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ミステリ感想-『とむらい機関車』大阪圭吉

2003年12月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
とむらい機関車
デパートの絞刑吏
カンカン虫殺人事件
白鮫号の殺人事件
気狂い機関車
石塀幽霊
あやつり裁判
雪解
坑鬼


~感想~
『とむらい機関車』
“数々の変奏を生みだした――” しかりしかり。これぞ元祖。されども21世紀の今日から見ても、なお輝きを放つ。
これぞまさに傑作。この雰囲気、ぞくぞくきますなぁ。

『デパートの絞刑吏』
再読したら「こんなによくできてたっけ?」と見直した。
不可解な死体。あからさまにすぎるが意表をつく“犯人”。目新しい。

『カンカン虫殺人事件』
物理トリックの元祖格。――のため、口に合わない。

『白鮫号の殺人事件』
これはなんとも惜しい造り。一皮むければ大化けしたかも。

『気狂い機関車』
同じ機関車もこちらは物理トリック。末尾の情景が鮮やか。

『石塀幽霊』
不可能状況が少々肩すかしに解かれる――ものの、描かれるのは乱歩さながらに眩惑的。佳品かも。

『あやつり裁判』
こんなものも描けるのだから、氏の実力は底知れない。一人称で語られる謎めいた奇譚。

『雪解』
乱歩味の濃い(逆です)幻惑的な狂気の世界。倒叙でありながらこれは幻視の情景。

『坑鬼』
これはすごい。いきいきと描写される壮絶な炭坑の世界もさることながら、奇想・不可能・逆転と秀逸なトリック&プロット。これは傑作を越えた名作。


~総括~
これが戦前の作品。これが乱歩以前の作家。古典あなづるなかれ。


03.12.9
評価:★★★☆ 7
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