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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 42』加藤元浩

2017年09月16日 | マンガ感想
「エッシャーホテル」★★☆ 5
~あらすじ~
大富豪の御曹司と結婚したエリは、念願だったエッシャーの騙し絵をモチーフにしたホテルをオープン。
しかしその完成披露のさなか、無限階段のオブジェに首吊り死体が現れる。


~感想~
警察がガバガバなだけの端的に言って酷いトリックは置いといて、犯人特定からとどめに至る推理が冴える。
反面、エッシャーの無駄遣いな気もしないではない。


「論理の塔」★★★ 6
~あらすじ~
燈馬のMIT時代の友人ミアは、自分を裏切った恋人や上司への復讐のため、画期的な演算ソフトを廃ビルに隠し、謎を解いた者に渡すと持ちかける。集まった面々はミアからそれぞれ矛盾したヒントを与えられており……。


~感想~
真相は非常にあからさまなものだが、話自体が面白く最後まで興味を引く。ラストシーンがまた非常に良い。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 41』加藤元浩

2017年08月31日 | マンガ感想
「バルキアの特使」★★★☆ 7
~あらすじ~
内戦が終結したばかりの東欧の小国バルキア。3万人もの虐殺を主導した大統領がベルギーで逮捕され、バルキアは自国での裁判を望むが、ベルギーは首を縦に振らない。裁判権を得るためバルキアは燈馬を代理人に立てるが、対するベルギーの代理人は榊森羅だった。


~感想~
東欧の小国のある意味で存亡をかけた裁判をなんで日本の小学生と高校生が争ってんだよという当たり前の疑問を気にしてはこのシリーズは読めない。
C.M.Bとのコラボということで当然期待する大立ち回りも堪能でき、一巻丸ごと描くべき所を一話にあれこれ詰め込んだ、贅沢な良作である。


「カフの追憶」★★★ 6
~あらすじ~
未来を見通す目を持つという占い師と組み、神の目を持つ投資家とうたわれたが服役中のカフ。
彼の妻の依頼を受け面会した燈馬に、カフは無実の罪で収監されたと訴える。


~感想~
C.M.B並にフットワークが軽くなり、海外にも平気で足を伸ばし始めた。
トリック自体は伏線があからさまで前例も多くあり、あっさり見当がつくものながら、このトリック自体がちょっとした発明のようなもので、どう描いても話は面白くなる。
ところでラスト2ページ、明らかに矛盾している状況と「魔女の手の中に」のラストを思い出させる不穏な描写が怖い。あり得たかもしれない可能性の一つ、という意味なのかもしれないが、生霊とも捉えられるよなこれ。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 40』加藤元浩

2017年08月30日 | マンガ感想
「四角関係」★★★ 6
~あらすじ~
ひょんなことから二組の男女の仲を取り持つことになった燈馬。
ところが彼らは好意が交錯する四角関係にあり、しかも現金盗難事件が発生する。


~感想~
コメディタッチの騒動から急速に浮かび上がる最悪の犯人が怖すぎる。
またこういう話でもいっこうにラブコメ方面に転ばないどころか、人外の力を見せつける可奈はつくづく良いキャラである。


「密室 No.4」★★★ 6
~あらすじ~
業績不振の旅行会社が企画した孤島での密室殺人事件推理ツアー。
開始前の模擬体験に参加した燈馬らは3つの謎を解くが、予期せぬ第四の密室殺人事件に遭遇する。


~感想~
密室トリック4連発という大盤振る舞い。メインも含めいずれも小粒なトリックながら、極めてシンプルな推理から導かれる真相まで一直線に駆け抜け、この作品自体が推理ゲームにうってつけになっている。
よく考えれば簡単に解けるので、未読の方は推理してみるのも面白いだろう。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 39』加藤元浩

2017年08月19日 | マンガ感想
「ああばんひるず6号室事件」★★★ 6
~あらすじ~
名前だけ高級マンションのようなオンボロアパートの一室で大家が首吊り死体で発見される。
吝嗇家で家賃の値上げを検討していた大家を恨む、居住者の犯行なのか。

~感想~
ミステリ史上に残るかもしれない意外な凶器が最大の見所。
連続殺人鬼やサイコパスと比べれば犯人のやっていることはかわいいものだが、ものすごい鬼畜の所業に見えてしまい後味はやや悪い。


「グランドツアー」★★★★ 8
~あらすじ~
ボイジャー計画に携わった研究者たちが40年ぶりに集まるが、そのさなかに燈馬と旧知の教授が失踪。
彼はボイジャー計画のさなかに妻を失っており自殺が危ぶまれ、燈馬は40年前の思い出に手掛かりを求める。

~感想~
誰も彼も40年前の記憶がやたら鮮明なのが気になるが、そこはボイジャー計画に携わるほどの学者だから記憶力も卓越していると理解すべき。
なんといってもラストシーンと締めの一言が最高で、またタイトルにも挙げられる「グランドツアー」の壮大さとその発想が面白くて仕方ない。
燈馬が真相にたどり着いたある些細な手掛かりや、構図の逆転も素晴らしく、シリーズでも有数の傑作に数え上げられるのではなかろうか。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 38』加藤元浩

2017年08月18日 | マンガ感想
「虚夢」★★☆ 5
~あらすじ~
映画マニアの所蔵する幻のDVDを壊してしまい、弁償する羽目になった可奈。
在庫の山があるからとプロデューサー主催のパーティーに招かれるが、そこで映画の内容をなぞるような事件が起こる。

~感想~
久々にミステリマンガらしいトリックが冴える。こういうトリックは小説よりもマンガでやってこそ映えるものである。


「十七」★★★☆ 7
~あらすじ~
燈馬と可奈がバイトをする神社には、江戸時代の和算家が建てたという十七角形のお堂があった。
ドラマの資料館を建てるため撤去が検討されるお堂には、ある天才少女の思いが込められていた。

~感想~
数学ネタを面白く描かせたら随一の手腕を持つ作者により、今回は和算の逸話が語られた。
そういえばお堂の意味が語られるだけで事件もトリックもどこにも無いのだが、歴史好きにはたまらなく面白く興味深い話である。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 37』加藤元浩

2017年08月17日 | マンガ感想
「殺人講義」★★☆ 5
~あらすじ~
FBI捜査官による犯罪プロファイリング講座を受ける燈馬と笹塚刑事。
ところが研修中に受講者の刑事が殺される。警察関係者ばかりの中でなぜ事件は起こったのか?

~感想~
燈馬の推理とFBIのプロファイリング。はたして勝つのはどちらか!?(※ヒント:燈馬が勝つ)
些細なきっかけであっさり露見しそうなトリックはともかくとして、燈馬がどうプロファイリングを破るのかが見どころ。


「アニマ」★★★ 6
~あらすじ~
燈馬と可奈はアニメの原画を拾い、製作会社に届ける。
そこでは敏腕の作画監督が、不可解な理由で辞職してしまい大わらわになっており……。

~感想~
トリック云々よりも物語そのものと、タイトルの意味が明かされるラストシーンの情景が鮮やか。
この作者の優れたところを数え上げれば切りが無いが、特にこういうのが上手いのだ。
それにしても巻頭の人物紹介は第1巻から全く更新されず燈馬は「人間の感情には疎い」と書かれているが、とっくの昔に人情の機微は理解しているし、だからこそこの事件の謎も解けるのだと思う。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 36』加藤元浩

2017年08月16日 | マンガ感想
「黒金邸殺人事件」★★★ 6
~あらすじ~
自宅で首を吊った大学教授。自殺の動機はなく、教授に恨みを持つ学者が疑われるが、彼は刑事に「静止した矢」のパラドックスを意味ありげに話す。

~感想~
島田荘司! 島田荘司じゃないか!
トリックのネタバレは置いといて、単なる小ネタかと思われた「静止した矢」のパラドックスが全体を貫くキーワードとして浮上していくのが上手い。まあファンには島田荘司のアレとしか認識されないのだが。


「Q&A」★★☆ 5
~あらすじ~
MIT時代の知人から、4人の子供達の中から事業を受け継ぐのにふさわしい人物を見定めて欲しいと依頼された燈馬。
エーゲ海の孤島で休暇を楽しむが、次々とトラブルに見舞われる。

~感想~
島に伝わるある詩が印象深いが、オチは予想の範疇から一歩も出なかった。
タイトルに絡め、何者かとのQ&A形式で描いた趣向だけが面白い。
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漫画感想-『スパイラル 推理の絆』城平京・水野英多

2017年08月09日 | マンガ感想
~あらすじ~
警視庁で「名探偵」と呼ばれるほど天才的な頭脳とピアノの腕を持つ、神の如き兄が失踪した。
自身も優れた頭脳とピアニストの才を持ちながら、兄への劣等感に苛まれる鳴海歩の周囲で事件が続発。
失踪した兄が謎を追うと言い残した、ブレードチルドレンと呼ばれる子供達とは?


~感想~
今さら読了。少年誌でなんつー話を書いてるんだwww
前半こそごく普通のミステリ漫画ながら中盤に掛けての「まず神がいます」という大前提から始まり「君は神にでもなるつもりかい?」を経て「俺は新世界の神になる」に至るラストへの超展開は賛否両論だろう。
終盤はミステリというか「そのトリックは推理済だから俺には効かない」という論法で神殺しに挑むあたり、一度見た技は二度と通じないでおなじみの聖闘士星矢の系譜に連なるかもしれない。
観念的な会話に終止する終盤の展開と決着もまた賛否両論だが、全編を通して仕掛けられていたあるトリックと、最後の最後に明かされるタイトルの意味は素晴らしく、否が応でも心に残る作品であろう。

それにしても城平京は「名探偵に薔薇を」といい「虚構推理」といい、普通の面白いミステリを書く腕前を持ちながら、一筋縄ではいかない作風を好む作者である。小説版や他の漫画原作もいずれ読まなくては。


評価:★★★ 6
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Q.E.D. 証明終了 感想目次

2017年02月23日 | マンガ感想
1巻 感想
「ミネルヴァの梟」★★★ 6
「銀の瞳」★★★★☆ 9

2巻 感想
「六部の宝」★★★★ 8
「ロスト・ロワイヤル」★★ 4

3巻 感想
「ブレイク・スルー」★★★ 6
「褪せた星図」★★★☆ 7

4巻 感想
「1st,April,1999」★★★☆ 7
「ヤコブの階段」★★☆ 5

5巻 感想
「歪んだ旋律」★★ 4
「光の残像」★★☆ 5

6巻 感想
「ワタシノキオク...」★★ 4
「青の密室」★★☆ 5

7巻 感想
「Serial John Doe」★★★☆ 7
「憂鬱な午後」★★☆ 5

8巻 感想
「フォーリング・ダウン」★★ 4
「学園祭狂想曲」★★☆ 5

9巻 感想
「ゲームの規則」★★★☆ 7
「凍てつく鉄槌」★★★★★ 10

10巻 感想
「魔女の手の中に」★★★★☆ 9

11巻 感想
「寄る辺の海」★★☆ 5
「冬の動物園」★★ 4

12巻 感想
「銀河の片隅にて」★☆ 3
「虹の鏡」★★★★ 8

13巻 感想
「災厄の男」★★★★☆ 9
「クラインの塔」★ 2

14巻 感想
「夏休み事件」★★☆ 5
「イレギュラーバウンド」★★ 4

15巻 感想
「ガラスの部屋」★☆ 3
「デデキントの切断」★★★ 6

16巻 感想
「サクラ サクラ」★★☆ 5
「死者の涙」★★☆ 5

17巻 感想
「災厄の男の災厄」★★★ 6
「いぬほおずき」★★☆ 5

18巻 感想
「名探偵"達"登場!」★★★ 6
「3羽の鳥」★★☆ 5

19巻 感想
「マクベスの亡霊」★★★ 6
「賢者の遺産」★★★ 6

20巻 感想
「無限の月」★★★ 6
「多忙な江成さん」★★★★★ 10

21巻 感想
「接がれた紐」★★★ 6
「狙われた美人女優、ストーカーの 以下略」★★★☆ 7

22巻 感想
「春の小川」★★★★☆ 9
「ベネチアン迷宮」★★★☆ 7

23巻 感想
「ライアー」★★☆ 5
「アナザー・ワールド」★★★☆ 7

24巻 感想
「クリスマスイブイブ」★★ 4
「罪と罰」★★★★ 8

25巻 感想
「宇宙大戦争」★☆ 3
「パラレル」★★★ 6

26巻 感想
「夏のタイムカプセル」★★★☆ 7
「共犯者」★★☆ 5

27巻 感想
「鏡像」★★☆ 5
「立証責任」★★★★ 8

28巻 感想
「ファラオの首飾り」★★★ 6
「人間花火」★★★★ 8

29巻 感想
「エレファント」★★★ 6
「動機とアリバイ」★★★ 6

30巻 感想
「人形殺人」★★★ 6
「犬の茶碗」★★★☆ 7

31巻 感想
「眼の中の悪魔」★★★ 6
「約束」★★★ 6

32巻 感想
「マジック&マジック」★★★★ 8
「レッド・ファイル」★★★ 6

33巻 感想
「パラドックスの部屋」★★★ 6
「推理小説家殺人事件」★★★ 6

34巻 感想
「災厄の男の結婚」★★☆ 5
「母也堂」★★★☆ 7

35巻 感想
「二人の容疑者」★★★ 6
「クリスマス・プレゼント」★★★☆ 7
コメント (5)

マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 35』加藤元浩

2013年11月10日 | マンガ感想
「二人の容疑者」★★★ 6
~あらすじ~
運送会社の社長が殴られ金庫が荒らされた。
二人の社員が容疑者として浮かび上がるが、どちらも決め手に欠ける。
水原警部に憧れる新米刑事の浅間は捜査に張り切り、燈馬に助言を求めるが……。

~感想~
暴走気味の新米刑事に振り回され……ず、冷徹に状況を見つめ、目から鱗の一言で事件の様相を一変させる燈馬が、論理の鋭さはともかく完全に上から目線なのが素敵。小鳩君かお前は。
読者からすれば話の展開=真犯人はバレバレの流れながら、燈馬がどう事件を反転させるかの興味と、論理の綺麗さで最後まで引っ張ってくれる。一方で浅間刑事の出番は、小鳩君に対する彼のようにこの回限りだろうか。


「クリスマス・プレゼント」★★★☆ 7
~あらすじ~
演劇部のクリスマス公演の直前、何かとトラブルを巻き起こす部長の失態により大勢の部員が去り、公演の開催が危ぶまれる。
それを嗅ぎつけたやはりトラブルには事欠かないミステリ同好会の面々が協力を申し出、会員と見なされている燈馬と可奈も当然のように巻き込まれる。
燈馬はミステリ劇の脚本を任され、同好会のクイーン会長は主演を務めるが、次々とトラブルに見舞われる。

~感想~
誰も年をとらないサザエさんシステムの本作だが、これで何回目のクリスマスだろうか。
燈馬の書いた作中作のトリックが理系の彼らしからぬド本格の脱力トリックなのはご愛嬌として、意外な犯人には驚かされた。可奈とクイーンに関する手掛かりはどうかと思うが。
しかしそんな諸々よりも白眉は可奈の最後の一言であろう。タイトルとも連関しそういう話だったのかと納得させる見事な締めである。
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