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ミステリ感想-『蛇棺葬』三津田信三

2011年10月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
幼いころ父に連れて行かれた百巳家。そこに無気味な空気を漂わせる“百蛇堂”がある。
私はそこで見たのだ。ずるっ…ずるっ…と暗闇を這うそれを…。
やがて旧家に伝わる葬送百儀礼の最中に、密室状態の堂内から忽然と人が消え……。


~感想~
三津田信三が『厭魅の如き憑くもの』でのブレイク前に出したホラー長編の一つ。
人気作家が大きく飛翔する前の助走といった位置づけで、三津田作品らしくホラーとミステリが融合しており、一部の事件は現実的な解釈がなされる。
だがその融合ぶりがうまいとは言い切れず、ホラーにもミステリにも針のふれない、どっちつかずの印象を受けてしまう。
中盤にかけての丹念にものされた、というか「遅々として進まない」と表現したほうが的確な描写・展開と比べ、終盤は逆に連載打ち切りにでもされたような急ぎ足で語られてしまい、それでいて多くの伏線は、ホラーらしく結末がつかないと言うには、あまりに無造作に投げっぱなしにされ、広げた風呂敷を畳めていない。
作中に出てくる百蛇堂の名を冠した続編(?)があるので、ひょっとすると残った伏線はそちらで使われるのかもしれないが、これを単体で評価するならば、厳しいところ。
とりあえず『百蛇堂』をつづけて読んでみようと思う。


11.10.4
評価:★ 2
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