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ミステリ感想-『本当は知らない』高里椎奈

2005年10月19日 | ミステリ感想
~感想~
うーん。とうとうやっちまったという感想です。
いままでギリギリの線でこらえていたのが、ついに開き直りました。

(↓以下ネタバレ↓)
犯人が妖怪です。それだけならなんの問題もありません。妖怪であることをトリックやプロットにしっかりと組み込んでくれるなら、妖怪とミステリの幸せな結婚が成就すれば、このシリーズはいつでも傑作になりえる可能性を秘めています。
しかし、その結末に至るまでの道程がいけません。
犯人は現場に内臓だけを残していた→なぜ内臓を残すのか→内臓を食べられない妖怪だったから
……なんだこれは。
なんだこの理由は。
百歩譲って、理由は許そう。内臓を食べられない。結構じゃないか。人間にも妖怪にも、好き嫌いくらいあってしかるべきです。
だけど。「内臓を食えない」という真相にまったく伏線を張っていないのはどういう了見か。
そんな妖怪がいようがいまいが知ったこっちゃない。せめて伏線くらい張ろうよ。
ともあれこの一作をもって作者はついに、ミステリに対して訣別を宣言した。

まったく意味をなすとは思えない、読者を(あるいは座木を)驚かすためだけの秋の仮病。
柚之助が化けているのに地の文で“リベザル”・“秋”と書いてしまっているアンフェア。
シリーズを通して読んでいないとまったくついていけないキャラたちの会話。
ただ顔を出すだけのサブキャラたち(そのくせ無意味に登場人物表に載っている)。
どうやって事件の真相に現実的な解釈をつけたのやら。単に迷宮入りですか?

薬屋さんシリーズはもはやミステリではない。
ただのキャラ萌えライトノベルだ。

(↑ここまで↑)

細かいことだが、冒頭で理不尽な(理不尽としか思えない)暴力にさらされた高校生たちは、なんら反省などせず、さらなる暴力に走ると思うがどうか。

もういいです。
僕は傑作ミステリを読みたいんです。
ミステリのふりをしたキャラ萌えノベルに興味はありません。
薬屋さんシリーズの読破は、これにて中座させていただきます。


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