左の表は、昨日と同じくFAOが今月発表した食料の国際価格の、年度ごとの動向である。2002-2004年を100とした、月ごとに変移である。
毎年、在庫が豊富な、北半球で作付けされる春には低く、収穫期に向かって、高くなっている。ところが今年(赤線)、は高い水準を示しそのままである。
しかも、数年前の2.3倍で推移している。世界の食料価格は、極端に高くなっていて、しかもそれが下がらない。2008年も前半は今年と同様の動きをしていたが、リーマンショックの反動で、一旦上がった価格が下がっている。
穀物価格の動向は、一つには新興国の経済成長と人口増加である。これはある意味、物理的な動きでわかりやすい。
もう一つの要因が、投機マネーである。これは、人口の動向や収穫の過多とは無関係である。投機マネーが、穀物を買い付けるのであるが、食料を確保してそれを販売するのではない。単に、投機の対称にしているだけである。
リーマンショックの後は、石油を買い付けていたマネーが買い込んだのである。幼いころ、親に食べ物を粗末にするな、お百姓さんを思って残さず食べろ、食べ物で遊ぶなといわれたが、まさしく投機マネーは食べ物を粗末に扱い、遊んでいるのである。
モラルが通用する相手でないことはわかっているが、世界の10億人が飢える原因にもなっているとなると、何らかの規制があって然るべきであろう。食べ物に限らない。金融経済は、実体経済とかけ離れて存在する、虚業の世界である。ウオールストリートのデモはその意味で、現実を反映している。
今月末に世界人口は、70億に達する。今世紀初頭には、20億人になったが、10億人増えるのに125年要している。ところが、60億人になったのが1999年であるから、わずか12年で10億人増えたことになる。やや鈍化したというものの、驚異的な人口増加である。
投機マネーにいいように買い込まれ、もてあそばれている場合ではない。食糧問題は、深刻なりつつある。特に海外依存の高い日本は、しっかりした農業への取り組みが求められる。
リビアのカダフィは殺害されたが、食料自給率の低いエジプトのデモの発端は「パンと自由」である。中東はどの国も、小麦輸入大国である。
日本は、目先の経済的効率のみを追求する、TPPなどというものを論じている時ではないのである。
先生のご意見、いつもそのとおりと思って読ませていただいています。