~あらすじ~
大学教授にして推理作家の富井に託されたのは、欧州で著名な画家・星野が遺した手記だった。
終戦直後のドイツ。星野は迷い込んだ城館で催される推理ゲームに参加したが、現実に殺人事件が起きる。推理合戦の果てに到達した驚愕の解答とは?
さらに手記には大いなる秘密が隠されているといい……。
第12回鮎川哲也賞受賞作。
~感想~
本格ミステリのデビュー作は往々にして、その作者の著作中で最も力が入っていることが多い。
プロになれるか否かがかかっているのだから当然なのだが、その熱意が豪華さの演出や質の向上につながる(例:匣の中の失楽)一方で、空回りすることもままある。
特に失敗するのがいろいろな知識を詰め込みすぎることで、今作もとにかく知ってることを片っ端からぎゅうぎゅう詰めにした感で、大半の読者にとってはどうでもいい話、伏線、趣向が目白押し。
だがそんなことよりも今作の最大の特徴は、作中作を二つ挟んだ三重の入れ子構造という凝った構成……でもなく、最後の最後に明かされる「ここまででプロローグでした」という事実である。
なんと今作で語られたのは、続編「グーテンベルクの黄昏」のプロローグに過ぎないのだ。二つの作中作の謎が解かれてようやくスタートラインに立ち、さんざん煽られたあげくに「つづきは続編で!」とブツ切りなんて、こんなこと恩田陸でもしないぞ。
また三年後に続編は出たものの、文庫落ちはしないわ絶版(?)だわで入手困難であり、今作がブツ切りであるという難点は、解消されるどころかますます悪化している。なんだかなあ。
※そういえば島田荘司御大が全く同じ「ここまではプロローグに過ぎなかった」をかました挙句、10年が経とうとする今も続編が出ていないことに気づいた。あれはどうなったの!?
11.4.13
評価:★☆ 3
大学教授にして推理作家の富井に託されたのは、欧州で著名な画家・星野が遺した手記だった。
終戦直後のドイツ。星野は迷い込んだ城館で催される推理ゲームに参加したが、現実に殺人事件が起きる。推理合戦の果てに到達した驚愕の解答とは?
さらに手記には大いなる秘密が隠されているといい……。
第12回鮎川哲也賞受賞作。
~感想~
本格ミステリのデビュー作は往々にして、その作者の著作中で最も力が入っていることが多い。
プロになれるか否かがかかっているのだから当然なのだが、その熱意が豪華さの演出や質の向上につながる(例:匣の中の失楽)一方で、空回りすることもままある。
特に失敗するのがいろいろな知識を詰め込みすぎることで、今作もとにかく知ってることを片っ端からぎゅうぎゅう詰めにした感で、大半の読者にとってはどうでもいい話、伏線、趣向が目白押し。
だがそんなことよりも今作の最大の特徴は、作中作を二つ挟んだ三重の入れ子構造という凝った構成……でもなく、最後の最後に明かされる「ここまででプロローグでした」という事実である。
なんと今作で語られたのは、続編「グーテンベルクの黄昏」のプロローグに過ぎないのだ。二つの作中作の謎が解かれてようやくスタートラインに立ち、さんざん煽られたあげくに「つづきは続編で!」とブツ切りなんて、こんなこと恩田陸でもしないぞ。
また三年後に続編は出たものの、文庫落ちはしないわ絶版(?)だわで入手困難であり、今作がブツ切りであるという難点は、解消されるどころかますます悪化している。なんだかなあ。
※そういえば島田荘司御大が全く同じ「ここまではプロローグに過ぎなかった」をかました挙句、10年が経とうとする今も続編が出ていないことに気づいた。あれはどうなったの!?
11.4.13
評価:★☆ 3