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ミステリ感想-『信長島の惨劇』田中啓文

2023年08月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
本能寺の変から十数日後、羽柴秀吉、徳川家康、柴田勝家、高山右近のもとへ書状が届く。
送り主は死んだはずの織田信長。三河湾に浮かぶ「信長島」に単身で呼び出された一行は一人、また一人と謎めいたわらべ歌になぞらえられ殺されていく。


~感想~
冒頭「アガサ・クリスティーに」と献辞された通り、戦国時代と「そして誰もいなくなった」を悪魔合体させた怪作。
出落ちにしか思えない設定ながら、非常に凝った作りで、結果的には史実に符合してしまうところなど変に良く出来ている。
ミステリ的にはかなり前半で「もしかしてアレでは?」と気づけてしまうし、戦国好きならそれを補強する伏線が次々と目にとまるだろう。
やっていることはむちゃくちゃながら、戦国好きなら看破できてしまうので、やはり出来が良いと言わざるを得ない。
トリック自体はかなり強引かつ、楽屋落ちというか禁じ手というか、怒る人もいるだろう仕掛けなので、生粋のミステリ好きよりも戦国時代にそれなり以上の興味と知識を持つ人向けの作品だろう。
恐るべきことに「時代ミステリ文庫」で出てしまっているし。


23.8.10
評価:★★★☆ 7
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