~あらすじ~
意志を持つボーカロイドのμ(ミュー)とアリアが作った仮想空間メビウス。
そこでは現実から逃げ出した人々が終わらない高校生活を楽しんでいた。
だがμとメビウスは次第に歪み、人々は仮想空間に囚われ続ける。
ここが現実ではないと気付いた佐竹笙悟らは、アリアの助けを得て現実に帰るため帰宅部を設立する。
vitaで発売された「カリギュラ」に多くの追加要素を収録した「オーバードーズ」で新たな物語が描かれる。
~感想~
魅力的な世界観、ボーカロイドをこれ以上無いほど活かした設定、500人以上のモブを全員仲間にできる等々、熱意や志の高さは買えるが、技術とおそらくは予算が全く足りなかった結果、一見してすぐに誰もが感じる通りの「劣化ペルソナ」に落ち着いた。
1.ストーリー
まずは良い点から。仮想空間メビウスで暮らす人々は全員が高校生だが、それは理想の姿に過ぎず、実生活では年齢はおろか性別も違う、という設定が面白い。
仲間や敵キャラの正体には意表を突くものも多く、また小ネタながら名無しの少女の正体は、実に本格ミステリ的で素直に感心した。
「オーバードーズ」から追加された敵陣営に協力する楽士パートは、ストーリーは短いが、なんなら帰宅部よりはるかに仲が良いし、個性派揃いで会話だけでも十分に楽しい。
次に悪い点。ストーリーが一本調子でμ(ミュー)を追う→逃げられるか手掛かりを得られない→また追うの繰り返しで、話自体に意外な展開はほとんどない。追加された楽士パートもただ楽士とパーティーを組んで戦うだけのもので、楽士エンドもなぜその流れで楽士側に寝返るのか、ドラクエⅤでデボラを嫁にするストーリー上の理由くらい存在しない。「ペルソナ1~2」のライターを呼んできたわりに、設定だけで力尽きた感が強い。
またすぐに慣れるが、キャラ達は表情がないマネキンで口パクすらせず、動作も場面に合わせず機械感あふれるやっつけ仕事の動きを披露するのは残念。キャラの魅力が重要な割合を占め、声優も熱演しているのに余りにもぞんざいである。
2.音楽
本作の最大の売りは音楽である。各ステージごとに有名ボカロP作曲の曲が流れ続け、戦闘に突入するとシームレスにボーカル付きに移行するのは驚いたし感心した。
各ステージのボスを象徴する曲調の全く違う十数曲を、μ役の上田麗奈が驚異的な歌唱力で歌い分けるのも素晴らしい。ボカロ(といっても歌ってるのは声優だが)をかつてなく上手く活かしたゲームの一つに挙げられるだろう。
3.戦闘
予測される未来をもとに、1ターンに先の行動を3つまであらかじめ設定する戦闘は、なかなか戦術性があり、敵の猛攻をしのぎつつコンボを叩き込むのは楽しい。
だがそれはボス戦の話で、ザコ戦では面倒なだけ。いちいち4人×3行動なんて入力してられないので、仲間はオートで戦わせるが(恐るべきことに無印カリギュラにはオートが無かったらしい)仲間は役立てばラッキーくらいの戦力なので、大半の敵は自分ひとりで料理していくことになる。それも敵の行動によって何をするかはほぼ一択なので、戦術性もクソもなく、肝心のボス戦も難易度ノーマルでやっていれば、ラスボスでさえ通常攻撃を連打するだけで勝ててしまう。
難易度を上げれば歯ごたえが出るが、全滅=問答無用のゲームオーバーでタイトルに戻される古式ゆかしい仕様で、しかもスタート時のロード時間が結構長いため、難易度をうかつに上げるのもためらわれるだろう。
また雑魚キャラは周囲に飛んでるファンネルの違い以外に区別が付かず、ダンジョンの仕掛けもどこかの敵を倒すかどこかのスイッチを押すと扉が開くだけで、こちらもやっつけ仕事であった。
4.周回要素
マップ上に自分よりはるかにレベルの高い雑魚キャラがうろつき、2~3周してレベル上げしないと歯が立たない。
だが2周目以降はマップ上なら好きなタイミングで周囲の雑魚のレベルを1~100まで上げられ、経験値稼ぎには困らないだろう。前例があるのかもしれないがこれは良いシステムで、あらゆるRPGに導入して欲しいと思う。
あちこちを練り歩く500人の生徒達と交友できるが、500人全員が相関図でつながっており、まず友人の友人にならないと会話すらできないので、外堀から埋めていかなければならず、コンプリートははてしなく遠い。
生徒の悩みを解決したところでもらえるのは本当に意味があるのかわからない主人公のパラメーター上昇か、ほとんど使い物にならない装備1つだけだが、正体(年齢・素性・秘密)が明かされ、本筋には一切関わらないけど各クラスで進行しているサブストーリーが次第に明らかになっていくので、コレクター欲は駆り立てられる。
一方でエンドコンテンツと銘打ったワールドリワードはよくある「面倒で時間がかかるだけの要素をエンドコンテンツと名乗っとけば許されるという勘違い」そのもので、開放したところでちょっと強いボスと戦い、ちょっと強い装備品がもらえるだけのサブイベントである。有志のおかげで(面倒ではあるが)時間がかかる部分は省略できるのはありがたいが。
5.総評
はじめに言った通りの「劣化ペルソナ」であることは間違いなく、やればやるほどペルソナの空恐ろしいほど高い完成度に気づかされるだろう。いったいこれにどれだけの手間と予算を掛けるとP4やP5になるのやら。
とはいえカリギュラならではの良い所も多々あり、色々とくさしてみたものの、丸1ヶ月以上プレイできた、魅力のある作品ではある。特に歌は上田麗奈のおかげもあり良曲揃いでどれもこれも素晴らしかった。
PSプラス加入者で興味があるならやって損はないのではなかろうか。
余談だが公式サイトで大川ぶくぶ氏がエアプで四コマを描いており、プレイ済でポプテピピック好きなら絶対楽しめるので必読である。正直これ込みで自分の評価はだいぶ上がっている。
評価:★★★ 6
意志を持つボーカロイドのμ(ミュー)とアリアが作った仮想空間メビウス。
そこでは現実から逃げ出した人々が終わらない高校生活を楽しんでいた。
だがμとメビウスは次第に歪み、人々は仮想空間に囚われ続ける。
ここが現実ではないと気付いた佐竹笙悟らは、アリアの助けを得て現実に帰るため帰宅部を設立する。
vitaで発売された「カリギュラ」に多くの追加要素を収録した「オーバードーズ」で新たな物語が描かれる。
~感想~
魅力的な世界観、ボーカロイドをこれ以上無いほど活かした設定、500人以上のモブを全員仲間にできる等々、熱意や志の高さは買えるが、技術とおそらくは予算が全く足りなかった結果、一見してすぐに誰もが感じる通りの「劣化ペルソナ」に落ち着いた。
1.ストーリー
まずは良い点から。仮想空間メビウスで暮らす人々は全員が高校生だが、それは理想の姿に過ぎず、実生活では年齢はおろか性別も違う、という設定が面白い。
仲間や敵キャラの正体には意表を突くものも多く、また小ネタながら名無しの少女の正体は、実に本格ミステリ的で素直に感心した。
「オーバードーズ」から追加された敵陣営に協力する楽士パートは、ストーリーは短いが、なんなら帰宅部よりはるかに仲が良いし、個性派揃いで会話だけでも十分に楽しい。
次に悪い点。ストーリーが一本調子でμ(ミュー)を追う→逃げられるか手掛かりを得られない→また追うの繰り返しで、話自体に意外な展開はほとんどない。追加された楽士パートもただ楽士とパーティーを組んで戦うだけのもので、楽士エンドもなぜその流れで楽士側に寝返るのか、ドラクエⅤでデボラを嫁にするストーリー上の理由くらい存在しない。「ペルソナ1~2」のライターを呼んできたわりに、設定だけで力尽きた感が強い。
またすぐに慣れるが、キャラ達は表情がないマネキンで口パクすらせず、動作も場面に合わせず機械感あふれるやっつけ仕事の動きを披露するのは残念。キャラの魅力が重要な割合を占め、声優も熱演しているのに余りにもぞんざいである。
2.音楽
本作の最大の売りは音楽である。各ステージごとに有名ボカロP作曲の曲が流れ続け、戦闘に突入するとシームレスにボーカル付きに移行するのは驚いたし感心した。
各ステージのボスを象徴する曲調の全く違う十数曲を、μ役の上田麗奈が驚異的な歌唱力で歌い分けるのも素晴らしい。ボカロ(といっても歌ってるのは声優だが)をかつてなく上手く活かしたゲームの一つに挙げられるだろう。
3.戦闘
予測される未来をもとに、1ターンに先の行動を3つまであらかじめ設定する戦闘は、なかなか戦術性があり、敵の猛攻をしのぎつつコンボを叩き込むのは楽しい。
だがそれはボス戦の話で、ザコ戦では面倒なだけ。いちいち4人×3行動なんて入力してられないので、仲間はオートで戦わせるが(恐るべきことに無印カリギュラにはオートが無かったらしい)仲間は役立てばラッキーくらいの戦力なので、大半の敵は自分ひとりで料理していくことになる。それも敵の行動によって何をするかはほぼ一択なので、戦術性もクソもなく、肝心のボス戦も難易度ノーマルでやっていれば、ラスボスでさえ通常攻撃を連打するだけで勝ててしまう。
難易度を上げれば歯ごたえが出るが、全滅=問答無用のゲームオーバーでタイトルに戻される古式ゆかしい仕様で、しかもスタート時のロード時間が結構長いため、難易度をうかつに上げるのもためらわれるだろう。
また雑魚キャラは周囲に飛んでるファンネルの違い以外に区別が付かず、ダンジョンの仕掛けもどこかの敵を倒すかどこかのスイッチを押すと扉が開くだけで、こちらもやっつけ仕事であった。
4.周回要素
マップ上に自分よりはるかにレベルの高い雑魚キャラがうろつき、2~3周してレベル上げしないと歯が立たない。
だが2周目以降はマップ上なら好きなタイミングで周囲の雑魚のレベルを1~100まで上げられ、経験値稼ぎには困らないだろう。前例があるのかもしれないがこれは良いシステムで、あらゆるRPGに導入して欲しいと思う。
あちこちを練り歩く500人の生徒達と交友できるが、500人全員が相関図でつながっており、まず友人の友人にならないと会話すらできないので、外堀から埋めていかなければならず、コンプリートははてしなく遠い。
生徒の悩みを解決したところでもらえるのは本当に意味があるのかわからない主人公のパラメーター上昇か、ほとんど使い物にならない装備1つだけだが、正体(年齢・素性・秘密)が明かされ、本筋には一切関わらないけど各クラスで進行しているサブストーリーが次第に明らかになっていくので、コレクター欲は駆り立てられる。
一方でエンドコンテンツと銘打ったワールドリワードはよくある「面倒で時間がかかるだけの要素をエンドコンテンツと名乗っとけば許されるという勘違い」そのもので、開放したところでちょっと強いボスと戦い、ちょっと強い装備品がもらえるだけのサブイベントである。有志のおかげで(面倒ではあるが)時間がかかる部分は省略できるのはありがたいが。
5.総評
はじめに言った通りの「劣化ペルソナ」であることは間違いなく、やればやるほどペルソナの空恐ろしいほど高い完成度に気づかされるだろう。いったいこれにどれだけの手間と予算を掛けるとP4やP5になるのやら。
とはいえカリギュラならではの良い所も多々あり、色々とくさしてみたものの、丸1ヶ月以上プレイできた、魅力のある作品ではある。特に歌は上田麗奈のおかげもあり良曲揃いでどれもこれも素晴らしかった。
PSプラス加入者で興味があるならやって損はないのではなかろうか。
余談だが公式サイトで大川ぶくぶ氏がエアプで四コマを描いており、プレイ済でポプテピピック好きなら絶対楽しめるので必読である。正直これ込みで自分の評価はだいぶ上がっている。
評価:★★★ 6
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