パキスタンが混乱状態になっている。ムシャラクが、神学校を強制的に武力鎮圧したことに始まる、タリバンに近い聖職者たち~反発を食らっている。そこに、ブットが帰ってきた。彼女を歓迎したり拘束したりと、ムシャラクも忙しいが、確実に治安は 悪化している。
彼にパキスタンを抑える手立ては、すでに武力しかない。陸軍参謀に固執したのもそうしたことを物語っている。
アメリカは、ムシャラクに軍から手を引くようにと忠告するのが精いっぱいである。アメリカは、ビンラデ ィンをアフガニスタンで追い詰めるために、パキスタンを手なずけなければならなかった。パキスタンの協力なしでは、内陸のアフガニスタンを攻撃できなかった。
国内の、親タリバン勢力やパシュツーン人を抑え込むためには、アメリカから経済援助を受けてアフガニスタン攻撃直前に変心して、攻撃に協力した経緯がある。
アメリカが、パキスタンを手なずけておきたいもう一つの理由が「核」である。イスラム国唯一の核保有国の核は、アメリカにとって最も気になるところである。
いつアルカイダに渡るか知れない、もっとも具体性のあるパキスタンの核は、アメリカの目の届く範囲になけらばならない。アメリカは、パキスタン情勢は安定してほしいのである。誰がなってもいいが、核の水平拡散を恐れているのである。
ところが、パキスタンの国民感情は、アフガン攻撃やインドの核開発を援助容認するなどして、反米に大きく動きつつある。パキスタンは次期アメリカ政権にとって最も微妙な国家となるであろう。