トルコが、夏に行われた選挙で議席数を伸ばしたクルド系の政治活動が活発になり、悩んでいる。特に武力闘争を行う、クルド労働党(PKK)の扱いに苦慮している。
クルド族は、イラク、シリア、イランに分布している。そしてそれぞれが国境に隣接した、山岳地に拠点を持っている。トルコが追いかけると、PKKはイラクのクルド自治区に逃げ込む。イラクには、フセイン時代に大虐殺を受けた歴史を持つ、クルド 自治区がアメリカによって、ほとんど独立国家の様相すら呈している。
アメリカのイラク侵攻に最も協力的だったクルド族にアメリカは大切にしたいところである。バクダッドとは一線を介した、軍隊を持ち独自の石油利権を主張するようになった。しかし、アメリカはクルドの自治地区を認めるのが精いっぱいで、独立まで認めていない。
ここに逃げ込んだ、PKKをトルコが攻撃することを、クルド族の独立運動に手を焼いているシリアもイランも煽っている。ところが、ここに踏み込まれては、面目丸つぶれになるのが、アメリカである。フセイン打倒に協力したかったトルコは、アメリカのイラク侵攻に当初は賛成していたが、クルド問題が顕在化する に従って、国境にアメリカ軍を配備することを断った経緯がある。
一方、トルコは何としてもEUに加入したいのであるが、もっとも大きなイスラム国家になることや、ドイツでの移民問題などから既存の国家からは敬遠されている現状にある。イラク北部を攻撃すると、EU各国やアメリカに嫌われてしまう。EU加盟がより一層困難になる。
トルコ国内では、世論がPKKへの武力攻撃を賛成する動きが活発である。多民族国家トルコの民主独立闘争に、アタチュルクを献身的に支援したのがクルド族である。クルドにはその後の、独立を認めてもらう思惑もあったが、反故にされたままである。
来週アメリカのライス長官が訪問するようである。彼女に、具体的な解決策があると思えない。トルコの悩みは当分続くようである。