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ミステリ感想-『カインは言わなかった』芦沢央

2019年10月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
カリスマ演出家の新舞台の公演直前に、主役が失踪した。
彼の弟の画家は公演に作品を提供しており、二人は幼い頃から、舞台と同じカインとアベルのような関係で…。


~感想~
「許されようとは思いません」や「火のないところに煙は」でミステリ的にも高評価を受けた作者だが、本作はほぼほぼ純文学で、そのあたりの期待はしない方が吉。
端的に言うと、どんでん返しがあまり上手く行かなかった時の宇佐美まこと作品のような感じで、意外な真相が明かされるが、正直それが十全に上手く行っているとは思えない。
まず視点人物が何人かいるが、一つの物語を重層的に描き出すのではなく、それぞれの視点から別々の物語を語っているだけで、意外な連関や伏線を見せることはほとんど無い。特にある一人などはものすごく重要そうな立ち位置なのに、結果的に本筋には一切関わらず、解決編でも聞き役に回るばかりで、存在意義が感じられない。
宇佐美まことばりに描かれる赤裸々な性もただのサービスシーンどまりで別に必要なく、どうにも無駄が多く思えてしまう。
ただ、本当の主人公は誰だったのかが明かされる結末だけは評価したい。あれのおかげで読後感は良かった。


19.10.8
評価:★★☆ 5

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