国会で集団的自衛権の議論がやっと始まった。すべてを聞いたわけではないが、何とももどかしい論議であった。弱小政党が次々と質問するのであるが、良くやってくれたという“ヨイショ”質問が半分もあり、半数以上が反対意見を持つ国民の声が、国会に全く反映されていない論議である。
最も長い民主党の質問は具体的例を挙げながらも、集団的自衛権が不明確であるという類いのものである。法制局長官の見解が覆ったことはの追及は、ほとんど意味がなかった。紛争当事国に同盟国のために支援するのは、紛争を武力による解決を禁じた憲法に反するとする質問も、安倍首相のかわす回答を詰め切れない。この政党は、集団的自衛権の持つ違憲性などを追求してはいない。
徴兵制につながると質問した、社民党に至っては、アメリカは徴兵制がないが永世中立国のスイスにはあると突っ込まれ、党首は何も答えることができない。質問の質が低い。
共産党の質問では、海外に派兵することはない、と根拠のない回答をしている。おまけに現憲法を尊重すると平然と述べている。この回答は明らかにウソである。既に小泉政権下で、イラクに派兵している。時がたてば、彼らは海外派兵するに決まっている。そのための集団的自衛権である。
極めつけは、必要最小限の規定である。安倍首相は、相手国の武力攻撃と態様と均衡を取る形で決まるといった。これでは、相手国が日本の必要最小限を上回る攻撃を仕掛ければ勝てるので、何の意味もない。つまり最小限はいくらでも拡大されることにもなる。
集団的自衛権は、同盟国の非を問うこともなければ、敵国の非を問うこともないのである。ほぼ無条件で同盟国に加担し、武力による解決をすることを禁じた憲法に反して、兵力を送るのである。
集団的自衛権が、殺戮をすることへの歯止めは何もない。国会議員は、戦争への危惧や平和の在り方を問わないのである。
そもそも、これほど大きな問題について質問時間を議席数に応じて制限し、委員長の指名をそれぞれ介して質問と回答する方式などとるべきではない。
時間など制限することなく、真摯な徹底討論が必要なのである。政府の時間稼ぎと、ほとぼりがさめるのを待つ姿勢が裏にあるのが解る。