~あらすじ~
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。
ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいた。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。
ぼくが目覚めたこの世界では、ぼくは生まれず、流産だったはずの姉が生まれていた。
~感想~
これは痛い。実に痛い。
世間では「青春感動小説」としてもてはやされているらしいが、青春はともかくとして感動する場面はどこにあるのだろうか。
それはともかくSF絡みの非常に僕好みの一作で、なんでも作者は学生時代に構想を得たものの、まだ満足に描き切る力量がないと悟り、充分な経験を積んでから形にしたのだという。
長年あたためていただけはあり、決して長くない文量に無駄なく伏線や心情がちりばめられ、一息に読み終えることができる。
歴史好きなら誰しも「もしこの時代に●●が生まれていなかったら」どうなっていたか想像したことはあるだろう。
この作品で●●に当てはまるのは「自分」であり、しかも代わりに生まれていたのは「自分よりも上位互換の能力を持つ姉」なのだ。
これはもう恐ろしい結果にしかならないことは言うまでもない。
読者と語り手を突き放す結末こそ好みではないが、それでもなお米澤穂信の代表作のひとつに数え上げられるだろう。
多くの代表作を持つ、あの米澤穂信のである。まずはお試しあれ。
11.10.7
評価:★★★☆ 7
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。
ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいた。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。
ぼくが目覚めたこの世界では、ぼくは生まれず、流産だったはずの姉が生まれていた。
~感想~
これは痛い。実に痛い。
世間では「青春感動小説」としてもてはやされているらしいが、青春はともかくとして感動する場面はどこにあるのだろうか。
それはともかくSF絡みの非常に僕好みの一作で、なんでも作者は学生時代に構想を得たものの、まだ満足に描き切る力量がないと悟り、充分な経験を積んでから形にしたのだという。
長年あたためていただけはあり、決して長くない文量に無駄なく伏線や心情がちりばめられ、一息に読み終えることができる。
歴史好きなら誰しも「もしこの時代に●●が生まれていなかったら」どうなっていたか想像したことはあるだろう。
この作品で●●に当てはまるのは「自分」であり、しかも代わりに生まれていたのは「自分よりも上位互換の能力を持つ姉」なのだ。
これはもう恐ろしい結果にしかならないことは言うまでもない。
読者と語り手を突き放す結末こそ好みではないが、それでもなお米澤穂信の代表作のひとつに数え上げられるだろう。
多くの代表作を持つ、あの米澤穂信のである。まずはお試しあれ。
11.10.7
評価:★★★☆ 7