~あらすじ~
休暇のため何もない山あいの鬼首村を訪れた金田一耕助。だが村が輩出したグラマー・ガール大空ゆかりの帰省を待ち構えたように、奇怪な事件が次々と起こる。
隠居した老翁の失踪。謎の老婆。そして連続見立て殺人……。金田一は怪異を解けるのか。
~感想~
ミステリ馬鹿を自認しながら横溝正史を初体験。どうせ御大層な硬い文体で、おどろおどろしく回りくどい話なんだろうと思い敬遠していたのだが「糞読みやすい」という評判を聞き及び、本棚の隅から取り出してみたところ、なるほどこれは糞読みやすい。
硬いどころか必要以上に漢字を排してひらがなに開き、今ではごく一般的になった方言にもきちんと注釈を付け、会話もくだけた調子でいきいき描かれと、57年前の作品とは思えないほど驚異的なリーダビリティを達成している。というか、現代の作品は逆にこれほどの読みやすさを考慮していない。
本格ミステリ的な意義で言うと、童謡見立て殺人というおなじみの題材だが、ちょうどいい童謡が見つからず困った作者が「無ければ作ればいい」と目から鱗の発想で創作してしまい、ミステリ界に新たな地平を切り拓いたのも見逃せない。
また、その見立てられる童謡は冒頭で読者には明かされるものの、物語中では話が進んでもいっかな登場せずにやきもきさせ、いよいよという場面で出てきたら……と、創作童謡見立て殺人の第一作目にして早くもそのさばき方に工夫を凝らすあたりも、横溝恐るべしといったところ。
さすがにその他のトリックやプロットに目新しい物は無いものの、意外な犯人に納得の動機、童謡の初登場シーンや金田一と老婆の邂逅など要所要所で醸し出される怪奇風味、現代ならば腐女子の餌食となるだろう金田一と磯川警部のバカップルさながら(※同性です)のやりとりなどなど、見どころは多い。
解説によると、横溝作品の中でも特にリーダビリティに優れているそうだが、この読ませる力はさすが古典にして元祖の面目躍如。そりゃ江戸川乱歩にも肩を並べる名声を得るわと納得至極の作品でした。
14.5.4
評価:★★★ 6
休暇のため何もない山あいの鬼首村を訪れた金田一耕助。だが村が輩出したグラマー・ガール大空ゆかりの帰省を待ち構えたように、奇怪な事件が次々と起こる。
隠居した老翁の失踪。謎の老婆。そして連続見立て殺人……。金田一は怪異を解けるのか。
~感想~
ミステリ馬鹿を自認しながら横溝正史を初体験。どうせ御大層な硬い文体で、おどろおどろしく回りくどい話なんだろうと思い敬遠していたのだが「糞読みやすい」という評判を聞き及び、本棚の隅から取り出してみたところ、なるほどこれは糞読みやすい。
硬いどころか必要以上に漢字を排してひらがなに開き、今ではごく一般的になった方言にもきちんと注釈を付け、会話もくだけた調子でいきいき描かれと、57年前の作品とは思えないほど驚異的なリーダビリティを達成している。というか、現代の作品は逆にこれほどの読みやすさを考慮していない。
本格ミステリ的な意義で言うと、童謡見立て殺人というおなじみの題材だが、ちょうどいい童謡が見つからず困った作者が「無ければ作ればいい」と目から鱗の発想で創作してしまい、ミステリ界に新たな地平を切り拓いたのも見逃せない。
また、その見立てられる童謡は冒頭で読者には明かされるものの、物語中では話が進んでもいっかな登場せずにやきもきさせ、いよいよという場面で出てきたら……と、創作童謡見立て殺人の第一作目にして早くもそのさばき方に工夫を凝らすあたりも、横溝恐るべしといったところ。
さすがにその他のトリックやプロットに目新しい物は無いものの、意外な犯人に納得の動機、童謡の初登場シーンや金田一と老婆の邂逅など要所要所で醸し出される怪奇風味、現代ならば腐女子の餌食となるだろう金田一と磯川警部のバカップルさながら(※同性です)のやりとりなどなど、見どころは多い。
解説によると、横溝作品の中でも特にリーダビリティに優れているそうだが、この読ませる力はさすが古典にして元祖の面目躍如。そりゃ江戸川乱歩にも肩を並べる名声を得るわと納得至極の作品でした。
14.5.4
評価:★★★ 6