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ロシアに移って結婚した友人が、ようやく帰ってこれた。ビザの更新のためである。2カ月遅れたが、なんとか日本に戻れた。友人はロシアの最も東の町ウラジオストックに住んでいるのであるが、周辺のロシア人はほとんどウクライナとの戦争は知らない。そして誰もがプーチンの政策を支持しているとのことである。日本に来てこんな深刻な状況だとは知らなかったようである。
そこで彼と、DVDに落としていた2001年NHKで放映されたドキュメント作品、『ロシア人 小さき人々の記録』をみた。21年前の作品で120分もある。
ロシア語に堪能でロシアのことに精通している友人でさえ、スベトラーナ・アレクシエービッチ 女史のことを知らない。ましてや女史が、ノーベル平和賞を受賞していることさえ知らなかった。友人は余りにも知らないことが多いと驚いていた。この21年前のドキュメンタリー作品は、ロシアの現在とロシアのウクライナ侵略を、心情的に理解することができるものである。
本ブログでも、スベトラーナ氏の言葉を引用している。彼女はウクライナで生まれベラルーシで育ちモスクワ(ロシア)で教育を受けている。現在は治療をしながらドイツで執筆している。事実上国外追放の身である。彼女は、ウクライナ侵略はせっかくソビエト連邦が倒れても、人々は”自由”の使い方を知らないと、NHKの道傳氏のインタビューに答えていた。
小さき人々は、プーチンに誕生日のプレゼントとして殺害された、チェチェン紛争の不条理を訴えていたアンナ・ポリトフスカヤのようにプーチン攻撃ではなく、アフガニスタン侵攻から生還した兵士の無差別殺人などを通じて告発している。人々にはその方が強く印象に残る。
チェルノブイリ原発事故は、ベラルーシに住んでいたスベトーラーナ一家も被爆しているが、彼女は妹を失ってその子を引き取っている。引き取った子も多くの血液病を発している。現在ドイツで治療していることも無関係では無い。
本人を含めたごく身近で起きている、蹂躙される人権を拾っている。
今週の早稲田大学の水島朝穂さんがブログで、この小さな人々の記録を取り上げている。水島氏は17年前からこのドキュメントを授業で生徒に見せているということである。素晴らしい先生だと思う。私たちは、プーチンの横暴を告発するし許すことができない。プーチンの横暴は何処から始まっているかを理解することが、このドキュメンタリーで理解することができるというものである。