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ミステリ感想-『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』十市社

2016年06月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
高校1年生の一居士架はクラスに溶け込めず幽霊扱いをされていた。
しかし前の席の玖波高町に話しかけられ、二人きりの時に限り交流を結ぶ。
高町は学校周辺で続出する、体の一部を蝶々結びにされた動物の死体遺棄事件に気を取られているようで…。

14年このミス15位


~感想~
フェアかアンフェアかで言えば間違いなくアンフェア。
それも伏線ミスディレクションその他もろもろを「細けえこたぁいいんだよ!」と置き去りにしつつも、「アンフェアで何が悪い」とは開き直らずに「フェアですが何か問題でも?」としれっとフェアを装っているのがたちが悪い。
文章はくどいが青春ミステリらしい青臭さはよく描けており、DQNネームカップルの交流が単純に面白い。あらすじで語られる事件は必要ないっちゃ明らかに必要ないものの、主眼は実はそこにはなく、思いもよらない所から繰り出されるどんでん返しを迎えた時点で期待値はうなぎのぼり。
だが終盤までは間違いなく傑作だし、結末も綺麗にまとまり見事に決まっていながら「やめるのやめた!」と言わんばかりの釈然としなさ過ぎる真相が完全に足を引っ張り、アレさえなければ良かったとおそらく大半の読者が思うことだろう。いやもう本当に1個目でやめときゃよかったのに。
青春小説としては満点だが、ミステリとしては落第点を付けざるを得ない、実にもったいなくも惜しい作品である。

全くの余談だがシャイで引っ込み思案でいじめられっ子設定の主人公が、ほぼ初対面の女子を何の躊躇もなく下の名前で呼び捨てにしたのには愕然とした。
性別トリックとか実は家族とか何らかの伏線とかそういうことではなく本当にただただ普通に呼び捨てにしているだけなのだが、ははーんさては作者はリア充だな。


16.6.12
評価:★★☆ 5
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