小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『倒立する塔の殺人』皆川博子

2025年03月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
太平洋戦争末期。勉学に勤しむことも叶わず空襲の合間を縫って奉仕活動を続ける学生の阿部欣子は、級友からリレー小説「倒立する塔の殺人」を渡される。
作者の一人が不可解な死を遂げた理由がその中にあるはずだと言われ…。

2008年このミス20位

~感想~
戦争を実体験している御大だけにネームドキャラが次ページで死ぬのも珍しくない過酷な日常と、百合と呼ぶほどではないがそれなりに親密な関係性が描かれる作中リレー作の構成は読ませる。
しかしミステリとして見ると伏線は隠す気もないほどあからさまで、トリックもこれをトリックと呼ぶのもはばかられるような代物で、このミス20位や「○○の殺人」という大上段のタイトルに期待して本格ミステリとして読むべきものではない。
戦中戦後のリアルな空気感を味わい、作中リレー作で多層的に語られるやや幻想的なやや百合物として楽しむのが正解だろう。


25.3.2
評価:★★☆ 5
コメント