば「ごちそうさん」状態であり(無味乾燥な儒学がらみの古蹟を訪ねてもソッコーで飽きる。景色の良いところはパンチパーマのド派手オバチャンがどんちゃん騒ぎ……)、出張でも入るのでなければ、個人的にはあくまで資料として手許にとどめるのみかな、と (汗)。とりあえず、パラパラめくっていて、以下の点が眼を惹いたことを記しておきます。
* 京釜線全線走破するムグンファが依然として30~90分間隔で運行されており、KTXに負けるな万歳!
* 中央・嶺東線のムグンファ、新線建設で駅が減り面白みも多少損なわれたものの、一部セマウル格下げ特室つきであるなど、伝統的長距離列車の雰囲気を残しており万歳!
* 鈍行列車ピドゥルギの伝統を引き継いだ、中央線清涼里~釜田、慶全線釜田~木浦直通の鈍行的ムグンファが現存しているのは、ただ単純に極めて喜ばしい!
* 湖南線と全羅線の旅客扱い駅激減にショック!
* 長項線の特室つきセマウル客車列車万歳!
* 東海南部線にいつの間にかRDCムグンファが増加。
* 京元線の朝夕75分間隔・日中2時間間隔に萎え……。安すぎる運賃と少なすぎる人口密度ゆえ、やむを得ない?
* 京義線のムン山から先はDMZ観光列車が1日1往復するのみとなり、臨津江までの区間運転が全て跡形もなく吹き飛んでおり苦笑。
* 駅名の読み方として、下りにカタカナ、上りにハングルが示され、カタカナ読みはきちんとリエーゾンが再現されているのはグッド(例:中央線の神林→シンリムではなくシルリム)。しかし、ソウル首都圏路線図のうち、盆唐線の新規開業区間にあるソウルスプのように、「ソウルの森」と訳しすぎてしまうのはどうか?(それとも公式に日本語でそう書くことになっているのでしょうか。英語でforestになってるし、まいっか。日本人で降りるヤツはほとんど皆無でしょうし ^^;)。