大前田英五郎といえば、清水の次郎長親分の同時代人だ。上州の大親分で浪花節や映画でおなじみだろう。ところで今回は前田山英五郎の話。
荒っぽい張り手が得意の39代横綱だ。高見山の師匠だった。昭和24年のことだ。アメリカ3Aのサンフランシスコ・シールズという野球チームが日本に来て後楽園で興行した。当時は日本のプロ野球は3Aにも歯が立たなかった。
いまでいえば、セリエAの優勝チームが日本に来たようなもので皆見たがった。おりから休場中の横綱前田山が観戦に行ったんだね。そして、オドゥールといったかな、監督と握手した写真が新聞で報道された。
前田山は即、引退させられた。今回の朝青龍のサッカー事件と酷似している。相撲協会は対外的にだいぶ強硬なことを言っている。大上段に振り上げた刀だ、ばっさりとやらないと収まりがつくまいヨ。その後前田山は高砂部屋の親方になって、高見山を育てたりアメリカ巡業を取り仕切ったりして親方としては功績をあげた。
朝の場合は日本国籍がないから相撲界には親方として残れない。止めさせるとしたら相当手切れ金をふっかけられるだろう。何しろ千代の富士、板井の後の現代八百長システムの胴元といってもいい存在だ。うっかり首を切ると、腹立ち紛れに今裁判中の八百長の実態についても洗いざらい内外のメディアにぶちまけるだろう。
これまでの朝の傍若無人な振る舞いをみると相撲協会は弱みを握られてなにもいえないように見える。今回はどうするか、見ものだ。
前田山の場合もうひとつ朝に似ているのは戦争中、戦争直後の大相撲存亡の危機に横綱を張って大相撲を支えたという意味合いがあった。朝青の場合も、長い一人横綱の時代をがんばったという功績は同じだ。相撲が荒っぽくて相手を怒らせたり、怪我をさせたりしたのも前田山と同じだ。
ところで、物事は多面的に検討することが大事だ。結論を出す前に。今度白鵬が横綱になった。地方巡業で横綱の土俵入りはもっとも注目を集める。朝は後輩にスポットライトが集中するように配慮して休場したのかもしれない。これなら美談だヨ。
それにしても、診断書を書いた医師だがネ、まさか相撲協会の診療所ではあるまい。骨折なんてレントゲン写真があれば証拠が残っているはずだ。ここが抜かったネ。内臓の疾患だとか、外見や検査証拠が残らない病名にすればよかったのに。
そうすれば、診察の当時は深刻な病状だったが、予想外にはやく回復したとか逃げられたのにネ。相撲協会は当然レントゲン写真の提出を求めなければいけない。そうしてマスコミにそれを公表すべきだ。