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ミステリ感想-『Another2001』綾辻行人

2020年12月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
史上最悪の「災厄」から3年。
あの夏、見崎鳴と出会った比良塚想は夜見北中学3年3組に進級した。
今年は「災厄」にある対策を行い、想もそれに協力することになる。
そして始業式の日、死者は現れた。


~感想~
前作「Another」から11年、外伝「AnotherエピソードS」からも7年ぶりの続編。
とある趣向が凝らされているため必ず前作「Another」を先に読むことを勧めるし、致命的なネタバレこそないが繰り返し真相は匂わされ、また本作の理解を深めるため「AnotherエピソードS」も読んでおくべきと注意喚起しておく。

手元の「戦国人名事典コンパクト版」より分厚い装幀で、前作と同じくなかなか何も起きない(とんでもないことが起きてはいるが作中では言及されない)まま何百ページも進む。
その後も前作を履修していれば「知ってた」で片付けられる、ある事象が終息するまでで大半のページを使い果たし、本番はそこから先。
ホラーとミステリの完璧な融合を見せた前作を思い起こさせる、怒涛の勢いで怪異と事件が襲い来る。
その勢いのまま解決編と結末へなだれ込んでいく展開は、ホラーであり本格ミステリでありAnother最新作である面目躍如ではあるのだが……いかんせん話があまりに長過ぎるのがネック。
きわめて読みやすく、腰を据えて読み始めれば一気に読了できるし、終盤の怒涛の展開は手放しで褒められるが、はじめからこれをやって欲しかったと思わざるを得ないし、そこに至るまでの「知ってた」ストーリーは大胆な趣向で、どう始末を付けるのか興味を引く、十二分に面白いものではあるものの、言ってしまえば消化試合に過ぎず、それにしてはいくらなんでも長過ぎる。

また個人的には推理が冴えて、残り200ページの時点で真相が全てわかってしまい、せっかくの面目躍如で怒涛の展開すらも消化試合になってしまったのは残念だった。推理できたということは伏線がきちんと張られ、納得の結末が描かれている証拠ではあるものの、よりによって11年ぶりのAnotherで頭が冴えてしまったのは痛恨の極みである。だって驚きたいじゃないですか!

とにもかくにも「長過ぎる」の一点で初心者にはおすすめしづらいが、前作や綾辻ファンならば絶対に見逃してはならない、11年分の期待に十分応える大作であることは自信を持って保証できる。

余談だが完結編「Another2009」の構想があるそうで、年齢的にもあの浮いてた霊感少女がまず間違いなくヒロインを務めるだろう。


20.11.29
評価:★★★★ 8

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